コロナ失業でマスク転売に手を染める人もーー“年収100万円で生きる”人々の現実

 生活苦の人たちの話を立て続けに聞いて心が落ち込みそうになるが、最後には一筋の光が見える。最終章では、著者である吉川ばんびの半生が語られていく。阪神淡路大震災で家を失い、大学に進学しようとしたら家計を支えてほしいと親から大反対され、新卒で入った会社でも体調を崩して退職を余儀なくされる。

「生まれついた家庭が貧しかったこと」は、本当に自己責任だろうか。固定化された格差から這い上がれないのは、努力が足りないせいだろうか。あなたが今、生活に困窮していないのは、本当にすべてが「あなた個人」の努力の賜物だろうか。

 著者は決して諦めなかった。貧しい人たちの声に耳を傾け、記事にした。最終章に綴られている、自らの経験に基づいた言葉にはずしんとくる重みがある。事実を知ってほしいという叫びを、看過してはいけないと思った。

■ふじこ
10年近く営業事務として働いた会社をつい最近退職。仕事を探しながらライター業を細々と始める。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。お笑いと映画も好き。Twitter:@245pro

■書籍情報
『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-』(扶桑社新書)
著者:吉川ばんび
出版社:株式会社 扶桑社
価格:本体820円+税
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594084752

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