キアロスノウ、バチカン市国に愛されたい、ドミノンストップ……ロッキン・ライフの「俺のイベントに出てくれないか!」第9回
「もし今イベントを組むなら、このバンドたちを呼びたい」。そんな妄想を軸に、毎回気になるバンドを選んで紹介している不定期連載の第9回。今回は、音源を聴いて思わず身体が反応してしまったバンドを中心にピックアップした。結成から半年ほどの新鋭もいれば、すでにワンマンツアーを回るほど勢いに乗っているバンドもいる。キャリアも拠点もバラバラだが、どのバンドも「衝動」をきちんと音楽の形にできている点で共通している。
キアロスノウ
2026年5月1日に福岡で結成された、にちな(Gt/Vo)と清風(Ba/Vo)による男女ツインボーカルバンド。結成直後に公開された「Burst!!!」のインストゥルメンタル版MVは、ギターブランドSagoとのコラボとして、楽器の音や演奏に注目してもらうことを狙って作られたもの。この映像が8万回以上再生されるなど、活動初期からじわじわと反響を広げている。名刺代わりのMVで、歌ではなく演奏そのものを差し出せるところに、このバンドの自信が表れているように思う。
8月にリリースされた「マーシャル・アーツ・エンハンサー」は、そんなキアロスノウの魅力がわかりやすく詰まった一曲だ。カッティングギターとスラップベースが前に出てきて、そこに男女のボーカルが会話のように掛け合っていく。音は分厚いのに、ビートは軽快。3分ほどの尺に情報量がぎゅっと詰め込まれていて、つい何度も聴き返したくなる。
11月18日には、福岡・public space 四次元でEPのリリースパーティーを兼ねた初ライブも決まっている。音源だけでここまで話題を集めておいて、ステージに立つのはこれからなのだ。ライブで音源をどのように表現するのか今から楽しみだ。
バチカン市国に愛されたい
2023年に高校の軽音部で結成された東京の4人組。バンド名には「世界一小さい国まで音楽を届けたい」という願いが込められている。メンバーは2026年春に高校を卒業したばかりだが、8月にはEP『しあわせの定義』をリリースし、11月8日の渋谷WWW X公演を含む2ndワンマンツアー『僕らのしあわせの定義』を控えるなど、すでに次のステージへと駆け上がり始めている。
このバンドの魅力は、ざらついたギターサウンドと、感情を剥き出しにしたまま放たれる歌にある。整えすぎない粗さが、そのまま説得力になっている。「藍」や「赤のバット」はまさに、そんな彼らの持ち味を作品に閉じ込めた楽曲であるように感じる。EPの表題曲「しあわせの定義」は、冒頭のしっとりとしたアルペジオから一気に爆発するロックサウンドへの切り替えにゾクッとさせられる一曲で、ライブでさらに化けそうな予感がする。
また、音源の時点でこれだけ生々しいのだから、ステージの上でぶつけられる気迫に触れれば、さらに深く彼らの世界へ惹き込まれるはずだ。ワンマンを重ねるごとに、より多くの街へと活動の場を広げているのが何よりの証左だろう。
ドミノンストップ
大阪を拠点に活動する4人組。同じ専門学校に通っていたメンバーが、学内のコピーバンドイベントをきっかけに集まって結成したバンドだ。1回限りの予定だったのが、そのライブがあまりに楽しくてそのまま続いているというエピソードもあるのだとか。
UKロックのエッセンスとカントリーライクなギターを、ロックンロールという軸でまとめ上げ、ポップで華やかな楽曲に仕立てるのがドミノンストップの持ち味。どこかオールドな手触りもあって、世代を問わず楽しめる懐の深さがある。2025年10月にリリースした初の配信ミニアルバム『吾輩は人である』の「くだらない恋」は、その軽やかさと人懐っこさがよく伝わる一曲だ。2026年8月には、OSAKA MUSE発の新レーベル「MOON BASE RECORDS」の第1弾アーティストとして、シングル「ベビハニ」を配信リリース。こちらも、彼らのルーツであるロックンロールの匂いがしっかり感じられる仕上がりだ。
ライブではさらにダイレクトに熱量が伝わってくるタイプで、本人たち曰く“ショーのようなステージング”でフロアを盛り上げるのだという。ビートに合わせて身体ごと揺さぶられたい人には、ぜひ一度その目で確かめてほしい。
pudelhunds
2024年8月に始動した、福岡を拠点とするスリーピース・オルタナティブロックバンド。読みは「パドルハンズ」。マスロックやエモの要素を感じさせる繊細なギターフレーズと、疾走感のあるタイトなリズム。そこに、中尾優志(Ba/Vo)の儚さをまとった歌声と、すべてを押し流すような轟音、そして感情的なシャウトが重なっていく。その静と動の振れ幅こそが、このバンドの最大の聴きどころだ。
2025年9月の1st EP『memorandum』で注目を集め、2026年2月にはシングル『わたしの肉の肉』を発表。8月には2nd EP『imnotsureif』をリリース。「今の自分が今の自分を肯定するための記録」をコンセプトにしたという『imnotsureif』は、揺らぎを抱えたまま鳴らされるアンサンブルが印象的だ。
テクニカルでありながら刹那的でもあるpudelhundsのサウンドは、狭く、人が密集したフロアであるほど真価を発揮するはずだ。轟音が壁に跳ね返りながら全身に降り注ぎ、その向こうから彼らの逡巡がそのまま押し寄せてくる。そんな特別な音楽体験を約束してくれるバンドだ。
キアロスノウは技巧と勢い、バチカン市国に愛されたいは剥き出しの感情で胸ぐらを掴みにくる。ドミノンストップは軽やかなロックンロールで身体を揺らし、pudelhundsは繊細さと轟音のあいだで心をかき乱す。そんなイメージで、この4組を今回のコラムで紹介してみた。心を揺さぶるロックバンドのライブを観たい人は、ぜひ一度目撃してみてほしい。
























