『幽☆遊☆白書』常に人気トップだった飛影の魅力とは ギャップを生む“抜け感”を考察

 『幽☆遊☆白書』が週刊少年ジャンプで連載されていたころ、2回あった人気投票で常に1位だったのは、最初は主人公の敵として登場した盗賊の妖怪・飛影である。

 第1回の人気投票でトップに躍り出たとき、2位の蔵馬とともに「人気があるとは思っていたけど、主人公を超えるとは」と驚かされたが、学校でクラスメイトと話せばわかる。彼は男子人気も女子人気もあった。男子人気は、飛影の戦闘力の高さに憧れた人が多い印象だった。冷淡でありながらいざとなれば主人公たちと行動を共にし、双子の妹·雪菜を守ろうとする行動からは、ヒロイズムすら感じ取れる。

 女子人気で言うと、飛影は90年代の「萌え」をつかさどっていた。いわゆるボーイズラブ作品に詳しくなく「腐女子」ではない私にとっても、飛影と蔵馬、もしくは別のだれかをカップルにした同人誌をよく目にした。そんな多種多様な読者たちは、なぜ人気投票で飛影に投票したのか、そして飛影のキャラクターは、今、どのように漫画というエンターテイメントの世界で活きているのか考えたい。

 前述したように、序盤の飛影は主人公・幽助の明らかな敵だった。捨て子で盗賊に拾われ育てられた飛影は残忍かつ冷淡な性格で、同じ敵としての初登場でも、人間界で人の情を知った蔵馬のあたたかみとは異なるところにいた。

 次の登場から飛影は蔵馬と共に幽助側で妖怪たちと戦うことになる。協力すると免罪も可能とコエンマ(閻魔大王の息子で幽助たちに指示を出す)に言われたのだ。

 飛影は妖怪としては蔵馬よりだいぶ若い。幽助たちに興味がないふりをして、好戦的でありつつも、だんだんと幽助の強さに一目おくようになる。表情に出すことはないが、「オレと幽助だけでもいいくらいだ」と話すくだりもある。

 『幽☆遊☆白書』には幽助、桑原、飛影、蔵馬のメインキャラ4人がトーナメント形式で敵の妖怪たちと戦う「暗黒武術会編」があり、むりやり棄権にされたときを除くと、飛影は1対1で戦ったすべての妖怪に勝っている。彼が妖怪としても非常に強いことが強調された大会でもあった。

 飛影の魅力は強さだけではない。

 釣り目で黒髪を逆立てているが、小柄で、今なら「ツンデレキャラ」と呼ばれていたかもしれない。飛影は考えるより先に戦おうとすることが多いので、頭脳戦は不向きであり言葉につまることもある。雪菜が飛影の妹で、飛影がその事実を雪菜に隠していると知ったあと、蔵馬が飛影をからかうシーンにそれがよく表れている。

 彼は真っすぐに自分の思ったことを言う桑原のようなキャラには、いやみや文句を言うことができるが、知的で冷静に物事を見ている蔵馬には何も言い返せない。そこにファッションで言うところの抜け感、飛影のかわいげがあるのだ。

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