『ときめきトゥナイト』市橋なるみはなぜ第2部のヒロインに? その重要な役割を考察

人間と魔界人の違いを強調させる

 しかし、彼女には重要な役割がありました。それが、人間界に住む魔界人を受け入れ、人間視点で魔界人を語ること。魔界人の能力や行動、人間界で暮らしていく上での工夫や苦労を人間の第三者がキャプチャーして読者に届けているのです。周囲に魔界人がいるからこそ発生する問題も、彼女が客観的に伝えています。

 例えば、トップアイドルの安西二葉が転入してきて、鈴世に思いを寄せるようになります。二葉はアイドルでありながら恋心を隠さずオープンにするタイプだったため、鈴世は瞬く間にマスコミに注目されるように。その結果、鈴世の秘密が暴露され、江藤家は人間界を去らざるをえなくなります。なるみはどうすることもできず、ただひたすら状況を見守り、待つしかありません。人間と魔界人の埋めようにも埋められない差を強調する上でも、非常に重要なキャラクターなのです。

 また、人間と魔界人の恋愛を成就させるために、乗り越えなければならない課題を掘り下げたのもなるみでした。この件に関しては蘭世編でも語られていますが、永遠の命を持つ魔界人と命に限りのある人間では共に時を重ねることができないため、人間が魔界人になるか、別れるかの選択を迫られることになるのです。

 蘭世と鈴世の母親である狼女のシーラは、子どもたちが人間に恋することに反対していました。魔界人としての血を絶やしてしまう可能性があるだけでなく、子どもたちが傷つくことを恐れていたからです。そして、鈴世はなるみと共に生きることを選び、シーラが恐れていた決断を下してしまいます。

 どうしようもない状況だったとはいえ、結果的に鈴世に大きな決断を下させるきっかけとなったなるみは、その先、責任と重圧を背負いながら生きるのです。番外編の「星のゆくえ(江藤家編)」では鈴世は再び魔界人に戻った可能性が示唆されていますが、なるみは人間のままのはず。これからも魔界人と人間が共に生きる苦労を描くキーマンとして、物語に深みと新たな視点を与えてくれるはず。

 市橋なるみは大切な江藤家の一員として、『ときめきトゥナイト それから』にも登場しています。蘭世との絡みもすでに出てきているので、これからも活躍していく姿を見られることでしょう。


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