“極道漫画”は怖いだけじゃない 女性がときめく『お嬢と番犬くん』&『来世は他人がいい』

バイオレンス色の強い極道エンタメ『来世は他人がいい』(~6巻)/小西明日翔

 続いては、「月刊アフタヌーン」で連載中の『来世は他人がいい』。関西最大の指定暴力団、桐ケ谷組直系·染井組組長を祖父に持ち、極道の家で生まれ育った吉乃。彼女は、祖父の思惑で関東最大の指定暴力団、砥草会直系、深山総長の孫息子、霧島と「婚約秒読みである」と勝手にスキャンダルにされてしまう。そこからトントン拍子で結婚を前提に東京にある深山家で住むことになった吉乃。いつでもにこにこと愛想がよく、はっきりと気持ちを伝え、面倒見のいい霧島。極道の家で育ったとは思えないほど、普通にいい人であったが、本当の顔は……。

 今回紹介したいのは、残念ながらこの霧島ではない。かなり歪んだ霧島の性質のせいで、距離の詰め方や吉乃との関係性も独特で面白いのだが、それはぜひ本編でお楽しみいただきたい。

 実は吉乃には、2歳上の翔真という家族がいる。吉乃とは血は繋がっていないが、翔真が中学3年のときに吉乃の祖父に喧嘩を売ったことがきっかけで拾われた身だ。一見すると、クールで無愛想だが、意外と感情が表に出やすく、霧島とは正反対な性格のようにもみえる。吉乃にとって兄とも幼馴染とも違う、心地よい二人の関係性がある。お互いに言いたいことを言い合って喧嘩もするわりに、一緒にいることが多く、こまめに連絡を取る仲だ。

 あるとき、吉乃の荷物を届けに東京まで来た翔真。霧島との結婚は二人だけの問題ではなく、何か裏があるのではないか、もしかしたら双方の組で抗争が起こる可能性などを気にしていた。そこで、吉乃が霧島のことがわからないと悩んでいると、翔真はこう言い放つ。

「じゃあ吉乃さんの代わりに俺が深山霧島(そいつ)のことを殺したる」

 話がぶっ飛んでいるようにもみえるが、霧島がいなかったら吉乃がそこまで悩む必要がないからということらしい。もし殺したくなったら、言ってください、「待ってるんで」と吉乃に言う。このやりとりは、吉乃と翔真のなり染めがわかるスピンオフ『二人は底辺』とも繋がるので、こちらの作品も一緒に読むことをおすすめする。

 翔真は霧島のように吉乃のことを「好き」「惚れている」と堂々と言うわけではないが、「何のために命張るねん」と吉乃に言われたときの仕草には目を引く。6巻は特に推したい。何気なく言った吉乃の「……まあでもアンタと一生一緒に暮らすのも別にいいかもな」という言葉に、翔真は「一生一緒に暮らしても まあまあ楽しいんちゃいます」と返す。この翔真にとっての「まあまあ」の意図に気づくと、途端に翔真が愛らしくなってしまい、悶絶することだろう。

 また、6巻発売の告知CMでは、声優の遊佐浩二さんが翔真の声をあてている。何度も繰り返し観返してしまいたくなる動画なのでぜひ(6月30日までの限定公開)。

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