ななえ、看護師志望から“未経験”でサックスの道へ ライブ配信で掴んだ転機、TeddyLoidとの「Night Trip」

ななえ、看護師志望からサックスプレイヤーへ

 さまざまなアーティストのレコーディングやライブでサポートを務めるサックスプレイヤーで、シンガーとしても作品リリースを重ねているななえ。LIVEコミュニケーションアプリ・Pocochaでのライブ配信にも積極的に取り組み続けており、2021年からトップランクを継続している。

 この度、Pocochaとビクターエンタテインメントが共同開催したイベント『Pococha × Victor Entertainment -THE PRODUCER-』でNo.1に輝き、10月14日にリリースする新曲「Night Trip」は、Adoの「踊」「唱」などを手掛けるTeddyLoidが作詞・作曲・プロデュースを担当。ななえの歌声とサックスの調べが甘美なシティポップサウンドが、都会の夜のドライブをイメージさせる。

 今回リアルサウンドでは、同曲の制作エピソード、サックスプレイヤー/シンガー/Pocochaライバーとしての軌跡、独特な活動スタイルに至った経緯について語ってもらった。(田中大)

22歳、未経験からサックスプレイヤーへ

――サックスプレイヤーを目指すようになったきっかけは、どのようなことでした?

ななえ:もともと看護師を目指していたんですけど、受験に失敗してしまいまして。「25歳までに結果が出なかったら潔くやめる」というのを自分との約束にして、看護学校のために貯めていたお金を全部使ってテナーサックスを買い、音楽学校に入学しました。それがきっかけでしたね。

――サックスは、その前からやっていたんですか?

ななえ:実は、まったくやってなかったんです。「何だったらちゃんとお金を稼げるか?」と考えて、演奏人口が少ない楽器にしようと思って。テナーサックスは見た目もかっこいいし(笑)。

――そうですね(笑)。他の楽器の経験は?

ななえ:小4くらいまでピアノをやってました。

――譜面は読めて、音楽理論の基礎的なことはわかっていたんですね。

ななえ:どうですかね? 先生が弾いてるのをそっくり真似して弾くようなやり方をしていたので。耳は良かったのかもしれないです。楽譜はあんまり読めなくて、先生の真似をするのが上手だったんです。

――楽譜に沿ってやるのではなく、指の動きで覚えて弾くと怒られますよね?

ななえ:怒られました(笑)。

――聴くことも含めて、音楽はもともと好きだったんですか?

ななえ:はい。歌うのが好きでしたね。

――入学した学校は、メーザー・ハウスですよね?

ななえ:そうです。

――プロを目指す人が通う学校ですから、周りはかなりの腕前の生徒ばかりだったんじゃないですか?

ななえ:はい。みんな入学した時点で上手くて、私だけが素人同然でした。だから誰よりも練習して、先生たちに認めてもらって、コンテストでも賞をいただけるようになりました。

――サックスは、アルトから始める人が一番多いと思いますが。

ななえ:そこも、演奏人口が少ない方がいいなと思ったんです。あと、歌謡曲とかのムーディーなサックスをソロで演奏するムードテナーというジャンルが好きだったのも、テナーにした理由でした。アルトだとファンク、フュージョン系が多いですけど、テナーは歌謡曲や演歌もできると思って。私は身長が高めなのでテナーの方が持ったときにかっこいいし、音色もテナーの方が好きだったので、こっちにしました。

ななえ(撮影=三橋優美子)

――歌謡曲が入り口でサックスを始める人は、珍しいと思います。ジャズが好きだったり、吹奏楽から始める人が多いですから。

ななえ:親の影響もあったと思うんですけど、歌謡曲はもともと好きでした。あと、お金を貯めてる段階で、カラオケスナックとかでバイトをしていたんです。お客さんが歌う曲にはわりとテナーサックスが入っていて、最近の曲にはないその感じに惹かれてました。ロックンロール、ロカビリーとかのテナーのおじさんっぽいブリブリした音色も素敵だなと。女性でそういうのをやってる人はあまりいないから、「目立つかな?」というのも思ってました。

――ルーツも含めて、あまり聞かないタイプですよ。

ななえ:学校でも周りとあまり話が合わなかったです(笑)。

――ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズとかだったら話が合うんでしょうけど。

ななえ:周りはジャズ談義が多かったですね。私もジャズは一生懸命聴きましたけど、当時は心の底からはわかってなかったです。

――初心者として始めて、短期間で頭角を現していったわけですよね。血の滲むような努力だったことがうかがえます。

ななえ:特別なことをしたと言えば、めちゃくちゃ練習することに加えて、興味を持ったプレイヤーさんに直接会いに行ってたくさん質問したり、飲み会について行ったりして覚えてもらったことだと思います。それがきっかけで、「こういうのやってみる?」と声をかけてもらうようになったので。

――メーザーに入学したのは何歳のときですか?

ななえ:22歳です。ちょっと遅かったんですよ。

――リミットの25歳まで、3年しかないじゃないですか!

