Hilcrhyme流ポップスの新たな形 20周年に輝きを増していく“現役感”、TOCが『2026』に刻んだ意味

Hilcrhyme『2026』レビュー

 2006年、新潟で産声を上げたHilcrhymeが今年で結成20周年を迎えた。その大きな節目を祝うべく、7月18日には東京・SGC HALL ARIAKEで20周年記念公演『朱ノ鷺 2026』を開催。開演早々、MCのTOCは「長い旅路だった!」とこれまでの歩みを総括した感慨の言葉をフロアに投げかけた。20年分の歴史をなぞるように様々な楽曲を並べていく構成は、「春夏秋冬」をはじめとする今もなお輝きを失わない大ヒットチューンを世に放ったメジャーデビュー当時の華やかな状況から、東日本大震災やコロナ禍といった逃れられない憂いを味わった時期、そして2人組だったHilcrhymeが片翼を失うことになった大きな出来事まで、シーンにおける確固たる地位を築きつつもその軌跡が決して順風満帆ではなかったことをまざまざと叩きつけていった。だが、それでもなお前を向き、未だ見ぬ丘の向こう側を目指して歩みを止めることのなかったTOCの気概が、ライブ後半に向けて色濃く提示されていった。近年では新たな若年層のファンが急増し、ワンマンライブは軒並みソールドアウト。女性はもちろん、男性のヒルクライマー(ファンの呼称)がライブで野太い歓声を上げるシーンも多い。今年リリースされた新曲「喜怒哀楽」「美しき日々」という2曲で幕を閉じた『朱ノ鷺 2026』は、そんな今のHilcrhymeの好状況を鮮烈に証明していた。

 10月7日、前作『Moments』から約11カ月というスパンで届けられたニューアルバム『2026』は、紛うことなき現役感を携えながら、20周年を経たHilcrhymeが新たなシーズンへの突入を高らかに宣言する1枚となっている。

Hilcrhyme「喜怒哀楽」Music Video
Hilcrhyme「美しき日々」Music Video

 前述の先行配信曲「喜怒哀楽」「美しき日々」で結成20周年への熱い思いを馳せた後は、アグレッシブかつバラエティに富んだ楽曲が続々と繰り出されていく。前作収録の「右肩上がり」の延長線上に位置するとも言えるナンバー「ストップ高」では、“買い手”が急増している現在のHilcrhymeの状況をTOCらしいリリックで紡ぎ出す。〈甘く見るなこの20年の歳月〉と自信を漲らせながら、〈さながら徳川の埋蔵金を/超えるTOC様のRhyme on Beats〉という痛快なパンチラインで幕を閉じる同曲は、今後のライブで大きな盛り上がりを生むこと必至だ。

 今の時代性、世相を色濃く反映したリリックが印象的なのは「地図」。「答えを提示するのではなく、様々な“?(クエスチョン)”を投げかけたい」と『朱ノ鷺 2026』でも発言していたが、この楽曲ではリスナーに向けて疑問を呈しつつ、〈地図 自ら描けばいい〉というキャリアを通して大切にしてきた揺るぎなきメッセージを放つ。東日本大震災を受け、2011年に書かれた「二〇一一日本ニテ記ス」を彷彿とさせる〈二〇二六日本ニテ記ソウ〉というラインを用いたのは、アルバムタイトル『2026』にも通ずる、今この瞬間のリアルを刻んでおきたいというTOCの強い思いの表れだろう。

Hilcrhyme アー写

 前作『Moments』では自身のルーツへの回帰とも言えるラップを全面に押し出した楽曲が主軸となっていたが、今作はラップとメロディを1曲の中で自在に使い分けた楽曲たちで構成されているのも大きなポイントと言えるだろう。ここ数年タッグを組んでいるトラックメイカー・WAPLANによるトラックも、音数を控えたシンプルな音像だった前作から一転、海外のトレンドを盛り込んだものからフロアを揺さぶる強靭なダンスチューンまで、カラフルなサウンドになっている。それは言わば、ヒップホップというルーツを独自に昇華したHilcrhyme流ポップスの形。多くのリスナーの心を掴んだHilcrhymeとしての武器にさらなる磨きをかけ、21年目からの歩みに勢いをつける狙いもあったはずだ。

 「地図」同様に今の時代性を切り取った「BEPPINSAN」では、自然と身体が動き出すダンサブルなトラックの上で、タイトルにも掲げられたキャッチーなワードを盛り込んだシニカルなメッセージを飛ばす。南アフリカ発のダンスミュージック“アマピアノ”のテイストを感じさせる「Missa」では、自らのライブを宗教的な“ミサ”になぞらえ、聴き手の身体を強く突き動かす。続く「UNITED H’s」では、ヒルクライマーに向けた思いをストレートに綴り、〈繋いだ手 決して離すな〉〈俺とお前で起こそう 革命を〉と、より強固な団結を促す。このあたりもまたライブでの熱い光景が鮮明に浮かんでくる高揚感に溢れた流れだ。

Hilcrhyme「BEPPINSAN」Music Video

 8曲目に収録された唯一のインストナンバー「二〇二六(Interlude)」では、混沌とした今の時代をサウンドでも表現。しかし、そこで憂いを抱くのではなく、未来への希望に手を伸ばすようにかすかな光を感じさせるサウンドスケープで曲が終わっていくのが実にHilcrhymeらしいところ。そこで垣間見えた光を増幅させるように、アルバムは感動的なラブソング「RIDE ON TIME」でエンディングを迎える。まるでTOCからの私信のような愛に溢れた言葉たちは、聴き手の心に柔らかく染み渡り、やがてそれは1曲目「喜怒哀楽」へと繋がっていくだろう。日々を繰り返しながら進んでいく人生のように、何度もループしながら聴き込むことでTOCからの、Hilcrhymeとしての今の思いがどんどんと鮮やかになっていく。最新作『2026』は、そんなアルバムだ。

 本作を携え、10月11日から全国7都市を巡る全国Zeppツアー『ヒルクライム ZEPP TOUR「2026」』がスタートした。止まることなく進化を遂げながら、ここからも続いていくHilcrhymeの未来の中で振り返ったとき、TOCがあえて刻んだ“2026”という数字は、きっとあらゆる点において重要な意味を持つものになっているはずだ。

◾️リリース情報
Hilcrhyme『2026』
2026年10月7日(水)発売
通常限定盤(CD):¥3,300 (税込)
初回盤(CD+DVD):¥5,500 (税込)

<収録曲>
1.喜怒哀楽
2.美しき日々
3.ストップ高
4.地図
5.BEPPINSAN
6.Missa
7.UNITED H’s
8.二〇二六 (Interlude)
9.RIDE ON TIME

<初回限定盤DVD収録内容>
『Hilcrhyme結成20周年記念公演「朱ノ鷺 2026」 Live at SGC HALL ARIAKE 07.18.2026』
・オープニング映像〜朱ノ鷺
・【MC】二〇二六日本ニテ語ル
・二〇一一日本ニテ記ス
・大注目
・Moments
・喜怒哀楽
喜怒哀楽 (Music Video)
美しき日々 (Music Video)

◾️ツアー情報
『ヒルクライム ZEPP TOUR「2026」』
10月31日(土)愛知・Zepp Nagoya
11月3日(火・祝)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
12月5日(土)北海道・Zepp Sapporo
12月13日(日)新潟・新潟テルサ
12月19日(土)神奈川・KT Zepp Yokohama
※終了公演は割愛

Hilcrhyme オフィシャルサイト

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