『進撃の巨人』有終の美を飾る 『ONE PIECE』や『呪術廻戦』を抑えてランキングトップに

 3位の『呪術廻戦』16巻は、「渋谷事変」の最終局面を描いた重要な巻。同巻に巻かれているオビのコピーによれば、コミックスのシリーズ累計発行部数は5000万部を突破したらしく、これから始まる「死滅回游」編では、「少年ジャンプ」の“お家芸”ともいえる、敵味方に分かれた複数キャラによる異能バトルはますますヒートアップすることだろうし(本誌連載分ではすでに、人気キャラのひとりが壮絶な戦いぶりを見せている)、今年の12月に公開予定の映画(『劇場版 呪術廻戦0』)に絡んださまざまな展開も含めて、これまで以上に同作が盛り上がっていくのは間違いないだろう。なお、先ごろ、作者の芥見下々が体調不良のため、『呪術廻戦』を1カ月ほど休載するということが「少年ジャンプ」本誌で公表されたが、なんといっても週刊連載は体力勝負、ここはゆっくりと静養していただきたいと思う。

 さて、最後に、4位と5位の作品について、少し書きたいことがある。両作とも漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」発の話題作だが、その連載媒体の「新しい」イメージも手伝って、なんとなく「若い作家による作品」という印象が多くの読者にはあるかもしれないが、実はこの『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)と『怪獣8号』(松本直也)、それぞれの作者は、これらの作品でいきなりブレイクしたわけではなく、ここに至るまでにそれなりの執筆歴もあるベテラン作家である。つまり、「少年ジャンプ+」は、周知のように新人の読切作品を積極的に掲載している一方で、こうしたもともと力のあったベテラン作家のブレイクないし再ブレイクへのトスも上げているわけであり、これは「漫画雑誌」として本来あるべき、健康的な姿(正しい編集方針)だといえはしないだろうか。

 いずれにしても、今回のベストセラーランキングの結果は、あらためて「ジャンプ・ブランド」の強さを浮き彫りにするものではあるのだが、ひと口に「ジャンプ系」といっても、それぞれの作品がそれぞれのやり方でヒットしているということがわかるし、また、そこ(=ジャンプ・ブランド)からはみ出した『進撃の巨人』のような異形の作品が、圧倒的な強さで1位に君臨しているさまを見ても、「少年漫画」という表現ジャンルがいかに可能性に満ちたものであるかがわかるだろう。

島田一志……1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。https://twitter.com/kazzshi69

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