PANAMレーベル 生誕55周年記念インタビュー:倉品翔(GOOD BYE APRIL)編「本質的なところでつながっている」 “あの時代”の礎を作った旋律

 設立55周年を迎えた、日本のポップミュージックを語るうえで欠かせない名門レーベル、PANAM。2023年に同レーベルからメジャーデビューしたGOOD BYE APRILは、その歴史に新しい風を吹き込むニューカマーである。

 ふと耳にしたメロディが、忘れていた夏の景色を連れてくる。青空の高さ、夕立のあとの匂い、誰かの横顔。GOOD BYE APRILの音楽には、聴き手の記憶へ触れる力がある。ポップマエストロである倉品翔の澄んだ歌声と、日本語の情緒が息づくメロディ。シティ・ポップやAOR、ニューミュージックへの愛情を、今の4人の感性で鳴らす最前線のバンドだ。

 PANAMのアニバーサリーを祝し、そして後述のカバーを収めた配信アルバム『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』が10月7日にリリースされたのに際し、リアルサウンドではふたつのインタビューを企画。本記事では、GOOD BYE APRIL・倉品翔のインタビューをお届けする。

 2026年には結成15周年を迎えたGOOD BYE APRIL。長く音楽を育んできた4人が、憧れの先輩たちと同じ場所で、次の一曲を生み出している。9月2日にリリースした「She's Summer Blue」は、イントロから想い出となった夏の風景が立ち上がる、何度でも季節とともに聴き返したくなるナンバーへと仕上がった。そもそも、3年ほど寝かせていた曲を、なぜ今、届けることができたのか。そして、PANAMのプロジェクトとして南佳孝と共演した鈴木茂「LADY PINK PANTHER」のカバーで得たものとは。GOOD BYE APRILの倉品翔に、新曲の細部からレーベルPANAMへの思い、自ら選んだPANAMプレイリストまで、たっぷり話を聞いた。(ふくりゅう)

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「今がいちばんいい状態」というのがずっと続いている

倉品翔(GOOD BYE APRIL)

――結成15周年を迎え、アルバム『HOW UNIQUE!』のリリースや夏のツアーを経て、今のGOOD BYE APRILはどんな状態にあると感じていますか。

倉品翔(以下、倉品):15年間ずっとそうなんですけど、自分たちのなかで新陳代謝を継続できていて、それによって常に新しい自分たちを見つけ続けられています。そうやってやってきた結果、「今がいちばんいい状態」というのがずっと続いていて。もともとポップミュージックをやりたいというのが下地にはあったんですけど、PANAMでメジャーデビューをしてから、あらためてそこに真正面から向き合う制作やバンド活動を続けてきました。今年2月に出した『HOW UNIQUE!』は、そういう作品になったなと思うんです。リリースしてからは、また今までにない新しい自分たちを探す方向にマインドとしては大きく舵を切って。夏ぐらいまで、新しいトライアルを重ねながら制作していた年でした。ライブやツアーもやっていましたけど、主に制作の面で、新しい自分たちを探していた一年になっているかもしれないです。

――「She's Summer Blue」、めちゃくちゃいい曲ですよね。音の質感も歌い回しも絶妙で、いい場所にたどり着いた感覚があります。

倉品:ありがとうございます。この曲は、自分たちがこれまでやってきたことの幹となる部分、核心に触れている曲だと思います。それを今の自分たちなりのバランスでアレンジできた。ずっと持っていたオーセンティックなものを、新しい形で届けることができた曲かもしれません。

GOOD BYE APRIL / She’s Summer Blue(Official Music Video)

――夏の匂いやノスタルジーにつながる曲ですが、楽曲が生まれたのは3年ほど前だそうですね。どんな状況だったのでしょう。

倉品:メジャーデビューした年(2023年)に「BRAND NEW MEMORY」を出して、その年の6月だったと思うんですけど、次のシングル候補をたくさん作っているなかで生まれた一曲でした。自分のなかで、すごく明確な手応えがあったんです。ただ、サビまでが長かったり、イントロが長かったり、いわゆるシングル向きの作りではなかったので、出すタイミングや出し方が難しいだろうなと寝かせていました。ストックしている楽曲のフォルダをチームのみんなに聴いてもらう機会がたびたびあるんですけど、この曲はずっと根強く「いい曲」と言ってもらっていて。それもあって、今のタイミングだったら出せそうだなと思ったんです。今年の夏に出す2曲のうちの一曲として、自分たちの本質的な部分もある、こういう風景を描くものを今やれたらかっこいいかな、と。

GOOD BYE APRIL / BRAND NEW MEMORY Official Music Video

――「She's Summer Blue」は毎年、この曲を楽しみにしたくなる、エバーグリーンな魅力を感じました。3年の間に、少しずつ育てていったのでしょうか。

倉品:この曲は、完全に寝かせていました。今年に入って、夏に出すと決めてから、いろいろ作り変えたり、試したりしたんです。「Bメロが長いからちょっと短くしようかな?」とか、物理的に聴きやすくなるかなと思ってやってみたんですけど、どれもあまりいい効果がなくて。結局、作った時の「風景を描写する」という、一点突破じゃないですけど、それをやり切ろうという方向で、最終的には仕上げました。

