TOSHI-LOWが吞みながら語る、弁当作りと理想の親父像 「親父の弁当はもっと面白くて良い」
「父ちゃんの味の弁当で良い」
ーーTOSHI-LOWは、自分の親父さんからの影響はあったりするの?
TOSHI-LOW:普段は酔っ払いのクソ親父ですけど、かっこいいなって思うところはたくさんありますよ。うちの親父はほうれん草の加工をしている会社をやっていたんですけれど、2011年に原発事故でほうれん草が出荷停止になって大打撃を受けたんですね。で、東電から今は使わない漢字とかがたくさん使われた分厚い説明書みたいなのが送られてきて、サインを書いてくれっていう。親父は辞書を引っ張ってきて、それを全部読んだら、結局のとこ微々たる補償金で一生分を手打ちにしろという内容だったんですね。で、親父は周りの人たちに「これにはサインするな」と伝えて、その後にまだどん底の状態なのに国から被災地支援の一環の補助金的な借金を申し込んで、その金で海外から最新型の野菜を安全に選別する機械を購入したんです。で、8年経った今、親父の会社は何倍かに成長してるんですよ。当時、状況に絶望して自殺してしまった農家の方もいたんですけれど、親父は闘い抜いて、生き延びた。すげえかっこいいと思ったし、人間はいざとなったら攻めるしかないんだなって、親父から学びました。
ーー親父さんの生き方は、ちゃんとTOSHI-LOWに伝わったんだね。自分たちの子どもにもちゃんと育っていってほしいし、強く生きてほしいよね。
TOSHI-LOW:サバイバルって「自分が信じてること以外のものが起きたときにどうするか?」ということしかないんですよ。「ちゃんと言うことを聞いていれば大丈夫」と考えると、いざという時に生き方がわからなくなっちゃう。右へ倣えみたいなことは、そもそもサバイバルにはない。2011年の震災の時に、みんなそれを感じたはずなのに、もう忘れているような人もいて、悲しいよね。少なくとも、子どもたちが俺らぐらいの大人になるまでは、みんなが幸せに生きることができる世界で在ってほしい。孫ができたら、そいつらにも面白い世界を見せたいですよね。ちょっと前まで、「そんなのあり得ないでしょ」とか思っていたことが次々に起こっていて、今だってちょっと間違えたら戦争が起こりかねない状況で、やばいなって思う。愛なんて恥ずかしくて、俺はずっと言えなかったけれど、俺は愛ある世界にずっと生きたい。こんなこと、何年か前には絶対に言いたくなかったけど、言わざるを得ない状況なのかなと。弁当の話に戻ると、弁当作りって結局のところ、愛なんですよ。全く同じ材料で同じ手順で同じ味で再現できた弁当だったとしても、愛があるかどうかで全然違うと俺は思っていて。ちゃんと愛が込められているのなら、別に凝っていなくても良い、父ちゃんの味の弁当で良いと思うんです。
ーーそうめんを入れてみたり、恵方巻きを丸ごと入れてみたりするのも、息子に楽しんでほしいという父ちゃんなりの愛だよね(笑)。
TOSHI-LOW:そうですよ(笑)。父ちゃんなりの愛情があるんで、全国の母ちゃんは、もう少し父ちゃんに優しくして欲しいっすよ。本当に、優しくして! ちょっと呑み過ぎて遅く帰っても「しょうがないなぁ」って笑って許してよぉ。
ーー息子に背中を見せていかなきゃ。「父ちゃんは母ちゃんに怒られるもんなんだよ」って教えてあげないと(笑)。息子も大人になったらわかってくれるはず。
TOSHI-LOW:いつか息子にも嫁さんができて、呑んで帰って怒られて、「これかぁ、親父が言ってたのは」ってなるのかな(笑)。
(取材・文=ISHIYA)
■書籍情報
『鬼弁〜強面パンクロッカーの弁当奮闘記〜』
TOSHI-LOW 著
発売中
価格:¥1,500
発売/発行:ぴあ