宮地真緒、屋久島で見せた「最後の裸身」の尊さーーデビュー20周年、深みを増した表現に触れる
女優の宮地真緒がデビュー20周年を記念して、2020年12月28日に写真集『逢燦燦(あいさんさん)』を発売した。初の主演を務めた2002年放送のNHK連続テレビ小説『まんてん』の舞台にちなんで、撮影は鹿児島県の屋久島で行われた。自然豊かな地で見せる36歳の裸身。ページをめくるごとに森林の奥へと進んでいくように、彼女の深みに触れられる一冊となっている。
写真集の刊行は、2010年にデビュー10周年を記念して発売された『Decada』以来。主演を務めた映画『失恋殺人』でフルヌードの濡れ場を披露し、大きな話題となったのもこの年だった。そこから約10年のときを経て、写真集に収める「最後の裸身」。初主演作の思い出が残る屋久島に再び訪れたことは、必然的な巡り合わせだったのではないだろうか。読めば読むほどに、森のなかをこだまする小さな音ともに、彼女の存在が粒子的に浮かび上がってくる気がする。
宮地真緒の肌に馴染む屋久島の空気
冒頭で述べた通り、写真集の撮影は、2002年に彼女が初めて主演を務めた朝ドラの舞台である屋久島で行われた。18年ぶりに屋久島の空気が宮地真緒を包む。樹齢1000年を超える屋久杉が生えていることで知られ、世界自然遺産にも登録されている屋久島。18年もの年月が流れれば、彼女自身にも周囲の環境にも変化があって当然だが、写真集で見る屋久島の景色は、朝ドラの映像で見た風景と変わらぬ迫力を保っている。あたたかく、やさしい木漏れ日。土の香り。風の音。水の温度。大自然が織りなす全てが五感を刺激する空間。デビュー20周年を記念した写真集で、改めて屋久島に降り立ったことは、運命的な何かに導かれてのことかもしれないと深く考えてしまう。時間の経過を感じさせないほど、まるでずっとそこで暮らしていたかのように、宮地真緒の肌に屋久島の空気が馴染んでいるのだ。
写真集の撮影を振り返った自身のブログでは「約18年ぶりに降り立った屋久島は…正直に言うとほとんど覚えていませんでした。」「当時の私がどれだけ必死で景色を見る余裕すらなかったのか…ということにしておきます。」と語っている。当時は、若手女優にとって一つの登竜門とも言える朝ドラのヒロインの座を手にした18歳の少女だった。まだ駆け出しの頃の瞳は、確かに屋久島の大自然を捉えていたはずだけれど、きっと今ほどの余裕はなかったに違いない。どっしり構える木々の姿とは裏腹に、心のなかではあらゆる気持ちが渦巻き、ふわふわした感覚があったのだろう。見落としていた景色。気づかなかった自然の香り。18年ぶりに戻ってきた屋久島で見つけた足跡。原点との再会は、訪れるべきタイミングで訪れた新しい出会いだったのかもしれない。
あの頃と変わらぬグラビアカット
驚くべきは、10年前と変わらない美しいプロポーション。スレンダーなシルエットはさることながら、肌のハリや艶、肉感など、全てにおいて衰えを感じさせない。それどころか、一つひとつの表情に余裕が感じられて、ナチュラルで堂々とした立ち姿に安心感を覚える。10年ぶりに写真集を出すとなると、多少気後れする感情もあっただろうけれど、これは10年前には完成しなかった写真集だとも言えるはずだ。新型コロナウイルスの流行により、生活が一変した2020年。それぞれが自分の生活や仕事、ひいては人生について考える時間があったことと思う。彼女もまた、女優として歩んできたキャリアや自分の人生を改めて見つめなおす大きなきっかけが、写真集の制作にあったのではないだろうか。18年前と変わらぬ屋久島。10年前と変わらぬ美しさ。そして、変わらざるを得なかった社会と心。それらが写った裸身は、今こうして残すべき形だったとも考えられないか。デビュー20周年というアニバーサリーが重なったことも踏まえて、やはり運命的な導きがあって生まれた写真集だと感じてならないのだ。