『世界の終わりのオタクたち』『ヒソカニアサレ』『シブヤニアファミリー』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 9月のおすすめ新刊漫画
今月発売された新刊の中から、おすすめの作品を紹介する本企画。漫画ライター・ちゃんめいが厳選した、いま読んでおくべき5作品とは?
『世界の終わりのオタクたち』羽流木はない
ある日、突然世界が滅んだ。そんな状況にも関わらず、ある者は推し作家の自宅を探しに、またとある男女は同人ショップに足を運ぶ......。終末世界を舞台に、オタクたちの悲喜こもごもな人間模様を綴った本作。
例え世界が滅んでも、“推し”の作品や作家、CP(カップリング)が存在する限り死ぬわけにはいかない!と、尋常ではないポジティブ思考と行動力で、終末世界をサバイブするオタクたちに元気をもらう。
作中で表現されるオタク特有の早口や、頭の回転の速さがリアルで、共感と笑いが溢れるギャグテイストな作品となっているが、登場人物たちの根底にあるのは創作への異常な愛。ギャグだけでは終わらない、それぞれの究極の愛の形をぜひ見届けて欲しい。
『ヒソカニアサレ』古町 / きむ てみょん
私たちが口にするアワビの2つに1つは盗品、“密漁アワビ”であること。そして、密漁アワビは暴力団の巨大な資金源になっている一方で、地元漁師たちの生活が圧迫されているということ。そんな残酷な真実をベースに、地元漁師とヤクザ、海上保安庁の交錯する思惑と緊張を描いたクライムサスペンス。
密漁アワビの被害、それらを取り仕切るヤクザの存在。それによって、地元漁師たちに容赦なく降り掛かる貧困と暴力......。この果てしない怒りと絶望が生み出すのは、救いではなく更なる闇。正義、法律、何が人を守るんだろうか?と私たちに問いかけてくる。地元漁師、ヤクザ、海上保安庁による息の詰まる駆け引き、血で血を洗うような衝撃の復讐劇をお見逃しなく。
『シブヤニアファミリー』久米田康治
『かってに改蔵』『さよなら絶望先生』『かくしごと』でお馴染み久米田康治先生の最新作。タイトルから、ついかわいい動物たちと赤い屋根の某ドールハウスを連想してしまうが、主人公は動物ではなく、渋谷育ちで渋谷の小学校に通う、いわゆる“渋谷系女児”。そんな彼女が俗世を斬る痛快ギャグコメディとなっている。
主人公の名前が都加逸子(とか いつこ)であるなど、久米田康治先生の代名詞ともいえる、キャラの特徴がダイレクトに表現された名前。さらには世相を題材にした風刺ギャグは健在。THE・久米田康治節が炸裂している本作だが、都加逸子だけではなく、彼女の家族総出で世の中をバッサリと斬るところが新鮮だ。
家族という題材は『かくしごと』でも描かれていたが、本作では『かくしごと』のような感動、切ない展開は一切なし!(今のところ)。例えるならば世の中に容赦ない『サザエさん』。都加逸子はもちろん、彼女の家族が放つ痛快なセリフにも注目してほしい。