戦場でシャッターを切り続けた写真家の素顔に迫る 「もうひとつの顔 ロバート・キャパ セレクト展」開催

世界で起きている緊迫した状況がリアルタイムに報道される昨今。まだ映像で伝えることが難しかった時代に、戦禍の中を生きる人々の姿をとらえ続けた写真家がいた。

 スペイン内戦や第二次世界大戦などの戦場で、さまざまな激戦模様をカメラにおさめたほか、戦時下の市民の表情や、親交のあったピカソやヘミングウェイなど、著名人の飾らない表情も数多く残したのが、ロバート・キャパ(本名アンドレ・フリードマン)だ。

 神戸ファッション美術館は、9月10日(土)から、特別展「もうひとつの顔 ロバート・キャパ セレクト展」を開催。20世紀を代表する報道写真家の作品を約100点展示し、彼の素顔に迫る。



 スペイン内戦の結末を暗示するかのような《崩れ落ちる兵士》や、死線に身を晒し命懸けで撮影したノルマンディー上陸作戦の激戦は、戦争報道写真の傑作とされている。リアルタイムに映像が届けられることがなかった時代、キャパの写真が紙面を通して人々に与えた衝撃は計り知れない。

 一方で、キャパは戦時下の市民の姿もカメラに多数おさめた。不安げに空を見上げる人々や途方に暮れて佇む人など、戦争が日常化した世界とそこに生きる人たちの姿を多面的に捉えようとする意識がうかがえる。

 このことは、キャパ自身が写真集を企画刊行する編集的視野をもっていたことと関係しているかもしれませんが、人が見せる鮮烈な感情と向き合うことで「人間」という存在にせまる挑戦であったと捉えることもできるだろう。

 人の内面を浮き彫りにするキャパの「まなざし」は、親交のあったピカソやヘミングウェイらを被写体とした場合にも遺憾なく発揮される。
 
 本展では、東京富士美術館が誇るロバート・キャパ・コレクションの中から、溢れ出る感情とそれを捉えるキャパの眼を軸に選び出した約100点の作品を展示することで、キャパの「もうひとつの顔」である編集的視点を会場内に構成。

 再び緊迫する世界を前に、激動の世紀を駆け抜けたキャパの写真を楽しみたい。

ロバート・キャパ プロフィール

ロバート・キャパ(本名アンドレ・フリードマン)は1913年、ハンガリーのブダペストに生まれた。1930年代から写真家として活動を始める。撮影機材の発展を背景に、臨場感のあるキャパの写真は注目を集める。公私にわたるパートナーであった女性写真家ゲルダ・タローとともにスペイン内戦を撮影し、兵士が撃たれた瞬間をとらえたとされる「崩れ落ちる兵士」で世に知られる存在となった。第二次世界大戦では連合国のノルマンディー上陸作戦やパリ解放などを取材。1947年にアンリ・カルティエ=ブレッソンやジョージ・ロジャーらとともに国際写真家集団「マグナム・フォト」を結成。1954年には来日し、東京・大阪・奈良などで市井の人々を撮影。その直後、第一次インドシナ戦争を取材中に地雷を踏み、40年の生涯を終えた。

開催概要

1)タイトル/もうひとつの顔 ロバート・キャパ セレクト展
2)会場/神戸ファッション美術館(神戸市東灘区向洋町中2の9の1)
             電話078・858・0050  ファックス078・858・0058
3)開催期間/2022年9月10日(土)~11月6日(日)
4)休館日/月曜日、9月20日(火)、10月11日(火) ※9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館。 ※新型コロナウイルスの影響で変更の場合あり。
5)開館時間/10時~18時(入館は17時30分まで)
6)観覧料/ 一般1,000(800)円、大学生・65歳以上500(400)円、高校生以下無料
         ※神戸市内在住の65歳以上の方は無料。
                 ※カッコ内は有料入館者30人以上の団体料金。
                    ※神戸ゆかりの美術館、小磯記念美術館の当日入館券(半券)で割引。
7)主催/ 神戸ファッション美術館、神戸新聞社、毎日新聞社
8)後援/サンテレビジョン、ラジオ関西
9)企画協力/東京富士美術館
10)展示協力/大阪樟蔭女子大学 

展示構成

【前半】
ロバート・キャパによる戦争報道写真の傑作を展示。最も有名な《崩れ落ちる兵士》を筆頭に、空襲や避難生活など、甚大な被害をもたらす20世紀の戦争に翻弄される市民たちの様子を鋭く切り取った写真から、戦争を多面的に捉えた報道写真家としての姿勢を見られる。

【後半】
戦争と強く結びついたキャパのイメージから離れ、『ライフ』誌のために撮影されたアメリカの日常や、ヘミングウェイやピカソなど、親交のあった著名人たちを撮影した写真を紹介。日本とウクライナ(旧ソ連)で撮影された写真も特集し、キャパが生前に刊行した写真集も展示することで、ジャーナリストとしての側面に光をあてる。

作品展示数:約100点

関連記事