M!LKとモナキのヒットの違い、そして共通点から考える 時代が求めた“熱い”メッセージ
2026年の日本の音楽シーンを語る時、この2組の名前を外すことはできないだろう。M!LKとモナキ。どちらもTikTokをはじめとしたショート動画SNSを起点としたバイラルヒットでブレイクを果たし、どちらもテレビの冠番組を複数持ち、どちらもSNS総再生数が2桁億回を超えている。しかし、この2組のヒットの“仕方”は、驚くほど違う。その違いのなかに、今この時代に音楽で成功するとはどういうことかという、ある種のヒントが詰まっている。
M!LKは、12年かけてヒットを手に入れた。2014年に結成されたM!LKは、2025年リリースの楽曲「イイじゃん」でSNS総再生数30億回を突破する大爆発を起こした。その勢いのまま、同年には『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に初出場。しかし、M!LKの本当の凄みは、そこからの“連打力”にある。「イイじゃん」が一発屋で終わらなかったのだ。
昨年10月に配信リリースされた「好きすぎて滅!」は、ストリーミング累計1億回再生を国内男性グループ最速で達成(当時/※1)。ショート動画SNSでは、流行フォーマットとシンクロした“滅ポーズ”がペアとなった投稿を誘発し、大きな支持を得た。「イイじゃん」がセルフィーをメインとした動画のBGMとして広がったのに対し、「好きすぎて滅!」は友達同士やカップルといった動画フォーマットを原点に広がった。親しみ方が違うから、届く層も違う。さらに「爆裂愛してる」ではアッパーなダンスチューンで畳みかけ、「アイドルパワー」ではグループのアイデンティティそのものを楽曲に昇華してみせた。一曲ごとにSNSでの広がり方のパターンを変えながら、すべてヒットさせる――。この再現性こそが、M!LKの最大の武器だろう。『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』では5冠を達成し、名実ともに今最も勢いのある男性グループとなった。
一方、モナキは今年4月8日にメジャーデビューしたばかりの新生だ。純烈のリーダー・酒井一圭による『酒井一圭プロデュース セカンドチャンスオーディション』を経て選ばれた4人組歌謡コーラスグループで、平均年齢33歳。戦隊ヒーロー俳優、千葉大学首席卒の一級建築士、元会社員……一度は夢を諦めた男たちが『セカンドチャンス』を求めたうえで結成されたモナキというグループは、デビュー前の段階から、楽曲「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」がショート動画SNSを中心に瞬く間に広がり、SNS総再生数は19億回を突破。『TikTok上半期トレンド大賞2026』では大賞を受賞し、デビュー半年で音楽シーンの台風の目となった。
どちらもSNSから大きな嵐を呼び起こしたのは明白だ。だが中身を見ると、ヒットの構造はまるで違う。
M!LKのヒット曲に共通するのは、フレーズの汎用性と振り付けの真似しやすさだ。「イイじゃん」は日常の自撮りに、「好きすぎて滅!」の“滅ポーズ”は他者と写る動画に、それぞれユーザーの自己表現ツールとして機能した。M!LKの楽曲は、M!LKを知らない人が自分の動画を構成する重要なパーツして機能することで広がっていった。言ってみれば、「曲が先に届いて、そこからグループに興味を持つ」という構造だ。
モナキの「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」のヒットは、もっと直接的で人間味がある。関西弁全開の歌詞、ユーロビート調の派手なサウンド、そして“しらんけどダンス”のインパクト。そして、ほかのグループ/アーティストがモナキの楽曲で“踊ってみた動画”を投稿したお返しに、そのグループ/アーティストのダンスをモナキがカバーするというコミュニケーションも話題となった。そのお礼動画はコメントで「低クオリティだ」とコメントで突っ込まれ、それが“仕返し動画”と喩えられ(メンバーはもちろん一生懸命なのだが、「(自分たちの振り付けが)もう低クオリティーすぎちゃって」「“仕返しじゃん”ってふざけてコメントで野次られて、遊ばれた」という)、さらなる反響を呼んだ結果、独自のコミュニケーション文化を生んだ。モナキのバズは、楽曲がひとり歩きしたというよりも、モナキというグループのキャラクターそのものがコンテンツになったと言うほうが近いかもしれない。「人が先に届いて、そこから曲も好きになる」――そんな流れだろう。同じSNS発のヒットと言っても、その入口の設計はまったく違うのだ。
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冠番組のあり方も、その違いを如実に映している。
