supercellが再び動き出す――「メルト」から「夜と青」へ、ネット発クリエイター集団が刻んだ足跡と功績

 11月20日公開となる劇場アニメーション『魔法使いの夜』。今作の主題歌「夜と青」にて、コンポーザー・ryo率いるクリエイター集団・supercellの再始動が明らかとなった。ボーカル・やなぎなぎとの約15年ぶりのタッグや、2012年発売の『魔法使いの夜』PCゲーム版に続く主題歌起用も注目ポイントのひとつ。supercellを語る上では欠かせない歌声と作品の再会によって実現したこの再始動は、各コンテンツのファンにとっても強烈なドラマ性を感じさせる一報だったのではないだろうか。

ネット発のクリエイター集団が広げた領域

 今やひとつの音楽ジャンルへと成長したVOCALOIDシーンの足跡をたどる上でも、supercellを語らずして話を進めることはできないだろう。さらに言えば、VOCALOIDやニコニコ動画などのインターネット文化に留まらず、2010年代のアニメ/ゲームカルチャーに親しんだ人々も、一度はsupercellの音楽を耳にしたことがあるはず。そこで、平成から令和にわたってサブカルチャーシーンに大きな存在感を示し続けるsupercellについて、この再始動を機に改めて振り返ってみたいと思う。

 まず触れておきたいのは、supercellの“特異性”だ。今でこそYOASOBIやヨルシカのような、ボカロPをコンポーザーに据えたユニットの存在は珍しくない。しかし、彼らとsupercellの決定的な違いのひとつが、編成メンバーの属性の違いである。近年主流となるボカロPによるユニットはコンポーザーとシンガーで構成されるものが多いが、“クリエイター集団”と冠される通り、supercellはryoと複数人のクリエイター/デザイナーによって構成される。歌唱するボーカリストはあくまでゲスト形式であり、作品ごとに歌い手は異なる。これは楽曲「メルト」(2007年)をきっかけとするsupercell結成の経緯に加え、当時のVOCALOIDカルチャーが人間歌唱を今以上に二次創作として扱う認識が色濃かったことも理由のひとつだろう。

 そういった背景から、supercell誕生直後のryo作曲によるボカロ曲「恋は戦争」「ワールドイズマイン」「ブラック★ロックシューター」などは、「初音ミクをゲストボーカルに迎えたクリエイター集団・supercellの曲」という認識になる。一方、2010年以降に制作された「こっち向いて Baby」や「ODDS&ENDS」などは、「ryo(supercell) feat. 初音ミク」名義でリリースされており、supercellの作品とは区別されている。

【HATSUNE MIKU】 ODDS&ENDS / ryo(supercell) in マジカルミライ2013 【初音ミク】

 先述の通り、初音ミクをボーカルに据え、2009年にリリースしたメジャーデビュー作『supercell』は「オリコン週間アルバムランキング」で最高4位を記録し、VOCALOIDの認知度を拡大する1枚となったことも今やよく知られた話だ(オリコン調べ/※1)。

 その後、同年に初のメジャーシングルとしてリリースされたのが『君の知らない物語』だ。表題曲「君の知らない物語」は、nagiことやなぎなぎが歌唱を担当し、TVアニメ『化物語』(TOKYO MXほか)エンディングテーマとして起用されたsupercellの代表作である。この曲によってsupercellの名はVOCALOID/インターネットカルチャーの枠を飛び出し、アニメ、ゲームなどの隣接するカルチャーシーンでも広く知られる存在となっていく。現代に連綿と続くボカロP出身クリエイターのアニメ主題歌への進出、接続の潮流においても、supercellはその先駆けとして大きな存在感を放っているのだ。

supercell - 君の知らない物語

 その後2011年から~2013年にかけては、ゲストボーカル・こゑだとともに「My Dearest」「告白」「僕らのあしあと」「拍手喝采歌合」などで多数のアニメ主題歌を担当。2016年には新ボーカリストの募集を行い、そこで選出された女性ボーカリストのAnnと初の男性ボーカリストとなったgakuを迎え、2019年にはシングル『#Love feat. Ann, gaku』をリリースするも、それ以降supercellとしての表立った活動はすっかり途切れていた。

supercell - My Dearest

 だが、空白期間となるこの期間も、ryoはソロデビューしたこゑだやTia、桐嶋ノドカ、そしてEGOISTなど複数のアーティスト/プロジェクトのプロデュース業にも注力していたが、supercell名義での新作が長らく途絶える中、その後の動向や行方を気にしていたリスナーもおそらく多かったはずだ。

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