BTS RMは読書から何を得ているのか? エッセイ『それぞれのうしろ姿』が気づかせる視点

 「僕の休みは本当に読書と筋トレしかないです」と、この秋オンエアされたリアルバラエティー番組『In the SOOP BTS ver.』season2でも語っていたほど、大の読書家として知られているBTSのRM。日常を離れて森の中で休息を取るというテーマの同番組においても、何冊も本を持参して読書タイムを楽しむ姿が見受けられた。

[In the SOOP BTS ver. Season 2] Official Teaser 2

 多くの時間を読書に費やしてきたRMが手に取る本とは、一体どんなものか。きっと良本に違いないと、ARMY(ファン)たちも興味津々。時折、SNSの写真に写り込んだ本が大きな話題になることも少なくない。

 そんなRMが、2021年5月28日の深夜、ファンコミュニティプラットフォーム『Weverse』にて、ある本の一部を撮影して投稿した。それは韓国の現代美術家、アン・ギュチョルによるエッセイ『それぞれのうしろ姿(邦題)』だった。

 きっとこの本を読めば、“芸術家とはなんて繊細に世の中を見つめているのだろうか“という感想を抱かずにはいられないはずだ。木が削られる音やコオロギの鳴く声に思いを馳せ、世界中の涙の総量を想像し、「苦しむ」や「幸せになる」といった言葉の本当の主語について考察する。普段何気なく聴き逃している音や言葉、見過ごしがちな風景を注意深く見つめ、そしてどのように生きていくかと思考し続けているのだ。

 物事の見方は一つではない。今見えているもの、感じているものだけが、すべてではない。そんなことを気づかせてくれるエピソードが一つひとつ、美しい詩のように綴られている。アン・ギュチョルが描くスケッチと共に文章が添えられているため、大人の絵本のような親しみやすさもある。

 パッと開いて1日1エピソードを読む、なんていう楽しみもできそうだ。また、友人と読み合わせて、どのエピソードが面白いと感じたのかを話し合うという楽しみも良いかもしれない。では、RMがピックアップしたエピソードはというと、「植物の時間」というページだった。


 これは、第一章のタイトルにもなっている、音楽アルバムで言えばリード曲のようなエピソードだ。そこで語られるのは、裏庭にある花木や虫、雑草たちが、冬の厳しい時間を耐える姿を見つめたときの気持ち。

 無慈悲な自然を前に、まるで静止画のようにじっとしているように見える小さなものたちを「憐れだ」と思うのは、もしかしたら人間の驕りかもしれないと投げかける。人間は黙々と時が過ぎるのを待つのが得意ではない生き物だ。焦り、葛藤し、虚しさを何かで埋めようとじっとしていることができない。

 そんな人間の姿は逆に植物たちからしたら、滑稽に映るのではないかと考えるのだ。そして「人生に意味がある」とか「ない」とか、そんな迷いさえも、冬の木々の前では恥ずかしい愚痴になるのかもしれないと。淡々と語られる中にも、ハッとさせられる。そして読み進めていくうちに、心の調子を整っていくような気分にもなる。

 10月25日、RMがオンラインライブ『BTS PERMISSION TO DANCE ON STAGE』にて、この世界的パンデミックの影響でライブができなくなり「モチベーションを保つのが難しかった」と語っていたことを思い出す。

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