M!LKは、2024年からスタートした地上波初の冠番組『限界突破!やってM!LK』(TBS系)でシーズン2まで走り、この10月からは2度にわたって放送された『M!LKの爆裂ミッション』(TBS系)が土曜日午後放送のレギュラー枠でスタート。さらに『M!LKに言ってみ?』(日本テレビ系)、『ザッツ M!LK』(日本テレビ系)と冠バラエティ番組も予定され、複数局にまたがる冠番組の数は、もはや国民的グループのそれだ。内容も「チャレンジ系バラエティ」「お悩み解決」など幅広く、5人それぞれの個性を見せる場として機能している。これは、嵐がかつて『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)、『VS嵐』(フジテレビ系)でテレビを通して国民的認知を獲得していった道筋と自然に重なる。音楽だけではなかなか届きにくい層に、バラエティを通じて「この5人、面白いな」と思わせられるような設計だ。
モナキは、地上波レギュラー初の冠番組として『冠モナキ』(テレビ朝日系)が7月にスタート。先日も『モナキの今がそのトキ!~チャンスはいつでもそこにある!〜』(NHK総合)が放送され、デビュー半年で地上波レギュラーと特番を手にした。森本しんたろう(元トンツカタン)が“保護者”としてサポートする『冠モナキ』は、「まだ世間に知られていないメンバーの素顔を掘り下げていく」というドキュメントバラエティ。グループの成長そのものをリアルタイムで見届ける構造は、プロデューサーである酒井が所属する純烈が歩んできた“応援したくなるストーリー”の文法をそのまま継承している。
M!LKの冠番組が「さらに広い層に届くための装置」であるのに対し、モナキの冠番組は「まだ知らない人にグループを知ってもらうための装置」として設計されている。同じ冠番組でも、フェーズが違えば役割も違う。グループのあり方そのものも、対照的だ。
M!LKは5人がそれぞれ音楽、ドラマ、映画、バラエティと個人それぞれが領域を広げ、その個人の活躍がグループに還元される、いわば“5つの入口”があるグループだ。この秋クールのドラマには、3人がそれぞれ異なる作品に出演するという好況も待っており、まさしく「メンバー個人の浸透力がグループの国民的認知を支える」というモデルを踏襲している。
モナキは、その逆だ。4人が4人で一塊として動く。純烈から受け継いださまざまなサービス精神、ほかにはない近い距離感……。「一度会うと沼る」と言われるその吸引力は、個人のスキルではなく、4人の関係性と人間味そのものから生まれている。独自のポジショニングだ。
M!LKが12年かけて積み上げたキャリアの上に生んだヒットだとすれば、モナキはSNSでのバズそのものが起爆剤となったヒットだ。しかし、どちらにも共通しているのは、「この人たちを応援したい」と思わせる“物語”があるということだ。M!LKには、12年間の下積みと、諦めなかった5人の青春がある。モナキには、一度夢を諦めた男たちが、もう一度ステージに立つというセカンドチャンスの物語がある。SNSのアルゴリズムが曲を届けても、最終的に人の心を動かすのは、やはり人間の物語だと私は思う。
M!LKさんと📸✨
たくさんお話しさせていただきました‼︎
ありがとうございました❤️🔥#MILK @milk_info pic.twitter.com/Scb2D2pI8F— モナキ (@monaki_official) July 1, 2026
そしてもうひとつ、見逃してはならない共通点がある。M!LKの「イイじゃん」も「好きすぎて滅!」も「爆裂愛してる」も、モナキの「ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど」も、すべてポジティブなメッセージを持った楽曲だということだ。自分を卑下するでもなく、冷笑するでもなく、皮肉でもなく、ひねりを加えて距離を取るのでもなく、ただまっすぐに「好き」や「楽しい」を叫ぶこと。その熱血さを、恥ずかしがらずに全力でぶつけてくる。この2組のヒットが同時に生まれたという事実は、今この時代――情報過多で他者の目を気にして何かを素直に好きだと言うことすら難しくなった――が、実はそういうまっすぐな熱を誰よりも求めていたということの証明なのかもしれない。
2026年、ふたつの“正解”がある。そのどちらもが、今の時代に音楽で人の心を掴むとはどういうことなのかを鮮やかに教えてくれている。どちらも2026年の空気にフィットしたからこそ、ここまで届いたのだ。
※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/158729/2


























