the奥歯's、“足りなかったピース”への挑戦 培った武器で新境地を開拓した『PSYCHO PSYCHO LOVE』完成に至るまで

the奥歯's、足りなかったピースへの挑戦

「中2の時の自分に胸を張れる曲じゃないと嫌」(シュント)

ーーそんな中、「涙ぽろぽろ」は他を寄せ付けないボーカル力が一線を画している楽曲でした。あの声をどうやって出しているのか気になりましたし、しゃがれ声だけでなく、落ち着いた優しい声色も出せるという二面性が秀でているなと。

シュント:大きい声を出したらああなるんですけど、これはめちゃくちゃ振り切りましたね。

ハルマ:レコーディングでピッチ修正してと伝えたんですけど、「できねぇ」って言われました。この曲は初期衝動的な勢いもあるので、ライブでやってみたい反面、果たしてできるのかという気持ちもあります。

シュント:早くやってみたいですけどね。

ハルマ:でも、これは勢いだけじゃ弾けないよ。

ジン:頑張らないとね。

the奥歯's 撮り下ろし

ーー歌詞も、聴く人を励ます言葉が多いから、ライブでやってくれたらよりグッときそうですけどね。

シュント:歌詞については、誰かを応援したり励ましたりしたいという気持ちはあまりないんです。自分の中にずっとあるのは、中2の時の自分に胸を張れる曲じゃないと嫌だなという気持ちですね。ロックバンドを好きになったのがそれぐらいの年齢だったし、そこから高校に上がるということもあって、将来のことを考えなきゃいけない時期でもあるじゃないですか? 自分は勉強を全くしてこなかったし、これからの人生はダメな方に行くんやろうなみたいな、未来を諦めている自分が出てきたりもしたんです。さらにそこから思春期になって、感情が結構ぐちゃぐちゃで。そういった頃の気持ちを思い出しながら作った曲も多くて。いまだにあの中学の時の自分が心の真ん中にいるし、この気持ちを忘れたくないなって思いますね。

ーーその頃の自分に誇れる今の自分でいたいと。

シュント:今でも「あの時の自分が好きになるだろうな」っていう曲を作ろうとしちゃうんですね。

ハルマ:中3の頃は勉強しないから親からめちゃくちゃ怒られてたしね。

シュント:THE BLUE HEARTSの〈先生たちは僕を 不安にするけど/それほど大切な言葉はなかった〉(「少年の詩」)という言葉を信じてました。

ハルマ:勉強机に座りながらTHE BLUE HEARTSのライブ映像観て、親が来る気配がしたらしまってたもんな。

ーーははは。いい話ですね。でも、そういった衝動はビート感からも感じます。ツービートだけど、歌を邪魔していない塩梅が素晴らしいなと思いました。

ジン:歌に沿うというか、歌を目立たせるためのアプローチをちょっと心がけてみました。今作は、スネアの音を曲ごとに変えてみたり、叩き方をちょっと変えてみたりしているんです。

ハルマ:1サビの「タンタンタンタン、バーン!」のところが好きなんだよね。ちゃんと叩けば圧が出ると思うんですけど、あえてスネアが一番鳴らないところで叩いているんだよね。

ジン:そうそう、中心から外れたところで叩いてる。自分がやりたいことはこれまでの作品でやってきたので、今度はもっと寄り添うドラムを叩けるようになりたいなと思って日々練習中です。

ーー「指先」もスピード感のあるショートチューンですよね。

ハルマ:はい、今までと違うコード進行の使い方でやってますね。

the奥歯's 撮り下ろし

ーー続く「コモンナンセンス」ですが、私はこの曲が一番好きです。シンガロングパートもあって、ライブを意識しているのかなとも感じました。

ハルマ:近いバンドの先輩も、この曲かっこいいよねって言ってくれます。「めっちゃチャリ乗るやん!」って歌詞見て思いますけどね(笑)。この曲のサビ自体は初期からあったんですよ。それをもう1回アレンジしようということで改めてシュントに書いてもらいました。

ーー〈ここから先は愚痴だけど〉からで明瞭度が上がるところなど、歌詞に投影したメロディの作り方もいいなと思いました。あとやっぱりツインボーカルがいいですね。二人の声が寄り添い合っている感じがします。

ハルマ:ツインボーカルなので、お客さんがシュントだけを見るターンと、俺だけを見るターンがあるんです。それを曲中でもやれたら面白いし、俺らだったら他の3ピースバンドよりもそれができるなと思って、コーラスや展開を含めて作っていきました。俺が歌った後にシュントがきて、最後は3人重ねて……という構成は、「死ぬほど君に恋をして」と「コモンナンセンス」でやりたくて、喧嘩しながら作りました。

ーー「コモンナンセンス」から、切なさが薫る「花冷えて」に向けての流れも綺麗ですよね。これも歌詞は後乗せなんですか?