――倉品さんのルーツである長野の景色や空気も、込められているのでしょうか。

倉品:はい。僕は長野で育ったんですけど、信州の夏って、僕が小さい頃はもっと涼しくて、標高も高いから高原っぽい空気なんですよね。四季の色合いがすごく濃い土地で、夏の空は本当に夏の色をしている。そんなところで育ったから、それが音楽になるという感覚が小さい頃から自分のなかで養われていた気がします。季節感を音楽に閉じ込められるということが、自分のなかではすごく自然だったんですね。

 とはいえ、この曲には海辺の景色も出てくるので、いろいろな風景がリンクしているんですけど。長野の原風景と、大人になってから見た海辺の夏の情感がうまく自分のなかでつながって、ひとつの曲になった感じがします。

――音の奥行き、響き方がめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。サウンドでは、どんなところにこだわりましたか。

倉品:この曲、ドラムも特殊で、ずっとタムをドコドコやっているんです。そのタムのロー感が入道雲を想起させたり、夏のうだるような空気が、そこから立ち上ってきたりする感じがあって。それこそミックスが難しい曲だと思うんですけど、前作の『HOW UNIQUE!』からご一緒しているエンジニアの方と世代が近くて。いろいろディスカッションしながらやっていくなかで、この曲の「風景を描く」という部分において、ミックスとして大きな力をいただきました。

――オーセンティックな曲でありながら、音像は新しい。そのバランスが魅力です。

倉品:アレンジでは、余計なことや派手なことはあまりしなかったんですけど、背景になるようにいろいろな音を重ねています。たとえば、サックスのサンプリングが入っていたりして。これも、5年前の自分たちだったら入れなかっただろうなと思うんです。今までやらなかったアプローチや、新しい手触りになるようなトライは、細かいところでいくつかやっています。

南佳孝&鈴木茂の「LADY PINK PANTHER」カバー秘話

倉品翔(GOOD BYE APRIL)

――歌い方についてはいかがですか。

倉品:この曲は客観性がほしかったので、聴いた時に、あまり僕の顔が見えてほしくなかったんです。僕らの曲にはそういう曲が多いと思うんですけど、歌っている僕の生き様を主張するというより、音楽のなかにある世界を描きたい。自分の生き様を出すスタイルにもよさがあると思いますが、自分にはそういうスタイルができないとわかっていて。音楽にロマンを感じるし、そこにある世界に、自分も全力で加担したいんです。

 音楽のなかの景色や情景、感情を描くための、ひとつのツール、パーツとして自分が機能したいという気持ちがあります。この曲では、より自分の主観が投影されない歌い方にしたかった。ビブラートをかけないとか、変に歌い上げないように、プレーンに歌うことをいちばん意識していたかもしれないですね。

――うんうん。

倉品:でも、ちょっとでもバランスが崩れると、ただ地味なだけの曲になる可能性もあって。歌にかかるリバーブの量や質感でも、描ける景色は全然変わっていたと思いますし、歌い方ひとつとってもそうです。この曲が持っているピュアネスを保つバランスは難しかったので、うまく完成できてよかったなと思います。

――そして、先行配信もされていたPANAMの55周年企画「PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS」では、南佳孝さんと鈴木茂さんの「LADY PINK PANTHER」をカバーされました。なるほどな選曲ですよねえ。もともと、この曲にはどんな思い入れがあったのでしょうか。

倉品:鈴木茂さんのアルバム『LAGOON』(1976年)がすごく好きで、なかでも「LADY PINK PANTHER」と「8分音符の詩」の2曲は、とりわけ好きだったんです。アルバム『BAND WAGON』(1975年)ももちろん好きなんですけど、聴いている量で言うと『LAGOON』のほうが多くて、思い入れのある作品でした。

 今回のプロデューサーの佐橋佳幸さんとやり取りするなかで、原曲は茂さんがオクターブでハモっているので、それを佳孝さんと僕が上下で歌っていくのがいいんじゃないか、という話をした記憶があります。「めっちゃ面白そう!」と思いました。

――佐橋さんとは、まずいろいろ話しながら進めていったんですね。

倉品:去年の夏に出した「リ・メイク」が佐橋さんプロデュースで、そのレコーディングが先だったんです。去年の3月ぐらいに録っていて。EPOさんのライブなどでもご一緒する機会が近年増えて、佐橋さんとのコミュニケーションがどんどん密になっていくなかで、今回のPANAMの企画のお話もいただきました。

 「LADY PINK PANTHER」のレコーディングは、クラウンの会議室で佳孝さんに初めてご挨拶したところからでした。大ファンなのでお会いできて嬉しかったです。佐橋さんがギターを持ってきて、原曲のキーでいけるかどうかポロポロ弾きながら、その場で佳孝さんとふたりで歌ってみたんですよ。それで、「いけそうだね」というところから始まりました。「リ・メイク」の時は、佐橋さんとは一緒にスタジオに入ってアレンジの細かいところを詰めたり、デモのデータを何往復もやり取りしたりしました。「LADY PINK PANTHER」でも、佐橋さんが譜面やデモをすごく緻密に作ってくださったので、それを僕らなりに解釈してレコーディングした感じですね。

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