ずっと真夜中でいいのに。“古都の記憶”との美しい交差 平城宮跡での歴史的公演『文禍伝雷』をFM802 DJ 樋口大喜が振り返る

ずとまよ、奈良 平城宮跡ライブレポ

 ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)が、奈良県・平城宮跡歴史公園にて特別公演祭『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』を開催した。公演2日目の10月11日、会場内「祭Area」のMCと開演前の影ナレーションを担当したFM802 DJ・樋口大喜氏が、当日の模様をライブレポートで振り返る。(編集部)

ずとまよの音楽&奈良の歴史を体験できる“街”のようなライブ会場に

 東西1.3km、南北1km、面積120ヘクタール。東京ドーム27個分だと言われても、正直ピンと来ない。『文禍伝雷』の開催を記念して奈良県コンベンションセンターで行われていた「ZUTOMAYO MART 奈良出張所」に足を運んだ際に、会場を下見がてら見に行ったのだが、平城宮跡歴史公園、デカすぎる……! この場所での大規模な音楽ライブは今回が初めての試みである。ずとまよは、これまでも私たちが驚くような挑戦を重ねて、感じたことのない刺激的なエンターテインメントを行ってきた。それは決して奇抜さだけではない。ボーカルのACAねは、そこにある歴史を学び、当時の人々にリスペクトを捧げ、言葉を紡いできた。

 今回は奈良・平城京。その昔、都があったこの場所で、彼女はどんな言葉を発信するのだろうか。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 迎えた当日。ライブだけではなく「祭Area」という奈良の店舗や企業とコラボした飲食ブースやワークショップなどが集まるエリアもあり、数日前に見た広大な場所が、一つの街であるかのように様変わりしていた。サイドステージのMCを担当させていただいたのだが、みんなグッズを身につけてライブ前から気持ちを高めているのがわかる。その光景にはどこか懐かしさもあり、文化祭のようだった。 ワークショップでは、奈良文化財研究所による木簡作りや土壌学者・藤井一至氏による「コズミックどろ団子/ 土クレヨン」づくり、「オリジナルはりこうにぐりづくり」(はりこを自由に塗って、ずとまよの公式キャラクター・うにぐりくんをオリジナルアレンジで作れるコーナー)などがあり、様々な体験を通して奈良について知ることができる。

 またサイドステージでは、奈良県の公式マスコットキャラクター・せんとくんと、うにぐりくんがコラボ。写真撮影タイムでは子供たちも大盛り上がりだった。さらに、ずとまよのライブでは欠かせない音である“オープンリールアンサンブル”による磁気民族楽器・オープンリールを、レクチャーを受けながら鳴らすことができるステージ企画も。こうした“体験”によって、奈良やずとまよを改めて体で感じ、開演前からすでによき思い出として積み重なっていく。

 午後5時半。遠くの空が茜色に染まり、会場にも緊張感が漂う。ここで開演を待つ約3万人に向けて直前のアナウンスを担当させていただいた(心臓バクバク……)。『大阪・関西万博』を振り返り、ACAねの想いを考えながら喋らせてもらったのだが、舞台袖からはオーディエンスが全く見えない。心配になりながらも言い終わると、“カツカツカツカツ……!”と、しゃもじ(ずとまよライブ名物であるグッズ、ペンライト型しゃもじ=FIGHT THE SHAMOJI)が高く鳴り、雄叫びも聞こえる。痺れた瞬間だった!

