Number_i、BE:FIRST、HANAのコレオグラファー KAZtheFIREが語る、アーティストの“楽しい”を起点にした振り付けの極意

Number_i、BE:FIRST、HANAをはじめとした国内外のアーティストの振り付けを手がけるダンサー/コレオグラファー、KAZtheFIRE。11歳でダンスと出会い、RHT.やDr.SWAGのメンバーとしても世界の舞台を経験しながら、ダンスシーンの第一線を走り続けている。
「本人たちが楽しめているかどうか」――振り付けをするうえで大切にしていることを尋ねると、そんな答えが返ってきた。アーティスト自身が楽しむことで、パフォーマンスが輝き、その楽しさが観る人へと伝わっていく。その考えは、彼自身がダンサーとしてステージに立ち続けてきた経験とも深く結びついている。ダンサーとして数々の実績を積みながら、コレオグラファーへと表現の幅も広げてきたKAZtheFIREに、これまでの歩みと振り付けが生まれるまでの思考、現在のダンスシーンについて話を聞いた。(かなざわまゆ)
RIEHATAとの出会いから深くのめり込んだダンス

――まずは、ダンスとの出会いについて教えてください。
KAZtheFIRE:僕は三兄妹の末っ子で、姉と兄がダンスをやっていたんです。それで僕も、結構無理矢理というか(笑)、最初は「やらなきゃいけない」みたいな感じで始めました。
――「やらなきゃいけない」というところから始まったダンスが、今はお仕事になっているわけで。何か気持ちが変わるきっかけがあったのでしょうか?
KAZtheFIRE:覚えているのは、通っていたダンススクールで大会に出場するメンバーを決めるオーディションがあったんです。それに受からなくて、選抜メンバーに入れなかったのがすごく悔しくて。「頑張ろう」と思ったのは、それがきっかけだった気がします。そこからダンスが楽しくなっていきました。
――一度はダンスから離れた時期もあったそうですね。
KAZtheFIRE:中学2年生の頃ですね。単純に、ダンスをするより友達と遊ぶほうが楽しいと思う時期があったんです。「もういいや」と思って友達と遊んでいるんですけど、夜になると「こんなんでいいのか?」って自問自答する毎日が続いていて。そんなときに、師匠であるRIEさん(RIEHATA)が「作品に出てくれない?」と声をかけてくださったんです。当時からRIEさんのことが大好きで、ずっとついていきたいと思っていたので、それがダンスを再開するきっかけになりました。あのままだったら、自分から戻るきっかけはなかったと思うので、すごくいいタイミングだったんでしょうね。ただ、出るからには「かましたい」と思いました。「ここでRIEさんの目に留まらなかったら終わる」「気に入られなきゃ」って思っていたので(笑)。
――KAZtheFIREさんにとって、RIEHATAさんはとても大きな存在なのだと感じます。あらためて、RIEHATAさんとの出会いについても教えていただけますか?
KAZtheFIRE:ダンスを習い始めたのが小学5年生のときだったんですけど、小学6年生の頃に発表会があったんです。そこにRIEさんが作品を出していて、それを観たときにものすごく衝撃を受けました。「俺がやりたいのはこれだ!」と思って。めちゃくちゃHIPHOPな作品なのに、かっこよすぎてなぜか泣いちゃったんですよ。それで、その翌日か翌々日くらいにはそれまで通っていたダンススクールに「辞めます」と伝えて、次の週にはもうRIEさんのレッスンを受けていました。
――そこからRHT.や、KAITAさんとのDr.SWAGなど、チームでの活動も広がっていきます。RHT.ではアメリカのダンスコンテスト『Body Rock Jr』で二度の準優勝、さらにD.LEAGUEでは優勝も経験されていますが、そうした経験が現在のご自身に活きていると感じることはありますか?
KAZtheFIRE:それはもう、死ぬほど練習したことが今も活きていますね。特にメンタルはかなり鍛え上げられました。高校1、2年生ぐらいのときですけど、1日12時間くらい、毎日練習していたんですよ。朝から晩までずっと練習していたので、その時期にかなり上手くなった自覚はありますね。

