『SPY×FAMILY』が「大人」の漫画である理由 危うい繋がりの疑似家族の運命は?
イーデン校に入学してからは、アーニャを取り巻く子どもたちの様子が児童漫画的にゆったりと展開される一方、サブキャラが少しずつ増えており、第4巻では予知能力を持った犬・ボンドがフォージャー家に加わる。
サブキャラで面白いのが、ヨルの弟で極度のシスコンのユーリ。彼は国家保安局の少尉で、ロイドとは対立関係。そして第5巻に登場したロイドの後輩の女性諜報員、コードネーム〈夜帷〉ことフィオナ・フロストは、ロイドに好意を寄せており、フォージャー家の妻の座をヨルから奪おうと目論んでいる。
こういった敵キャラが増えていくことも楽しいのだが、時々切なくなるのが、この家族には、あらかじめ終わりが設定されていること。ロイドのミッションが終わるか、それぞれの正体がわかってしまえば、あっけなく破綻してしまう危うい繋がりなのだ。また、ロイドの幼少期の記憶として描かれる戦争の生々しさも気になる。話はホームコメディなのだが、背景にある世界観はシリアスなのでどうも一筋縄で行きそうはない。
結末を描くのはまだまだ先(だと思いたいの)だが、3人のやりとりが楽しければ楽しいほど、切なくなる大人の漫画である。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■書籍情報
『SPY×FAMILY』1〜5巻
著者:遠藤達哉
出版社:株式会社 集英社
価格:本体480円+税
https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/spyfamily.html