『珈琲いかがでしょう』が問いかける“人の道” 王子様スマイルの裏に隠された思いとは?

人は本当に変われるのか

 作中には、青山と同じようにヤクザから足を洗った者も登場する。そんな者たちから見ても、青山の変化は大きいようだ。

「昔のおまえを知ってると本当に身の毛がよだつな」

 王子様スマイルも昔からの知人からするとゾッとするらしい。仕事も変わり、表情の作り方も話し方も、考え方も変わった。人間はそこまで変わることができるのだろうか。

 変わりたいと思っていても、昔の自分を知っている者によって足を引っ張られることはたびたびある。過去から逃げ切れず、戻ってしまうこともある。青山には確固たる「絶対に戻らない」という想いと、戻らないために、珈琲以外のものは何も持たないと決めていたのだろう。

 大きく人生を変えるためには何かを捨てなければならない。変わるきっかけはささいなことだ。例えば珈琲一杯でも変わる。ただ、本気で変わろうとすれば。それだけの覚悟が必要だと少しばかり教訓めいた意味も込められているのかもしれない。

■書誌情報
『珈琲いかがでしょう』1〜3巻/新装版上下巻(マッグガーデンコミックスEDENシリーズ)
著者:コナリミサト
出版社:マッグガーデン

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