『世界の終わりのオタクたち』『ヒソカニアサレ』『シブヤニアファミリー』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 9月のおすすめ新刊漫画
『天狗の台所』田中相
ある日突然、自分が天狗の末裔であることを知らされたアメリカ在住の少年・オン。一族のしきたりで、兄の飯綱基と共に1年間日本で隠遁生活をすることになる。
天狗一族の兄弟という設定が、壮大な和風ファンタジーの始まりを予感させるが、本作で描かれるのは2人の兄弟が四季折々の美しい自然や食を満喫する姿だ。自然を守る“山の神”とも言われている天狗。その血を受け継ぐ兄弟が、季節の移ろいを五感いっぱいに楽しんでいる。そんな2人の生活は、まるで山の神のごとく、自然の尊さはもちろん、人間の衣食住と自然は密接に関わっているのだと、私たちに教えてくれる。
また、兄の基が料理上手で、彼が手掛ける季節の食材を活かした料理がとにかく美味しそうなところも魅力的だ。読んでいると思わず食欲が刺激される......まさに食欲の秋である今、読みたい一冊だ。
『黄泉のツガイ(2)』荒川弘
『鋼の錬金術師』の荒川弘先生が、約11年ぶりに「月刊少年ガンガン」でスタートさせた新連載として注目を浴びている本作。
山奥の村を舞台に、主人公・ユルと双子の妹・アサを巡り、兄妹、そして村に隠された秘密に迫るバトルファンタジー『黄泉のツガイ』。最新刊2巻では、本作の見どころの一つである、“ツガイ”と呼ばれる異能力を使ったツガイバトルがさらにヒートアップしていく。
ツガイと主従関係を結んだ人間は「ツガイ使い」として、その異能力を発動させることができるが、このツガイの存在が物語を一層盛り立てる。人のような形をしたツガイもいれば、人ならざる者もいる。また、それぞれ知性や感情もしっかりと持ち合わせているため、どこか人間らしい、強い個と意志を感じる。そんなツガイと人間が、心を通わせながら繰り広げるツガイバトルからますます目が離せない。荒川弘先生お馴染み、巻末おまけ4コマとカバー裏も必見!