吉岡里帆の“癒しの笑顔”はアートになり得るーー写真集『里帆採取』で見せた表現力
演じる人・舞台に立つ人
吉岡里帆の本業は言わずもがな女優である。地元の小劇場で見た舞台に影響を受けて以降、「演じること」に興味を持ち、当初は独学で芝居を勉強していたという。明るい癒しの笑顔を見せる彼女だが、ストイックで熱い一面も持っている。
チャプター3の冒頭は、詩人・最果タヒの詩「わたし」から始まる。吉岡里帆に対して純粋に好きな気持ちを向けたくなる感情に共感するし、吉岡里帆を介さずとも優しく心に響く言葉が連ねられているので、ぜひ実際に写真集を手に取って読んでもらいたい。チャプター1で見せた無垢な笑顔と、チャプター2で見せた繊細な内面。そして舞台に影響を受け、真っすぐ努力を重ねた「演じること」への熱い思い。最果タヒの詩が、写真とともに吉岡里帆の生き様と人柄を立体的に伝えてくれているようだ。
続くページでは、大きなコンサートホールの階段をゆっくり上がっていく吉岡里帆の姿が。詩がひっそり頭の中をこだまする。ふわりと下ろされた髪のせいだろうか。そこにいる吉岡里帆は、舞台に憧れる少女のようでもあるし、舞台に立った記憶に思いを馳せる人のようでもある。そして観客席に座る姿からは、純粋に芝居が好きだという「好き」の軸がハッキリと見える。幕が上がる前、期待から高揚する気持ち。幕が閉じた後、余韻からさらに高揚する気持ち。演じる人になっても、その感覚はずっと変わらないのだろう。
3つのチャプターで構成された写真集のラストを飾るのは、舞台に立つドレス姿の吉岡里帆。スポットライトが似合う。やっぱり吉岡里帆は、舞台の人で、演じる人なんだ。自然に触れる明るい表情と、内面を投影したようなアート表現と、女優としての職業を全うする真剣なまなざしと。今の吉岡里帆の真っすぐさを、あらゆる角度から感じることができる写真集。言葉では言い表せられないような不確かで繊細な魅力。その不確かな部分に確信を持てた気がする。これが『里帆採取』。出会えてよかった。読後の余韻が、とてもあたたかい。
■とり
日々グラビアに勇気と希望をもらって生きており、 グラビアを熱くドラマチックに語るのが趣味。 読んだ後に心が豊かになるような文章を心がけています。 好物はカレーとサーモンです。Twitter、note。
■書籍情報
『吉岡里帆写真集 里帆採取 by Asami Kiyokawa』
著者:吉岡里帆
監修:清川あさみ
写真:熊谷貫
写真:三瓶康友
定価:本体2,300円+税
出版社:集英社
公式サイト