「怖いものから逃げてきたのなら、今度は向き合わなければいけない」 Zilqy、覚悟の1stアルバム『Birth of Riot』を語る

めちゃくちゃかっこいい。まず、そのひとことを叫びたくなる。地面を揺らす重低音、鋭く明滅するエレクトロニクス、そしてヘヴィネスの真ん中を突き抜けて耳に残るエモーショナルなメロディー。Zilqyが掲げる“ポストメロディックニューメタル”は、世界基準のモダンメタルと日本人ならではの情緒を大胆に衝突させた、現在進行形のサウンドだ。
Anna(Vo)、Toki(Gt)、Miho(Ba)、Kano(Dr)からなるZilqyは、2025年9月の始動から約1年で『SUMMER SONIC 2026』の「PACIFIC STAGE」へ到達。そして2026年10月7日、1stフルアルバム『Birth of Riot』を世に放った。ここで言う“Riot”は、誰かに煽られて起こす暴動ではない。見て見ぬふりをしてきた恐怖、孤独、怒りに気づき、自らの意思で一歩を踏み出すこと。その小さな決意が共鳴し、大きなうねりへ育っていく“始まり”だ。
全曲の作詞を手がけたのは、バイリンガルシンガーのAnna。歌詞を紐解くと、世界への警鐘と、一度は音楽から離れた彼女自身の物語が同時に鳴っていることに気づかされる。『SUMMER SONIC』出演という長年の夢から、「RUN」「Misfit Toys」、「Other Side of the Moon」に刻んだ極めてパーソナルな思い、そしてツアーで完成するという『Birth of Riot』の未来まで。熱く、率直に語ってもらった。(ふくりゅう)
私にとってポップさは、たぶん“共感性”なんです

――まずは『SUMMER SONIC』の「PACIFIC STAGE」出演、最高でした。大きな舞台に立った率直な感想から聞かせてください。
Anna:実は10年くらい前、音楽メディアのスペースシャワーTVで海外アーティストのインタビューをする仕事をしていて、『サマソニ』をはじめとする夏フェスのプレスエリアに3年くらい通わせてもらっていたんです。その頃から、ずっと「いつか『サマソニ』に出たい」と思っていました。その夢がやっと叶って。ライブが終わったあと、同じプレスエリアで今度はインタビューを受ける側になったときは、しみじみときましたね。すごく感慨深い瞬間でした。長年の夢が叶った感じでした。
――本番直前、メンバーとはどんな言葉を交わしました?
Anna:「とりあえず、ぶちかまそう」と(笑)。でも、私は緊張しすぎて頭が真っ白で、あまり記憶がないんです。とにかくアッパーになっていました。20分という短いステージで、できるだけインパクトと爪痕を残したくて、いろいろな仕掛けを考えていたんですよ。ボーカルはそういう仕掛けを見せやすい立場なので、MCの第一声をどうするかもすごく大切にして、頭のなかで何度も反復練習していました。
――ライブハウスやワンマンとは、エネルギーの届き方も違いましたか?
Anna:Zilqyが立ってきた会場のなかでいちばん大きくて、人数も多く、すごいパワーがありました。ライブハウスでは、近い距離でのキャッチボールが熱さになっていくと思うんです。でも幕張メッセでは最前列との距離がある分、自分のエネルギーを思い切り放てたし、会場のいちばん後ろまでお客さんが観に来てくださっていた。そこでのコールアンドレスポンス、あのキャッチボールは本当に気持ちよかったです。大きい会場になるとこんなにも違うんだ、というのは想像以上でした。
――始動から一年。Annaさん自身が最も変わったと感じる部分はどこですか?
Anna:それまでは音楽を摂取する側だったのが、発信する側に変わった。その意識の変化は大きいです。Zilqyで初めて作詞に挑戦して、今のところ全曲を担当させてもらっています。普段から言葉を集めるようになって、無意識のうちにアンテナを張るようになりました。
もともとずっと好きだったのはUKロックなんです。アンニュイだったり、少し“ルーザー”的だったりする部分に惹かれていて。勝者として突き進む音楽も素敵ですけど、自分には共感しづらい部分があったんですね。『Birth of Riot』には、自分が弱い人間だと自覚した上で、それでも強くなりたいという思いが前面に出ているのかもしれません。
――では、Annaさんにとって“Riot”とは?
Anna:“Riot”を直訳すると「暴動」になりますが、私たちがこのタイトルを付けた時、「乱暴になれ」という意味ではありませんでした。社会を生きるうえで、どうしても蓋をしなければならない感情や思考ってあると思うんです。特に同調圧力の強い日本では、「これは言ってはいけない」「表に出してはいけない」と、自分の思いを封印しがちです。私自身もそうでした。だから、それを解き放つという意味で“Riot”ととらえています。

――アルバム『Birth of Riot』を聴くと、強烈なヘヴィネスの一方で、メロディは驚くほどキャッチーです。
Anna:メタルバンドとしてヘヴィさは大切にしたい。でも、聴いていてキャッチーなメロディも残したい。言い方は少し安直かもしれないけど、“ヘヴィ50%、ポップ50%”は意識しました。
――なるほど。
Anna:私にとってポップさは、たぶん“共感性”なんです。どれだけその曲を自分事にできるか。
――ポップの受け止め方として、それは正しいと思います。
Anna:そこが大切だと思っていますね。
――アルバムのなかで、特に強い思い入れを持つ曲を挙げるなら?
Anna:どの曲にも強い思い入れがありますが、アルバムの象徴という意味では「World’s End」です。歌詞では、社会や人生、未来に対する恐怖や不安を描いています。きっかけは、2026年のはじめ、米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』(原子力科学者会報)が発表したのですが、世界終末時計が過去最短の「終末まで85秒」になったというニュースを見たんです。私は今年30歳になったばかりで、人生100年時代と考えたら、あと70年生きられるかもしれない。でも、世界の終わりがこれほど近くにある。その事実と国際情勢が生活に及ぼす影響を考えたら、大きな不安に襲われました。
日本には「なんとかなる」という、私の好きな精神があります。でも、「もしなんとかならなかったらどうしよう」――そんな思いをぶつけた曲です。ただ、終わりを迎えたとしても、それは新しい始まりを意味するし、新しい始まりがあれば、新しい秩序も生まれる。ネガティブすぎず、ポジティブすぎない。そのバランスも含めて、自分の心に強く残っています。



















