山下達郎のライブ美学とは? 「上手ければクリックがいらない」「予定調和をどう崩すか」ソロデビュー50年で磨かれた技術
音楽番組『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)が、今年ソロデビュー50周年を迎えた山下達郎を4年ぶりに特集。その第一弾が10月11日に放送された。スタジオには、音楽プロデューサー 本間昭光、Omoinotakeの藤井怜央、緑黄色社会の穴見真吾、Penthouseの大島真帆といった、山下をリスペクトする4人が集結。山下が今月リリースした37年ぶりのライブアルバム『JOY2』を切り口に、様々な質問をぶつけた。
『JOY2』は2008年から2025年までの18年間に行った13本の全国ツアー、600を超える公演から、山下自身が厳選したベストテイク全38曲が収録されている。前作『JOY』やシュガー・ベイブのレパートリーと被らないように選曲され、曲順は一つのライブをイメージしたという。
藤井からは「ライブアルバムにおける良いテイクとは?」という核心を突いた質問が飛び出す。これに山下は、圧倒的に優先するのは「ボーカルの出来」であると返した。通常のアルバムとライブアルバムの違いについての質問には、「レコーディングから年月が経つと解釈が変わる。ライブは一期一会であり、お客の反応、感応が重要。交歓してる瞬間、演者が見えなくなって、音しか聴こえなくなる瞬間、世界だけが見えるような瞬間がある。そこまで行けば理想」とコメント。それに対し穴見は「いつも完璧に見える達郎さんでも、ゾーンに入って行くようなことを求めていることにロマンを感じる」と、ライブアーティストとしてまだまだ上を目指す山下の姿勢に感銘を受けた様子だった。
同作を聴いた藤井は「前作から40年経っているのに歌声の輝きがさらに増している。身が引き締まる思いだ」とコメント。また「高気圧ガール」のライブアレンジについても、「曲の中盤、ユーモアがあって大好き」と話した。大島は「SPARKLE」のギターカッティングを引き合いに「異次元のリズム感のすごさ」、さらに「CIRCUS TOWN」で聴かせる山下のボーカルと伊藤広規のベースだけで生み出されるグルーヴに、「信じられないかみ合わせ方なのに完璧なグルーヴ。口があんぐり!」と感嘆の声。そしてThe J.B.'sのオマージュを取り入れた「BOMBER」のギターソロについて穴見は、「カッティングだけでこれだけ長いギターソロを保つのはすごい」と、ライブならではのアレンジのカッコ良さを賞賛。
そうしたライブアレンジに関する大島からの質問に、海外のバンドForeignerやAC/DCを引き合いに出しながら、「タイアップ曲などライブの再現性を犠牲にする場合もあるが、僕らの世代は、なるべく最初からライブで再現可能なアレンジを考えるように癖づいている」とコメント。しかしあえて期待を裏切ることもあるそうで、「フェードアウトの先を聴かせるのがライブ。予定調和をどう崩すか。お客の期待を50%叶え、50%裏切るのが最高のエンターテインメント」と回答。その哲学と説得力に、出演者全員がうなずいた。
最後に本間は、シーケンスを使わない“人力”のみライブパフォーマンスであることに触れ、「後輩へのメッセージ感じた」と話した。これに山下は同意しながらも「人力と言うか楽器編成の徹底」と回答。山下のテレキャスターをはじめ、ピアノやベースなど、80年代以降のライブはレコーディングと同じ楽器を使っているとのこと。また山下がステージでクリックを使わないことについて、「そのほうがグルーヴが出る。上手ければクリックがいらない」とコメント。
これまで楽曲の普遍性や、こだわり抜かれたレコーディング技術にスポットが当てられることの多かった山下達郎だが、緻密に構築されながらも生み出される生々しいグルーヴもまた、ライブアーティストなら誰もが出したいと望む憧れだ。今回の放送で若手アーティストからは、山下の「ライブにおける歌唱や演奏技術の高さ」に対するコメントが多く挙がり、それによって山下のライブアーティストとしての本質に近づく内容となった。コロナ禍を経てライブという体験を求める音楽ファンが増加するなかで、フェス出演やワンマンツアーなど数多くのライブを積んできた藤井、穴見、大島。彼らがもう一段ステップアップするため、ここから何をつかんだのか。今後の彼らのライブに期待が高まる。

























