『カラオケ行こ!』映画化決定 漫画家・和山やまの天才さがわかる3作を紹介

『夢中さ、きみに。』

  第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人や、第24回手塚治虫文化賞短編賞に選ばれた作品であり、和山氏がはじめて商業的に単行本を出版した作品となる『夢中さ、きみに。』。中高一貫の男子校に通う生徒・林美良を描いたエピソード、そして目が合ったり交流したりすると不幸が訪れるという噂のある高校生・二階堂明を描いたエピソードで構成されている。

 2021年1月には本作を原作としたドラマ『夢中さ、きみに。』(MBS)が放送されており、「なにわ男子」の大西流星氏が主演を務めたことでも話題となった。また本作も和山氏が2019年2月に開催されたコミティアで発表した同人誌が元となっている作品であり、同人誌が『コミックビーム』の編集者の目に止まったことがきっかけで2019年8月に書籍化されたという背景がある。

 和山氏の代表作『女の園の星』とは対照的に、男子生徒の姿が多く描かれるところは本作の特徴だ。

 自習中にベランダでしゃぼん玉を吹きながら悩みを相談したり、先生の色恋沙汰に敏感な女子生徒たちの日常が描かれる『女の園の星』もさることながら、本作ではキャンバスで干し芋をつくるといった奇行をする男子生徒の姿、そして同学年もしくは先輩・後輩といった立場で交流する男子生徒たちの姿から『女の園の星』とはひと味異なるユーモアを感じることができる作品であろう。

 女子高や男子高といった環境、ヤクザの若頭補佐や“モテすぎる”といった境遇など、様々な人間の姿をリアルに描いてきた和山氏。同人誌の即売会がきっかけのひとつとなり、大ヒットを記録する漫画家となった和山氏のように、『カラオケ行こ!』岡聡実役の一般公募がきっかけとなり、またひとつシンデレラストーリーが生まれるかもしれない。

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