『ママレード・ボーイ』から13年、光希と遊の関係はどうなった? 「りぼん」変化した結婚観

 1990年代。その時代のりぼんっ子を夢中にさせた作品の一つに『マレード・ボーイ』(集英社/以下、ママレ)があります。

※以下、ネタバレあり

   続編『ママレード・ボーイLittle』(以下、ママレLittle)は、光希と遊の妹と弟がメインのお話。「妹と弟なんていたっけ……?」と不思議に思うママレ世代の方、その疑問はもっともです。本編連載中はまだ生まれておらず、連載終了後に二人は生まれました。

    本編を通ってきた方ならこの時点である問題に気づいたことでしょう。そう、両親がややこしいのです! 光希と遊の両親はそれぞれ離婚し、お互いにパートナーを交換する形で再婚しています。

   そして、その新しいパートナー間で生まれた子ども。光希とも遊とも半々ずつ血がつながっているという、さらにややこしい事態になりました。相変わらずここの両親は自由に生きています。

光希と遊は結婚していなかったーーその理由とは

 『ママレLittle』は本編から13年の月日が経過しています。光希と遊は正式には結婚はせず同棲をして仲良くくらしていました。まだ籍を入れていない理由は、結婚に際して両親ズが大盛り上がりしてしまったため。

    筆者はこの二人の選択に非常に好感を持ちました。「子どもが欲しくなったら結婚する」「実質結婚しているようなもの」「結婚式はしてもしなくてもいい」という二人の状態が、今の日本社会の結婚観にとてもよくマッチしていると感じたからです。

少女の物語が「結婚」で閉じられる時代は終わった

    ママレ世代がりぼんを読んでいた頃、りぼんなどの少女漫画の中では「結婚」は当たり前の存在でした。結婚後主婦になり出産をしたところで終わった『神風怪盗ジャンヌ』。「柊ちゃんと結婚するの!」が目標だった『ベイビィ LOVE』。結婚式で幕を閉じた『ミラクルガールズ』(講談社)。

    この時代のりぼんなどの少女漫画では結婚は当たり前にするもので、少女の物語のラストを飾るのに相応しいものとして取り扱われていました。その当時りぼんっ子だった筆者も彼女たちのラストに憧れをいだいていました。

    しかし、時代は変わりました。当時こそ何も違和感を感じていませんでしたが、平成・令和と時代を経てきた今となっては一様に結婚をラストに物語を終えていく彼女たちに疑問がわいてきます。「なぜみんな結婚するの?」「少女の物語のラストが結婚式なのはなぜ?」と。

   その点、『ママレLittle』の光希と遊は今の時代にあったパートナーシップの形をみせてくれました。当時のりぼんでは籍を入れずに10年以上一緒に暮らす事実婚という形は受け入れられなかったでしょう。結婚観の移り変わりを意識させてくれるエピソードでした。

   『ママレLittle』6巻巻末に「正式に結婚していないことにショック、ガッカリという声がけっこうあったので結婚シーンを描きました」とある通り、読者の後押しで結婚することになった二人。作中でも周りの後押しを受け結婚式を挙げることになった二人ですが、こののんびりとしたスピード感がまた彼ららしくて微笑ましい選択でした。

    『ママレLittle』では銀太と亜梨実カップルも見逃せません。光希と遊とは違って大学卒業後すぐに結婚した彼らでしたが、その後3年間もの別居を経験しています。

    外資系企業でバリバリ働き、海外赴任に選ばれた亜梨実。教師として日本で働く銀太は早くに子どもが欲しかったこともあり、亜梨実の海外赴任に反対をします。そこで亜梨実は、離婚届を残して出国。その後連絡も取らず3年の月日が経過しました。

    亜梨実の帰国後、わだかまりが解けた彼らはすぐに子どもを授かりました。こう言ってしまうと少し亜梨実が悪役のようにみえてしまいますが、すべて亜梨実の計画通りだったのです。

    亜梨実は早くから海外赴任を経験することで実績を積み、出産後もスムーズにキャリアを築いていけるよう仕事に打ち込んでいました。海外赴任中社内でしっかりとしたキャリアの土台を築いた亜梨実は、今なら安心して出産・育児休暇が取れると帰国後は妊娠に積極的でした。

    元より亜梨実も妊娠は望んでいました。ただキャリアを考えた時に銀太の望むタイミングで妊娠をすることはできませんでした。海外赴任という大きなチャンスを目の前にして、キャリアを捨ててまで「今」妊娠するという選択ができなかった。そのことが彼らの3年にもわたる別居に繋がりました。

    亜梨実の選択はキャリアアップという観点からみると当然のことです。新卒入社で数年後に海外栄転のチャンス。棒に触れますか? 輝かしい成功を前にして、自らの夢を前にして、このチャンスを捨てれらますか?

    すべて聞いていながら亜梨実の海外赴任に反対をした銀太のキャリアに対する理解のなさには苛立たされます。一方では銀太の方がキャリアを捨て亜梨実についていくという選択肢もあったでしょうに。離婚届を置いて行かれて当然です。帰国後、再びやり直せる亜梨実の懐の深さには感心させられます。

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