『りゅうおうのおしごと!』は藤井三冠に追いつけるのか? ミステリアクションも充実のラノベランキング

 将棋の神様はライトノベルの破天荒さがお嫌いらしい。9月13日に開かれた将棋の叡王戦五番勝負最終局でタイトルが移動し、藤井聡太三冠が誕生した。19歳1カ月での三冠達成は、羽生善治九段の最年少記録より3年以上早く、10代では初となる。白鳥士郎のライトノベル「りゅうおうのおしごと!」シリーズで、ようやく二冠となった主人公の九頭竜八一を、現実の藤井三冠が突き放した形だ。

 Rakutenブックスの週間ライトノベルランキング(9月6日~12日/https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#! )で特装版が6位、通常版が17位となった最新刊『りゅうおうのおしごと!15』(GA文庫)が発売となる直前の藤井三冠の快挙。作者も「まさか新刊15巻の配信6時間前に史上最年少三冠になって、フィクションを殺しにかかるとか…なぜいつもこんなにタイミングが神がかっているの…」とツイート。破天荒だからこそ面白い設定が、現実によって次々と塗り替えられていくことに驚いてみせた。

 もっとも、藤井三冠の活躍で将棋への関心が深まることは、『りゅうおうのおしごと!』シリーズにとって悪い話ではない。フィクションとはいえ藤井三冠に匹敵する強さを持ち、将棋界で最高位の竜王位に16歳で就いた八一に興味を持って、シリーズを手に取る人もいるだろう。読めば、天才でもスランプに苦しむこと、プロ棋士になりたくてもなれない若者が大勢いること、「女流棋士」がプロ棋士とは違う存在であることなど、将棋の世界の奥深さに触れられる。

 フィクションならではの楽しみもある。八一は2人も弟子をとっていたり、こちらは現実では未だに誕生していない女性のプロ棋士四段と恋愛関係にあったりする。最新刊では、幼い頃から知っている女流棋士の供御飯万智と2人きりで旅館に泊まって共同作業に精を出している(何をしているからはぜひ読んで確認しよう)。

 ランキングでは、伏瀬『転生したらスライムだった件』、川原礫『ソードアート・オンライン』、伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、支倉凍砂『狼と香辛料』、佐島勤『魔法科高校の劣等生』といった超人気シリーズの最新刊が、予約や新刊発売のタイミングで上位を占めた。『転スラ』シリーズはノベルズ、コミカライズに続いて児童書版となる『転生したらスライムだった件 最強のスライム誕生!?』が上中下巻で出て、読者層をさらに下の年齢層へと広げそうだ。

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