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

「誰かの過去の上に立っている」――“記憶”に刻まれたずとまよの名演

 そして、荘厳な雅楽の音が鳴り響き、ステージ後方に位置している大きな赤い門・大極門が開くと、バンドメンバーを引き連れて、ACAねがステージに向かって歩いてくる。和装で、面をつけた一行はまるで、百鬼夜行のようだ。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 混沌でありながら、生活や日常を感じさせる。それこそが、ずとまよの魅力だと思う。ライブは〈だけど これが生活なの〉と歌う「地球存在しない説」から始まり、「胸の煙」「ハゼ馳せる果てるまで」と弾むようにリズミカルかつメロディアスに展開していく。そして「秒針を噛む」ではイントロのビートに乗せて、“しゃもじ拍子”。ACAねのコール&レスポンスに合わせて、しゃもじが小気味よくリズムを刻む。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 続く「TAIDADA」では燃えるような赤い照明と対照色である緑の照明が波打ち、「海馬成長痛」ではホーンが高く鳴り響き、興奮状態を加速させてゆく。会場中央にスポットライトが当たり、そこには三味線と楽琵琶!? 迫力ある和の音色が古都を呼び覚ます。

 ACAねもセグウェイに乗りステージ移動。「機械油」では“コンチキチン”の祭囃子、これは……盆踊りだ! 現代的なサウンドと民族音楽が融合した大胆なライブアレンジに、カオスながらもずとまよらしさを感じる。楽琵琶アレンジで奏でられる「正しくなれない」は、ACAねの繊細な声が剥き出しに。空に放たれるレーザー光の演出も相まって、どこか祈りのようにも聴こえた。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 「サターン」が終わり、メインステージに戻ってからの……“BOW”! 「MIRABO」である。お馴染みの扇風機型電子楽器・扇風琴が轟く。そこから「猫リセット」に繋がり「しゃもじ、用意!」の号令とともに、徐々にテンポもアップしていく中、まさかのせんとくんが登場! せんとくんのテーマソング「せんとくんなら知っている」が「猫リセット」の曲中に挟み込まれる魔改造アレンジだ。さすがに「ヤバ過ぎ」と吐息のように感嘆が漏れ出た。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 「ミラーチューン」で回り出したミラーボールを見て、もう夜の暗さの中にいることを実感する。体感時間が早い。「夏枯れ」とその後のACAねによるナレーション「お米が美味しい、おにぎり最高」の言葉に秋を感じ、季節が進んでいくのを噛み締めていた。「綺羅キラー」「メディアノーチェ」に続いて「あいつら全員同窓会」を投下し、会場のボルテージも爆上がり。皆が高くジャンプして“最高”を更新していく。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 ACAねは言う、「言葉が嫌になる時がある」と。そして「奈良時代から言葉を使っているのに、人は今も上手に言葉を使えない」けれど、「言葉だけではなく、同じ経験をしていることが尊い」のだとも語った。

 かつて、この場所には都があった。そこで人々は言葉を交わし、和歌が詠まれていたはずだ。1300年の時を超えて、今この場所で、想いを受け継いだ歌が奏でられている。「誰かの過去の上に立っている」というACAねの言葉にハッとした。今立っている土に、我々の体に、見上げた奈良の夜空に、この体験は永遠に刻まれる。記録には残らない、名前もついていないが、確かにそこにあった“自然の記憶”として次の世代へと受け継がれていくのだ。およそ65,000人(2日間)とこの“体験”を共有できたことに、言葉にならない嬉しさが込み上げてくる。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 MCから披露されたのは「lowmotion algae」。この曲、前半は歌詞の意味を汲み取るのが難しいけれど、もはや我々には言語は必要ないと思えた。歴史的な体験を共有したのだから。そう考えると、この曲の言葉たちもなんだか合言葉のように響いた。しゃもじを高く掲げて前後に揺れる。しゃもじにつけるライト SHAMOJI'S RING LIGHTがオレンジに発色していることもあって、その光景が稲穂の海みたいで美しい。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

 ラストは、この公演直前に配信された新曲「あかねさす頃」。〈「こちらは夏、」揺るがないでいるよ〉と歌い出して、昼間の暑さを思い出し、夏から秋へと繋がっていく季節の狭間にいることを再び噛み締める。

 もうすぐ実りの秋が来る。お米が美味しい季節だ。またご飯をよそって、日々を生きていく。ずとまよの音楽とともに。

ずっと真夜中でいいのに。『LEGACY ZOMBIE LABO「文禍伝雷」』(写真=鳥居洋介)

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