『夜桜さんちの大作戦』ドタバタラブコメからバトル漫画へ ジャンプ漫画王道の展開に注目

 権平ひつじが「週刊少年ジャンプ」で連載している『夜桜さんちの大作戦』(集英社)は、両親を事故で亡くした少年・朝野太陽が幼馴染の夜桜六美を守るためにスパイとして成長していく物語だ。スパイ一家・夜桜家の当主だった六美と結婚した太陽が、夜桜家の兄妹たちから厳しいスパイ修行を強いられるドタバタラブコメとしてはじまった本作だったが、話が進むに連れて物語のスケールが大きくなり、やがて夜桜家と対立する謎の組織・タンポポが太陽の両親の死に絡んでいたことが明らかになる。

 最新巻となる第8巻では、夜桜家がタンポポの拠点を制圧する作戦、コードネーム「夜桜前線」がスタート。太陽は今まで以上のパワーアップが求められ、いよいよ秘められし力が覚醒する。

以下、ネタバレあり。

 先の戦いで、夜桜の血に含まれる「ソメイニン」を六美によって注射された太陽は、その影響で生まれる力「開花」を覚醒させるため、夜桜家の祖父・万から厳しい特訓を受けていた。

 なかなか太陽が「開花」しない中、万は六美に銃口を向ける。太陽は、とっさに六美をかばい、弾丸を手で受け止める。手の平で止まった弾丸を見た万は、太陽の「開花」が手の細胞の凝固や、衝撃緩和のための関節の軟化といった一時的に身体の細胞を変質させる「硬化」だと判断する。

 「開花」の能力には、その人の人間性が反映される。万は六美を守るという太陽にとって最も深い行動原理を刺激することで、彼を完全覚醒へと導いたのだ。太陽は、修行のためとは言え、万が六美に銃口を受けたことに怒りを露わにするが、これは自作自演のことで六美も了承のことだった。万と六美が「太陽開花ドッキリ大成功!」という看板を見せる場面は、シリアスとギャグを行き来する本作らしい緩急だが、本当にシリアスなのはその後である。

 祖母の京子に案内されて夜桜屋敷の最深部にある「夜桜の間」へと案内された六美は「スパイ一家夜桜の成り立ちの秘密」が記されているという「蕾の書」を見せられる。本書には鍵がかけられており、解錠方法は戦火で失われている。もし無理にこじ開けようとすると屋敷が崩壊する仕組みになっているという。

 京子は六美がひとりぼっちになって家の秘密を守れなくなったら、当主として「すべてを消し去る覚悟はある?」と問いかける。「太陽や皆と過ごした時間は」「消えないよ」と返答する六美だが、夜桜家当主としての重責を彼女が背負っていると知った太陽は、改めて六美を守ろうと心に誓う。

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