『カードキャプターさくら』クリアカード編はシリーズ最高傑作か? その魅力を解説

 1996年に「なかよし」(講談社)で連載が開始され、今年で25周年を迎えた『カードキャプターさくら』。クロウカード編から始まり、2000年にさくらカード編が完結した。さらに2016年には「クリアカード編」がスタートし、現在コミックスは最新11巻まで発売されている。

 近年、90年代に連載していた少女漫画のリバイバルが多く見られる。筆者はリブートものには2つのタイプあると考える。1つは、前作の主人公の子どもなど次世代に受け継ぐかたちで物語が進んでいくもの。例えば、吉住渉『ママレード・ボーイlittle』(集英社)や高屋奈月『フルーツバスケットanother』(白泉社)などがある。もう1つは前作と同じ主人公が成長し新たな物語が始まる作品。例えば、高須賀由枝『グッドモーニング・キス』(集英社)などがある。『カードキャプターさくら クリアカード編』は後者に当たる。

 本記事では、クリアカード編を新たな視点で楽しむために、前作とクリアカード編を比較し、更に魅力的になった点を3つ挙げていく。

 前作でクロウ・リードが作った魔法のカードを「さくらカード」に変え、カードの真の持ち主となった桜。ライバルであった小狼ともお互いに想いを伝え合うが、小狼は香港に帰ることに。クリアカード編は、友枝中学校に進学した桜が入学式で小狼と再会するところから始まる。その夜、桜はカードが砕け散る夢を見る。目覚めた桜が確認するとカードは透明になって魔力を失っていた。その後、封印の鍵を授けられる夢を見ると、実際に夢で見た鍵が手元にあり……。新たに夢の杖を手にすることになった桜は、再びカードを集めることになる。

中学生になった桜が新たな問題に立ち向かい活躍する

 『カードキャプターさくら クリアカード編』は、主人公の桜が中学校に進学するシーンから始まる。これは前作の最終シーンを描き直したものであり、前作とシームレスに繋がっている。

 カードキャプターさくらの見どころのひとつは、個性的で魅力的なキャラクターや年齢や性別に依らない恋愛だろう。例えば、エリオルと観月先生や桃矢と雪兎の関係性が挙げられる。今作では、その関係性の続きが見ル事ができたり、桜を支える知世や小狼も変わらず出てくる。知世が手作りする衣装も見どころの1つだ。

 桜がカードを集めていくという基本路線も一見変わらないように見えるが、よく物語に注視すると前作までとは異なる点がある。それは、今作では桜が「巻き込まれ型」となって物語が進行していく点だ。

 前作の初期段階では物語に急に巻き込まれてはいるが、日常生活を送る桜の周辺で生じた不思議やトラブルに対して、知世や小狼たちと協力しながら、じっくりと向き合って積極的に動くシーンが多かった。町に散らばってしまったクロウカードを集める際も、集めたカードを「さくらカード」に変えていく際も、桜が主体的に動けていた。

 しかし、今作では突然生じたトラブルに、訳もわからずその場で対応せざるを得ないシーンが多い。これは新キャラクター・ユナ・D・海渡の企てによるもののようである。

 ストーリー全体の進行は前回より遅いが、巻き込まれることが多くなったからか、テンポよく読める。しかし、巻き込まれ型になったことで、知世の用意した衣装に着替えるタイミングが少ない。そのため、可愛い衣装を着た桜を見る機会が減っている印象だ。もちろん、そのままでも可愛いのだけれど。

秋穂という新キャラクター

 前作は、クロウカード編、さくらカード編ともにクロウ・リードとその生まれ変わりであるエリオルが物語の謎の中心であったが、今作の中心は新キャラクター・秋穂だ。

 友枝中学校に転入してきた詩之本秋穂は欧州最古の魔術師一族に生まれたものの、魔術が使えず一族から無視されていた。その後、魔法具としての価値を見出された秋穂は世話役の海渡とともに世界中を旅している。桜と秋穂の見る夢がリンクしているような描写があるが詳細は不明である。なお、秋穂は桜と意気投合して友達関係になっている。

 前作では、エリオル(クロウ・リード)は意識的に桜とカードの関係に介入していた。しかし、今作の秋穂はカードの存在すら知らない。鍵となる登場人物である秋穂も状況を理解できていない点が、前作とは大きく異なっている。これがどのように展開していくのか、秋穂自身がどのように自分の謎に気がついていくのか。また、全ての事情を把握しているように見える海渡の意図はなにか。問題を一段階複雑にした話の展開が見どころである。

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