『呪術廻戦』最新刊はジャンプバトルの真骨頂! 覚醒した芥見下々の筆力を見逃すな

 その後、虎杖は戦意喪失。真人は虎杖に追い打ちをかけるように「甘ぇんだよクソガキが!!」「これはな戦争なんだよ!!」「間違いを正す戦いじゃねぇ!!」「正しさの押しつけ合いさ!!」「ペラッペラの正義のな!!」と言った後、「オマエは俺だ」と虎杖に言う。

 この世に善悪などなく勝敗が全てというのが真人の考えなのだろう。今まで虎杖が大切にしてきた価値観を容赦なく踏みにじる真人は悪役として凶悪で、負の魅力がみなぎっているが、ここで虎杖を助けに現れるのが、東堂葵だと言うのが面白い。

東堂葵と東堂が溺愛する“高田ちゃん”

 東堂は、一級呪術師として実力はあるものの、思い込みが激しく性格に難があるため、仲間からウザがられているが、そんな彼だからこそ、虎杖の絶望を受け止め、ブラザーとして救うことができる。

 東堂は虎杖に、呪術師のやっていることが正しいかどうかはわからないが「俺達全員で呪術師なんだ」と言い、自分のせいで多くの人々が命を落としたことに苦悶する虎杖に「散りばめられた死に意味や理由を見出すことは」「時に死者への冒涜となる!! それでも!!」「オマエは何を託された?」と言った後「答えが出るまで決して足を止めるな」「それが呪術師として生きる者達への」「せめてもの罰だ」と東堂は言う。

 無論、ここで言う呪術師には東堂自身のことも含まれる。おそらく、オマエの罪と罰は俺がいっしょに引き受けてやると言っているのだろう。その後、物語は虎杖&東堂VS真人の呪術バトルとなり、戦いの渦中で、それぞれの潜在能力が120%引き出されることでパワーアップしていく。これぞ、ジャンプバトルの真骨頂と言える熱い展開だが、バトルだけでなく作者の芥見下々も、この15巻では120%の力で発揮しており、いよいよ漫画家として覚醒したと言える。

 最後は今まで謎に包まれていた敵の親玉・夏油傑が登場し「続けようか」「これからの世界の話を」と、意味深なことを言って次巻へ続く。物語、テーマ、漫画表現としての面白さ。あらゆる面において、今こそ読まれるべき漫画である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『呪術廻戦』(ジャンプ・コミックス)既刊15巻発売中
著者:芥見下々
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/jujutsu.html

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