乙一×崇山祟が語る、怪談とメディアの関係性 映画・小説・漫画で広がる『シライサン』の恐怖
崇山「漫画らしくB級の物語にしようと考えていった」
ーー乙一さんは崇山さんの漫画をどのように読みましたか。
乙一:怖さと一緒にギャグテイストが入っているのが好きです。破壊的で、こちらの認識を軽く越えていくんですよね。崇山さんの作品は、最初に『口が目女』を読ませていただいんですが、本当に衝撃的で、どういう頭の構造をしているんだろうと思いました(笑)。『シライサン』も期待通りぶっとんだ作品で、しかも物悲しいところもある。すごく贅沢な読書体験でした。
ーー小説や映画の『シライサン』とは、思いっきり作風が違いますよね。そのギャップも面白いと思います。
崇山:漫画ならではの表現にしようと思ったら、結果的にかなり飛躍した作品になりました(笑)。自分なりに「シライサンとは何なのか?」を考え抜いて、描いているうちにどんどん漫画ならではのシライサンになっていった感じです。僕は描きながら考えるというか、キャラクターに勝手に喋らせて、そこから話が転がっていくタイプなんですね。最初にネームが仕上がったときは、乙一さんに怒られるんじゃないかと思ったのですが、全然そんなことはなく。僕の勝手な飛躍まで回収していただいて、さすがだと思いました。
ーーシライサンは設定ありきで作られた概念のような存在だからこそ、自由に表現できる余地があったのかもしれません。
崇山:漫画は、予算など関係なく表現できるメディアなので、設定さえキープしていれば、あとは何をしてもいいという感覚はありました。どうせなら映像化できないものを描こう、漫画らしくB級の物語にしようと考えていった結果、こういう荒唐無稽な作品になったんです。
ーー怪談やホラーは、メディアの性質や進化によって大きく表現方法が変わるジャンルなのかもしれません。
乙一:そうですね。脚本を練っている時に、今はSNSが全盛なので、それをうまく怪談の中に取り込んでいきたいと考えていました。Facebookには追悼の機能があると知って、それは使えるなと。シライサンは伝播していく種類の怪談ということもあり、SNSとも親和性が高いと思います。
崇山:少し前に流行った、2ちゃんねるの怪談とかも面白かったですよね。異世界に迷い込んでしまった人の話とか、一晩中読んだりしていました。「きさらぎ駅」とか「幽霊だけど何か質問ある?」とか、スレッドならではの怪談になっていて。
乙一:ファンタジーを求めて、つい読んじゃう感じがありますよね。ネットでふと見つけて読んでしまうのも、日常の中に非日常が紛れ込む感じで楽しい。怖いコンテンツには、一瞬死を疑似体験して、ホッとして笑うような快感があるのかなと。
崇山:子供は必ず肝試しとかやりますもんね。
乙一:やりますね。僕が子供の頃は、よく神社で遊んでいました。でも、数年前にそこで首吊り自殺があって、それ以来、子供達がそこで遊ばなくなってしまったそうです。
ーーその神社ってもしかして、乙一さんのデビュー作『夏と花火と私の死体』のモデルになった場所ですか?
乙一:そうです、うちのすぐ近所で……。
崇山:なんだか怖い話をしている気分になってきました(笑)。
(取材・文=松田広宣/写真=石川真魚)
■映画情報
『シライサン』
2020年1月10日(金)全国公開
出演:飯豊まりえ、稲葉友、忍成修吾、谷村美月、染谷将太、江野沢愛美ほか
脚本・監督:安達寛高(乙一)
配給:松竹メディア事業部
(c)2020松竹株式会社
公式サイト:shiraisan.jp
公式Twitter:@shiraisan_movie
■漫画情報
『シライサン ~オカルト女子高生の青い春~』
原案:乙一 漫画:崇山 祟
発売日:発売中
定価:本体900円+税
頁数:200頁
発行:株式会社 扶桑社
(c)松竹株式会社
販売リンク:https://amzn.to/34Pd00K
■書籍情報
『小説 シライサン』
著:乙一
発売日:好評発売中
定価:本体640円+税
体裁:文庫
頁数:320頁
発行:株式会社KADOKAWA
(c)松竹株式会社
販売リンク:https://amzn.to/35OUsyW