90年代に発表された短編集『七つの海』はいかにして伝説となったか? 岩泉舞が残したメッセージを読む

 いずれにせよ、本書に収録された作品の多くでは、虚構と現実の狭間で「世界」と対峙する少年少女の姿が描かれているのだが、ある者は自分なりの「真実」を見出し、ある者は新しい世界で生きていこうとする。作品によってはややほろ苦い味わいを残すものもあるが、作者が当時の『少年ジャンプ』の読者たちに伝えたかったメッセージは、「七つの海」で美しい保健の先生が主人公にいったこの言葉に集約されているだろう。

素敵な大人になってね

~岩泉舞「七つの海」より~

 岩泉舞が本書に収録されている短編の数々を描いていた頃の『少年ジャンプ』といえば、600万部以上の発行部数を誇っていた怪物雑誌であり、だとすれば、かつてリアルタイムで「七つの海」を目にした“少年”読者は無数にいたはずだ。

 あなたはいま、“素敵な大人”になっているだろうか。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twitter

■書籍情報
『MY LITTLE PLANET』
岩泉舞 著
定価:1,400円+税
発行:小学館クリエイティブ
発売:小学館

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