漫画家・石井いさみが死去 代表作に『750(ナナハン)ライダー』などバイク漫画の礎築く

 青春漫画の傑作とされる『750(ナナハン)ライダー』など数々の名作を生み出した漫画家・石井いさみが9月17日、急性心不全のため80歳で死去した。秋田書店が公式サイトで9月22日に発表した。

石井いさみの訃報を知らせる秋田書店の公式サイト

 石井は1957年に『たけうま兄弟』でデビュー。その後、『週刊少年チャンピオン』で1975年から連載された『750ライダー』は当時としては異例の足掛け9年に渡る長期連載となり、コミックスが50巻まで刊行される大ヒット作となった。

『750ライダー』の前身となるのが1973年に発表された『750ロック』(小学館)。作品中に人が多く死ぬ描写が多くあり連載打ち切りの原因の一つとなった。その後秋田書店からの依頼があり『750ライダー』の連載が1975年から開始された。

  1975年は、30cc以上のバイクを乗るのに必要な自動二輪免許の法律が変更となり、401cc以上のバイクを乗るにはいわゆる限定解除と呼ばれる、大型自動二輪免許が必要になったのだ。そのため大型バイクに乗ることは、バイク好きにとっていわば憧れの的のようになっていた。そんな中で『750ライダー』は人気理由の理由の一つとなったと言えるだろう。

 同作はバイクを愛する少年・早川光と仲間たちの姿を描き、青春漫画、そしてバイク漫画の金字塔として高く評価された。そして、週刊少年漫画誌で発行部数最多を誇っていた、『週刊少年チャンピオン』の黄金期を牽引する存在になった。

竜堂学園高等学校2年生である主人公の早川光がこよなく愛するバイクがCB750の大型バイクであった。写真-wikipedia

 まさに、当時のチャンピオンの勢いそのままに、石井はバイク漫画という一つのジャンルを開拓したといえる。また、石井のアシスタントからはあだち充をはじめ、のちの漫画界を支える人材が育っていった点が特筆される。

『750ライダー』が表紙を飾る少年チャンピオン(秋田書店)

 東京都大田区のJR蒲田駅西口にあるすずらん通り商店街は、石井のアトリエがあることで、“750ライダーストリート”として知られていて、10店舗以上のシャッターには、石井によるキャラクターの特大イラストが描かれている。石井を偲ぶ意味でも足を運びたい場所の一つだ。

 近年相次ぐ昭和の漫画誌の黄金期を支えた漫画家の訃報に触れるたびに、時代の流れを感じずにはいられない。

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