シュント:前はメロと歌詞が同時進行だったんですけど、最近は完全にメロが先で歌詞は後から考えるようになりました。でもこっちの方が大変ですね。後から語呂をはめていくのって「俺、俳句やってんのかな?」って思います(笑)。文字数を増やすんだったら譜割りを早口にしなきゃなとか考えながら書かないといけないのが大変なので、きっと自分に合ってるのは同時進行なんだろうなとは思いますね。

「初期衝動と新しい自分たちのどちらも感じられる作品になった」(ジン)

ーー最後の「真夜中のドレス」のお話を聞く前ではありますが、皆さんが好きな曲はどれなんでしょう?

ハルマ:「コモンナンセンス」は自分で歌っていて楽しいですね。この曲のAメロがいいですよね。歌詞も共感性が高い内容だと思うし、そこから「花冷えて」に繋がって「冷めてんじゃねえよ!」って言われて、最後に「真夜中のドレス」で締める流れは、なんだかドラマみたいですよね。この流れは聴き応えがあると思います。

ジン:思い入れがあるのは「死ぬほど君に恋をして」ですね。みんなが新しいことをやっていますし。曲として一番好きなのは「ギョウ」です。これは最初の頃の曲の作り方に似ていて。「曲作ろうぜ!」と言いつつ、シュントが突っ走っていくあの感じや、俺がやることを全部肯定してくれる感じがグッときますね。なので、初期衝動と新しい自分たちのどちらも感じられる作品になったなと改めて思います。変わっていくことがある中でも、変わらないものもある。それを感じられたのがすごく嬉しかったですね。

シュント:俺は「花冷えて」の展開が多い感じが好きですね。聴いていて飽きない。サビの歌詞でも自分らしさを出せたなと思います。人間的というか、わかりやすいけどはっきりしないなという自分の優柔不断な部分を歌詞にできたことが嬉しかったです。

the奥歯's 撮り下ろし

ーーそんな様々な手応えを感じさせる今作を締めるのが、「真夜中のドレス」ですね。

ハルマ:これはシュントが打ち込みで持ってきた曲です。大体アルバムの最後には、自信がある短い曲を入れているんです。

シュント:最後に、「今までのは何だったんだ!」と思わせるような、全部を壊す曲を入れるのが好きなんです。でも、今回は結構まとまっちゃいましたね。

ーーでもその分、最後までとても聴き応えのある作品になったなと感じました。これからツアーも始まりますし、今作を作ってまたやりたいことなども増えたんでしょうか?

シュント:アートワークもそうなんですけど、今は落書きするのにハマっていて、好きなことをやれている実感はありますね。

ハルマ:あ、ツアーに向けてじゃないんだ。バックドロップを描きたいって言うのかと思った。

シュント:単純に、絵に対する自信がつきました。

the奥歯's 撮り下ろし

ジン:どのツアーも緊張はするんですけど、今回は初めてのレベルで緊張していますね。でも、新しいことができるとこんなにワクワクするんだなという高揚感が生まれているのが嬉しいです。新しいことができることが当たり前だと思っていたわけではないんですけど、改めて考えるとめちゃくちゃ嬉しいことだなと今作を経て感じましたし、ライブでも「曲たちがどんな風になっていくんだろう?」「お客さんはどんな顔するんだろう?」と今から楽しみです。

ハルマ:たぶん、みんなが好きな曲が多いと思うし、歌もメロディもめっちゃいい曲ばっかりだと思います。僕らはパンクバンドを掲げているので、普段のライブはぐちゃぐちゃになってやることが多いんですけど、ありがたいことに最近はダイブ・モッシュ禁止のフェスにも出させてもらえるようになってきたんです。なので、ツアーで曲を育てつつ、俺らは歌で戦えるんだということをしっかり示していけたらいいなと思います。あとは、実際にワンマンライブをやった上で足りなかった部分を今作で補えたと思うので、今作を出した後にやるワンマンも楽しみですね。今までの曲はすげえ速い曲かすげえいいバラードかという両極端なセットリストだったんですけど、今回はその真ん中を集められたアルバムになったと思うので、いい意味でアップダウンを生むことができるんじゃないかとワクワクしています。

the奥歯's ジャケ写
『PSYCHO PSYCHO LOVE』

◾️リリース情報
the奥歯's
2nd mini album『PSYCHO PSYCHO LOVE』
2026年9月30日(水)リリース
WWWW-014/¥1,980(税込)
<収録曲>
1. Iと太陽
2. 死ぬほど君に恋をして
3. 涙ぽろぽろ
4. ギョウ
5. 指先
6. コモンナンセンス
7. 花冷えて
8. 真夜中のドレス

the奥歯's 公式HP

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