Number_i、BE:FIRST、HANAのコレオグラファー KAZtheFIREが語る、アーティストの“楽しい”を起点にした振り付けの極意

ダンスシーンの未来に感じている危機感

――KAZtheFIREさんが手がけた振り付けのなかで、個人的には中島健人さんの「MONTAGE」がとても好きで。殺人現場を想像させるような振り付けで始まってストーリー性を感じますし、スタンドマイクの使い方もすごくかっこいい。もともとスタンドマイクでパフォーマンスすることが決まっていて、あの振り付けになったんでしょうか?
KAZtheFIRE:「MONTAGE」に関しては、たしかケンティー(中島)が最初に「マイクを2本使いたい」と言ったんですよ。「ひとりでマイクを2本?」と悩んだんですけど、スタンドマイクを“もうひとりのケンティー”に見立てたら面白いんじゃないかと閃いたんです。ケンティーの分身じゃないですけど、マイクスタンドとペアダンスをしているような表現を作ったり、本人が歌っている後ろでマイクスタンドが浮き上がったり。もうひとりのケンティーがそこにいるようなイメージで作った記憶があります。
――使うマイクによっても、振り付けって変わってきますよね。マイクでいえば、Number_iの「Numbers Ur Zone」はかなり激しく踊っていますが、ハンドマイクでパフォーマンスしているのも印象的でした。
KAZtheFIRE:「Numbers Ur Zone」はサビ頭の振り付けが両手を使ったものなので、ハンドマイクで歌いながらだとできないんですよね。実際、どうしようかという話になったんですけど、「あえてハンドマイクでいって、サビの冒頭は歌ではなくダンスに振り切って見せるのも新しいんじゃない?」となって。もともとダンスをしっかり見せる楽曲でもあったので、「ここはダンスに振り切ってもアリだよね」という話をしました。そういうパフォーマンスの部分については、アーティスト本人と話し合ったうえで、お互いがワクワクする方向に話を進めている気がします。「こっちのほうが新しくない?」「これ、まだ誰もやってなくない?」「いいじゃん!」みたいな(笑)。
――たしかに、KAZさんの振り付けは観ていて驚かされるものが多い印象です。「MONTAGE」もそうですが、パフォーマンスの始まりから「何が始まるんだろう?」と思わせるような、インパクトのある振り付けも多いですよね。
KAZtheFIRE:最近だと、それこそNumber_iの「BUGS LIFE」とかもそうですね。今まで見たことがないような面白さだったり、ちょっとコミカルな要素だったり、遊び心は結構取り入れています。ダンス大会の審査員のお仕事をさせていただくこともあるんですけど、作品を審査するときに、第一印象って結構大事なんですよ。一発で気になってしまうようなインパクトがあると、自然とその先も見たくなる。TikTokとかもそうですよね。開いた瞬間のインパクトがすごく大事なので、僕も「何これ?」と思わせるような部分は意識して考えています。
――最近はアーティストのダンススキルもどんどん高くなっている印象です。KAZさん自身、シーンを見ていて感じる変化はありますか?
KAZtheFIRE:それ、まさに今の僕の悩みなんですよ。今活躍しているアーティストのみなさんは、ダンスが上手すぎる(笑)。そもそも“アーティスト”と“ダンサー”を分けて考えること自体、僕はあまり好きじゃないんですけど、今はアーティストがダンスを上手く踊れることが当たり前になってきていますよね。しかも、みんなダンスが上手いだけじゃなくて、華がある。アーティストはダンスもできて、そのうえで人を惹きつける魅力も持っているんです。パフォーマンスのレベルがどんどん上がっているからこそ、「ダンサーももっと頑張らなきゃ」と思いますね。
僕も今28歳になって、これから30代、40代になっていけば、下の世代や後輩もどんどん増えていく。そうやって将来を考えたときに、自分がいつかステージを去るまでに自然と目を引くようなダンサーを育てていかなきゃいけないな、という責任感もありますね。
――一方で、TikTokなどのSNSの影響もあり、以前に比べて振付師やダンサーにスポットが当たる機会も増えてきたように感じます。ダンサーや振付師を取り巻く環境が変化している実感はありますか?
KAZtheFIRE:注目してもらえる機会は増えてきたと思います。でも、まだもっといけるんじゃないかなって。簡単に言えば、ダンサーがみんなダンスで食べていけるくらい、シーン全体が成長していったらいいなと思っています。
――そのためには、どんなことが必要だと思いますか?
KAZtheFIRE:一人ひとりが頑張らなきゃいけない部分もあると思いますし、でも、そこからみんなで波に乗っていけたら、もっと広がっていく気がしています。そのためにも、「ダンスって面白いな」と常に思ってもらえるようにしなきゃいけない。だから僕自身も、最近はひとりのダンサーとして発信を頑張っていくように心がけています。……個人的には、発信するの苦手なんですよ(笑)。でも、これからのことを考えると、発信することにはちゃんと意味があると思うので。
――その発信のひとつが、2025年に始めたYouTubeチャンネル「THE FIRE ROOM」ですよね。
KAZtheFIRE:始めたきっかけは、マネージャーから提案されたことだったんですけど(笑)。でも、ダンサーってスポットライトを浴びる場所がまだまだ少ないんですよね。ダンスイベントに出演することはあっても、そこで完結してしまうというか、なかなか表の場には出ていかない現状があると思っていて。YouTubeは、KAZtheFIREという存在を知ってもらうと同時に、「ダンサーってこういう生活をしているんだ」「こういうこともやっているんだ」と知ってもらえる。そういう新しい窓口であって、自分を表現するためのひとつのツールという感覚ですね。
――今後、KAZtheFIREとしてどんな姿を見せていきたいですか?
KAZtheFIRE:やっぱり、僕自身がダンサーとしても売れていかなきゃいけないと思っています。自分自身が上手くなっていなかったら、いいダンサーでいなかったら、振付師として何を言っても説得力がないと思うんですよ。だから振り付けの仕事もやりながら、「自分自身ももっとかっこよくならなきゃ」というのは常に思っています。これからは、自分自身が表に出る活動ももっと増やしていきたいですね。
――KAZtheFIREさんのダンスや手がけた振り付けを見た人に、ダンスを通していちばん感じてもらいたいことは何でしょう?
KAZtheFIRE:やっぱり「楽しい」じゃないですかね。観ている人をハッピーにしたいというのが根本にあるので。アーティストのパフォーマンスで考えれば、最終的にはファンの方に楽しんでもらうことがゴールだと思うんです。でも、アーティスト本人が楽しんでいなかったら、その楽しさは観ている人まで届かないと思う。僕が振り付けを作るときに「本人が楽しめていること」をいちばん大事にしているのもそこにつながっています。画面越しでも、本人たちが楽しそうにしている姿を観ると、「いいな」「楽しそうだな」って自然と笑顔になる瞬間がありますよね。僕自身、そういう瞬間が好きなんですよ。だから最終的には、観てくれる人に楽しんでもらいたい。その瞬間を届けたいという気持ちがいちばん強いですね。






















