『キン肉マン』名勝負ブラックホールvsジャック・チー戦に見る、“別人格ギミック”の面白さ

プロレスとレフェリーの関係性

 今シリーズに7人の悪魔超人としてブラックホールが登場した際、誰もが四次元殺法コンビの復活を期待したに違いない。しかし今回は各超人陣営のイデオロギー対決がメインテーマである以上、正義超人であるペンタゴンとブラックホールが共闘するのは現実的ではない。しかし当のゆで先生たち自身もペンタゴンを出したかったらしく、聡明なゆで先生が考えついたギミックが、「ひっくり返したら白くなった」なのである。素晴らしい! 傷ひとつついていない元気満々のペンタゴンは、スピードを生かした空中戦と四次元殺法でジャック・チーを圧倒。ブラックホールのフィニッシュムーブの体勢を作ったところでお役御免とばかりに体の色を黒く染めていき、ブラックホールの姿に。ブラックホールが必殺のフォーディメンション・キルでジャック・チーをマットに沈めたのを見届けると、姿を見せることなく再びどこかへと去っていった。

 ここで一つ疑問に思った方もいるだろう。「これってただの乱入で、即反則負けじゃね?」と。確かにシングルマッチでペンタゴンという別のレスラーが乱入、介入してきたというのは反則負けに値するだろう。だが、超人委員会の”厳正な裁定”は、”ブラックホールが変身して別人格のペンタゴンになった”というギミックとして認めて成立させてしまったということである。これこそ冒頭で書いたプロレスならではの変身ギミックを逆手にとったまさにプロレスらしい展開と言えるのではないか?

 加えてレフェリングの緩さもプロレスの特徴の一つである。レフェリーが見てなきゃ何やってもOK。そしてレフェリーが大事なときにちゃんと見ていないというシーンは、プロレスを見てればいくらでも目にするだろう(笑)。だがそのレフェリーの緩さが試合を演出し、ときに観客のヒートを生み、その後やってくるカタルシスを倍増させることもある(もちろんフラストレーションが溜まることの方が多いが)。その意味でペンタゴンの乱入をあえて変身と解釈した超人委員会の裁定は、この名試合を生んだ非常にプロレスらしい名レフェリングでもあったと言えるのではないだろうか?

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

■書籍情報
『キン肉マン(38)』
ゆでたまご 著
価格:本体440円+税
出版社:集英社
公式サイト

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