ななえ:はい。だから焦ってました。あのとき、一番頑張ってましたね。

――プロでやっていけそうな手応えを感じるまでには、時間はかかりましたか?

ななえ:わりと早い段階で感じられるようになりました。銀座のショークラブとかで楽器を吹き始めて、出番のない時間はずっと練習して……というのを繰り返しているうちに、音楽でお金を稼げるようになったので。

――いただいた資料によると、共演歴は早見優さん、松本伊代さん、浅香唯さん、香坂みゆきさん、森口博子さん、浅野孝已さん(ゴダイゴ)、飯野竜彦さん(FLYING KIDS)、徳井義実さん(チュートリアル) 、川崎鷹也さん、imaseさんなど。早見さんは、すごく応援してくださっていますよね。

ななえ:はい。3回ほどバックバンドで出させていただきました。母が早見さんのファンで、私が小さい頃に観に行った舞台のパンフレットを持っていったんです。それにサインをしていただいたことが印象に残っていたらしく、CDをリリースしたときの帯にメッセージを書いてくださいました。

昭和歌謡を武器に 歌とサックスをつないだ理由

――ネットでの活動も精力的ですね。YouTubeにさまざまな曲を吹いた動画をアップしていますが、昭和歌謡が多いのが目を引きます。「思い出の渚」(ザ・ワイルドワンズ)とか、すごい再生回数じゃないですか。

ななえ:はい。好きな曲をたくさん吹かせていただいています。本当に、そのあたりの時代の曲が好きですね。

テナーサックスで【想い出の渚】演奏しながらV-log投稿してみた

――YouTubeに「吹いてみた」動画をアップしているサックスプレイヤーは他にもたくさんいますが、昭和歌謡を中心に取り上げる人は、それほど多くないですよね。

ななえ:新しい曲を投稿してもあんまり伸びないというのもあるんですけど、客観的に考えて、「新しい曲は私じゃなくてもいいのかな」というのもあって。その一方で、歌謡曲は私が自信を持てるジャンルなんです。

――松原みきさんの「真夜中のドア〜stay with me」も吹いていましたが、シティポップも好きなんですか?

ななえ:シティポップは、3年くらい前から好きになりました。流行り始めた頃は「歌謡曲の方が好きだなあ」と思ってたんですけど。

Saxophone cover 真夜中のドア~stay with me~

――学生時代も周りの子たちとは違う音楽を聴いていたんですか?

ななえ:はい。カラオケに行っても私だけ昭和歌謡を歌ってました。「時の流れに身をまかせ」(テレサ・テン)とか。「最後の雨」(中西保志)も歌ってました。「最後の雨」は平成かな? あと、「オリビアを聴きながら」(杏里)も歌ってましたね。

――昭和歌謡のどんなところに惹かれるんでしょう?

ななえ:やはりメロディラインがキャッチーですし、Aメロからインパクトがあるんですよね。Aメロもサビみたいなので。あと、当時の曲は生バンドの演奏が多くて、ピンク・レディーの曲とか、オケだけ聴いてもすごくかっこいいです。歌詞に物語性があるのも面白いですね。昭和歌謡は「これ、すごい歌詞だね!」っていうのがあったり……。

――阿久悠さんのピンク・レディーの歌詞とか、いい意味でぶっ飛んでいて、かなり大胆ですよね。

ななえ:そうですよね(笑)。今だったらないような歌詞だと思います。

――あの頃は、大人の世界が垣間見える色っぽい歌詞もたくさんありました。

ななえ:デュエットソングも面白くて好きです。

――あと、「3年目の浮気」(ヒロシ&キーボー)を吹いていましたよね?

ななえ:はい。スナックでバイトしてたときに『デュエットソング100選』というCDを借りてきて、全部覚えたんですよ。

テナーサックスで【3年目の浮気】吹いてみた!

――「銀座の恋の物語」(石原裕次郎・牧村旬子)とか?

ななえ:はい。歌えるとお客さんが喜ぶので、歌っているうちにデュエットソングの世界観に引き込まれてました。

――好きで聴いてきた音楽が、自ずとプレイヤーとしての強みになっていったんですね。

ななえ:そうなんだと思います。“この人=これ”というのが欲しかったんですよ。ジャズの勉強ももちろんずっとやってきたんですけど、もっと上手い人がたくさんいる。だから、ライブやレコーディングで昭和歌謡な感じのサックスが欲しいときに、すぐに私が思い浮かべてもらえるようにしてきました。

――サックスプレイヤーであると同時にシンガーなのも、独自のスタイルですよね。

ななえ:もともと歌うのが好きでしたし、テナーサックスが“人間の肉声に一番近い楽器”と言われていたのも選んだ理由だったんですけど、サックスでは詞を歌うことができないじゃないですか? 一番伝わるのは詞を歌うことだと思って、「どっちもできたらいいな」と思ったのが、歌も始めた理由です。もともとはボーカルを探していたんですけど、なかなか見つからなくて。だったら自分で歌ってしまおうと。

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