PassCode、“アイドル×ラウド”の歩みの先で掴んだ輝きと進化 10周年記念AL『RE:CODE』をライター3氏がクロスレビュー

PassCode『RE:CODE』クロスレビュー

“平坦ではなかった道のり”を見つめ直したからこその歌(小林千絵)

 PassCodeのデビュー10周年記念アルバム『RE:CODE』は、これまでの楽曲を現在のメンバー4人で再レコーディングした、今のPassCodeによる再定義の1枚だ。本作には新曲「GENESIS」も収録されている。ここで彼女たちが歌っているのは〈ランウェイ 踏み鳴らし さぁ ゆこう〉〈満天の夜にいつまでも歩いていたい〉。彼女たちは、決して走っているわけではなく、歩いていきたいのだ。ただし、その足元は〈貴方と駆け抜けた奇跡〉であるべきで、その日々を、踏み鳴らして、噛み締める。では、彼女たちが噛み締める“駆け抜けた日々”とは、どんなものだったのか。

 アイドルシーンでラウドロックを鳴らすという異端の存在であり続けたこと、さらにはメンバーの脱退やコロナ禍を乗り越えてきたことを思えば、彼女たちが歩んできた10年間が決して平坦な道でなかったのは明らかだ。実際、結成当初は8bitサウンドを多用するという特徴を持った可愛らしい楽曲を歌っていた。その印象を抱いて高嶋楓は加入してきたそう。南菜生こそ、もともとバンドが好きで、むしろアイドルになるとは思っていなかったようだが、大上陽奈子もモーニング娘。のオーディションを受けたことがあるというから、デビュー当初のPassCodeはラウドロックをパフォーマンスするという発想すらなかったメンバーがほとんどだったはず。そんな中、当時の彼女たちなりにラウドロックやPassCodeの音楽性を解釈し、一方で解釈しきれないからこその面白さも伴ってリリースしたメジャー1stアルバム『ZENITH』(2017年)の楽曲が、今作には多く収録された。メタルバンドでボーカルを務めていたという、ラウドロックに造詣の深い有馬えみりの加入がPassCodeの転機の一つになったわけだが、現在の布陣で再レコーディングされた初期曲には、単純な歌唱力や発声といったスキルだけではない、ジャンルへの理解の深さや、歌詞世界を自らに手繰り寄せる経験の量が、4人の表現力から滲み出ている。

 例えばメジャーデビュー曲となった「MISS UNLIMITED」。それまでのPassCodeの音楽性を受け継いだ8bitのイントロから始まるこの曲には、〈何もかもを 否定してたんじゃ 求めるものは/そう 見え隠れして 届かなくなる〉というフレーズがある。アイドルでありながらラウドロックを鳴らす彼女たちには、外からの否定的な声も、時には自分たち自身の迷いもあっただろう。この曲には、メジャーデビューの勢いに乗るためだけでなく、そんな孤高の存在であるがゆえの葛藤を跳ね返す思いも込められていたように思える。それゆえの力強さが、この曲の引力になっていた。再レコーディングされた「MISS UNLIMITED」にももちろん力強さはあるものの、突き放すような凶暴さは丸くなり、歌声に優しさを感じる。どこか当時の自分たちを回想するような思いが、彼女たちに生まれているのかもしれない。それは、〈貴方と駆け抜けた奇跡〉を噛み締める「GENESIS」のまなざしにも通じている。

PassCode - Ray / THE FIRST TAKE

 実は私がPassCodeのライブを初めて観たのは、今年3月の『Liberator Release Tour 2026』代官山UNIT公演。そこでまず、「ラウドロックだからといって、長い髪を振り乱したり、ステージ上を暴れ回ったりするのではないんだ!」と驚いた。綺麗な色の衣装をなびかせ、長い髪をふわりと揺らしながら、しなやかに舞い、楽曲を届けていく。そこに、アイドルとしての矜持、PassCodeとしてのスタイルを強烈に感じた。歌声も、シャウトはあるし、がなる場面もあるが、基本的には彼女たちの持ち味を生かした、まっすぐな歌声で届けられる。ラウドから生まれたグループではないからこそ、メンバーそれぞれの個性を保ったまま、むしろ研ぎ澄ませながら、自分たちのスタイルを確立してきたのだろう。今年7月、「THE FIRST TAKE」に登場した際、「Ray」をオートチューンなしの素の歌声で聴かせられたのも、そうした積み重ねがあったからではないかと思う。本作の再録曲で感じた歌声の優しさも、その延長線上にあるはずだ。

 2019年、南が作詞に参加した「horoscope」では〈永遠、なんてきっと御伽話〉と歌っていた。だからこそハッピーエンドを迎えに行こう、という曲だ。そんな彼女たちが、デビュー10周年記念アルバムの新曲で〈満天の夜にいつまでも歩いていたい〉と歌う。永遠をおとぎ話だと言っていた彼女たちが、今は〈いつまでも〉と口にできる。そこにこそ、彼女たちが踏み鳴らしてきた10年間が詰まっている気がする。(小林千絵)

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