Olive Oilが放つ魅惑の核心とは? 新作『VITAMIN O』がさりげなく横断する世代、ジャンル、時間
福島県を拠点に活動するアーティスト Olive Oilの音楽は間違いなく素晴らしいし、ここに来ないと得られないものが詰まっているがゆえに、繰り返し再生ボタンを押してしまう。熟練の手捌き、技、遊戯。そこに広がるのは郷愁あふれる景色……だけではなく、過去と今を音楽で結ぶような、もっと壮大なスケールを湛えたものだ。ともかく、伝統性と新鮮さを保つOlive Oilの作品には、私たちを何度も再訪させる魅惑がある。
先日リリースされたアルバム『VITAMIN O』は、約1年10カ月ぶりのソロ名義でのアルバムだ。2024年にリリースされた『 The Others』、そしてCHOUJI、TiGht Plumpとのコラボアルバムを挟んで今作に行き着く。Olive Oilの音楽の驚くべきところは、どう考えても彼の音楽でしかないと思わせられるほど筋道を通すように芯強く立脚する一方で、多方向に接続しようとしているところだ。
たとえば、今年リリースされた小袋成彬と5lackのコラボアルバム『一張羅』は、ディアンジェロが昨年亡くなったタイミングでも再考されたネオソウルというジャンル、ムーブメント、あるいはソウルクエリアンズと呼ばれたアーティストたちが同時代に放ってきたソウル/ヒップホップ作品への、日本からのひとつの回答と筆者は受け取ったが、同時に頭のなかには5lackがOlive Oilと組んだアルバム『50』『5O2』も浮かんでいた。そこには、Olive Oilというトラックメイカーが、生演奏とサンプリングをうまく交わらせてメロディとグルーヴを作り出す、ソウルミュージックの趣を作品に宿してきた文脈があるからだろう。Olive Oilの手によるサウンドの質感は、こういった場所にも接続する。それも、あまりにさりげなく、時間をおいてそのことに気づくように――。
飛び道具的な仕掛けと艶やかなインストゥルメンタルに溢れた『No.00』に比べると、『VITAMIN O』はさらに幅広いアーティストを揃えて、華やかな味わいを増している。まるでディアンジェロ「Brown Sugar」を彷彿とさせる「O BIT DANCE (feat. 笠原瑠斗)」には、シンガーの笠原瑠斗が参加し、作品のムードを方向づける歌唱を披露。また「Montana’s (feat. Montana Joe Carter)」では、立川市出身の若手ラッパー Montana Joe Carterが、ジャズ調の煙いビートで登場。SNEEEZE、Jambo Lacquer、MILES WORD、CHOUJI、韓国のピアニスト CHANNY Dなど、お馴染みのアーティストも多く参加し、多種多様なサウンドを奏でる。Bob Marley & The Wailers「No Woman, No Cry」を大胆に引用した「Digi NWNC」にも耳が惹かれる(これはKOJOEのボーカルを再構築したものである)。歌とラップ、さまざまな楽器演奏と音源ループのアンサンブルが、統制されたムードのなかで高度にパッケージされているのだ。
これらには当然、Olive Oilが今までに接続してきた音楽たちが詰め込まれているということなのだろう。直接的な言及、引用は過去作のなかでも非常に濃い。ソウル、ジャズ、レゲエ。さらにそこには、それらのジャンルに過去に接続してきた昭和歌謡的なムードすら微かに香っている。Olive Oilらしいとしか言いようがないジャンルの横断だ。それが緩やかかつこのうえなくチャーミングに行われている。そこには、さまざまな世代の人々やサウンド、つまり時間の概念そのものが溶けていく感覚がある。それが心地よい。そして、この心地よさは、ここでしか得られないものだ。
Olive Oilの音楽は素晴らしいと同時に不思議でもある。その魅惑の核心に、今回の『VITAMIN O』を聴くことで、少し近づけたような気もする。ここに登場する多様な人々と音は、Olive Oilが広げる景色に宿る精神性を象徴する。






