――1日の半分を練習に費やしていたってことですもんね。かなり大変だったのでは?
KAZtheFIRE:大変でしたし、やればやるほど沼にハマっていくような感覚があって。「これが正しいのか、正しくないのか」がわからなくなるときがあるんです。それがいちばん辛かったですね。
――そういうときって、どうやって抜け出すんですか?
KAZtheFIRE:もう、やるしかない(笑)。本番まで正解はわかっていなかったと思います。ただ、『Body Rock Jr』での準優勝は悔しかったですね。特に2度目は「もう一度挑戦したのに、また2位なんだ」という悔しさがあったからこそ、D.LEAGUEのときは「絶対に1位を取ってやる」という気持ちがチーム全体にすごくあったと思います。しかも、自分たちはD.LEAGUEに参加するのは1年だけと決めていたので、「ここで優勝しなかったら終わるぞ」というくらいの気持ちで、本気で取り組んでいました。
――現在はDr.SWAGとしても作品を発表するほか、おふたりでさまざまなアーティストの振り付けも手がけています。おふたりで制作をする際、KAITAさんとはどのように役割分担をしているのでしょうか?
KAZtheFIRE:僕とKAITAは、いい感じにスタイルが分かれているんですよ。わかりやすく言うと、KAITAは“バキバキ系”で、僕は“しなやか系”。だからふたりで振り付けを作るときも、1曲のなかで「ここはKAITAっぽいから、KAITAが作ろう」「ここは俺っぽいから作るわ」みたいな感じで分担することが多いですね。まずは曲全体の流れを見て、大まかな構成をふたりで作って、そのうえで各自の得意なパートを当てはめて一気に作っていく感じです。そこから、僕が作ったパートとKAITAが作ったパートの境目をブラッシュアップして、ひとつの振り付けとしてつなげていく。基本的にはそういう作り方ですね。
――個人での振り付けについても聞かせてください。ひとつの大きな転機として、2017年にJackson Wang(ジャクソン・ワン)さんの「Generation 2」「Papillon」の振り付けを手がけたことが挙げられると思います。これはご本人から直接オファーがあったそうですが、最初に連絡を受けたときはどんな心境でしたか?
KAZtheFIRE:実は、そのメッセージに3カ月くらい気づいていなかったんですよ(笑)。承認しないと見られないところに入ってしまっていて、ずっと見ていなくて。あるとき「チェックマークがついてるな」と思って見たら、Jacksonからのメッセージだったんです。「やべえ!」ってめっちゃ焦りました……。それから返信して、最初は「ライブを観に来てよ」みたいなやり取りから始まって、徐々に話すようになって。実際に一緒に仕事をしたのは、それから1年後くらいだったと思います。
――そんなことがあったんですね(笑)。そこから現在では、国内外のさまざまなアーティストの振り付けを手がけられています。ご自身が踊る場合と振り付けを提供する場合では意識することも異なると思いますが、アーティストの振り付けを作るうえで、特に大切にされていることは何でしょう?
KAZtheFIRE:もちろん、そのアーティストが輝くことは大前提です。そのうえで、僕が大事にしているのは、「踊っていて本人たちが楽しめているかどうか」ですね。楽曲が長く愛されれば、ライブでもテレビでも何度も披露することになるかもしれない。そのときに本人たちが楽しんで踊れていることが、いいパフォーマンスにつながると思うんです。観ている人たちも、本人たちが楽しんでいる姿から元気をもらえると思うので。
僕の振り付けって、意外と「振りがないところ」が結構あるんですよ。もちろん曲調にもよりますけど、「ここは自由にやってください」みたいなパートをあえて作るんです。そうすると、その人たちなりに楽しめる瞬間が生まれますよね。僕自身もダンサーなので、ステージに立って音楽を聴いたときの「イエーイ!」みたいなバイブスが、パフォーマンスにすごく影響することを知っているんです。だから振り付けだけではなく、そのときの気持ちの一体感みたいなものが生まれるかもすごく意識していますね。


















