『ハイキュー!!』東峰旭が頂で見た景色 エースとしての責任感と弱さの肯定

自分を「肯定」し、自分を味方にする

 春高の対戦中にも東峰はエースとして成長を遂げる。リベロである西谷がサーブで狙われ、ボールを上げることができなかった稲荷崎戦。励まされてばかりだった東峰がこんな力強い言葉をかける。

「Aパスなんかなくても俺が決めてやる」

 自分の事でイッパイイッパイだから人を励ますのは苦手、という前置きをしてからの言葉だが、エースからこんなふうに言ってもらったら、奮起しないわけがない。東峰の頼もしい姿に、感動した読者も多かったのではないか。

 東峰の試練は、春高準々決勝だった。鴎台高校との対戦。エースの東峰はとことん相手ブロックから狙われる。「決めなければ」と思うほどブロックされ、失点となると東峰の気持ちは落ち込んでいく。そんな東峰の気持ちを切り変えたのが澤村と菅原だった。

 「100本中100本決められる選手なんていねぇ」と澤村が言えば、「調子のって凹んでんじゃねぇ」と菅原が背中を叩く。成長したと思っていても、東峰は毎回ちゃんと自分のプレーを反省して凹む。自分はダメな奴だとこの世の終わりみたいな顔をする。

 自信が持てない。仲間のことは信頼していても、自分のことは信頼できない。しかし、それでは目の前の相手を倒すことができない。そして、東峰は決意する。

「俺は今日、俺を味方にする」

 自分を味方にできていなかった3年間は辛かったのではないか。いや、そんなことはない。「仲間が重荷であった事があるか」という一言に、東峰の烏野でのバレー生活の全てが詰まっている。その一言れが鴎台高校との対戦、第2セットの中盤で放たれたということに涙が出そうだ。

 現在、東峰はバレーの道ではなく、アパレルデザイナーとなっていることが43巻で明かされている。自分を味方にすることができた東峰は、これから何があってもきっと大丈夫だ。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊43巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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