EBiDAN「Yes! 東京」に溢れる9グループのエネルギー 異なる個性を肯定し、総勢60名でひとつの景色を描き出す楽曲の真価
Viral Hits Focus
話題のバイラルヒット曲を毎週収録するSpotifyによる日本向けエディトリアルプレイリスト「Viral Hits Japan」(※1)。同プレイリストより、本記事ではEBiDANの「Yes! 東京」をピックアップする。
「Yes! 東京」は、EBiDAN(恵比寿学園男子部)の15周年を記念し、8月11日にリリースされたシングルの表題曲である。楽曲自体は7月2日より先行配信されており、参加しているのは超特急、M!LK、SUPER★DRAGON、Sakurashimeji、ONE N' ONLY、原因は自分にある。、BUDDiiS、ICEx、Lienelの9グループ、総勢60名。現在のEBiDANを構成する多彩なメンバーが一堂に会した、15周年の節目を象徴する一曲だ。EBiDANといえば、超特急が今年11月に東京ドーム公演を控え、M!LKも「イイじゃん」「好きすぎて滅!」「爆裂愛してる」などを通じて新たなリスナー層へと存在感を広げるなど、それぞれのグループが独自のフィールドで躍進を続けている。「Yes! 東京」が興味深いのは、そうした個々の勢いをひとつの型に収めるのではなく、むしろ異なる個性が同時に存在する状態そのものを楽曲のエネルギーへと転換している点である。
まず耳を奪われるのは、聴いているだけで気分がすっと上向いていくような、屈託のないポップな高揚感だろう。歯切れのいいビートが軽快な土台を作り、その上でラップ調のフレーズと伸びやかなメロディが目まぐるしく入れ替わっていく。60名ものメンバーを擁しながら曲の輪郭がぼやけないのは、リズムの芯をぶらさず、次々と声が切り替わること自体を推進力へと変えているからだろう。主役がめまぐるしく交代しても、根底に流れるグルーヴは一貫している。そのため、大人数によるボーカルリレーが情報過多になるのではなく、次に誰の声が飛び出してくるのかという期待感へとつながっていく。自然と身体を揺らしたくなるような弾むダンスビートが、サビへ向かって一段ずつテンションを高めていく展開も実に鮮やかだ。最終的に多数の声が重なり合うサビには、ライブ会場で大勢の観客を巻き込む光景まで想像させるスケール感がある。
歌詞もまた、この開放的なサウンドとまっすぐに結びついている。そこにあるのは、何者かになろうと背伸びするのではなく、それぞれがそれぞれのスタイルのまま、今を楽しみながら前へ進んでいこうとする姿勢だ。〈晴れ〉も〈雨〉も飛び越え、ありのままの自分で進んでいく。誰かと比べて優劣を競うのではなく、一人ひとりの違いそのものを肯定するような言葉が、祝祭感のあるサウンドの中を駆け抜けていく。なかでも印象的なのが、〈東京都渋谷区恵比寿〉という地名がそのまま歌詞に登場することである。タイトルに掲げられた“東京”は、漠然とした都会への憧れを示す記号ではない。EBiDANが歩んできた時間と現在地を重ね合わせる、具体的な場所として響くのだ。15周年というタイミングだからこそ、この地名が軽妙なフレーズの中に紛れ込みながらも、不意に強い意味を帯びる。
そして、この曲が掲げる「それぞれの個性を肯定する」というメッセージに説得力を与えているのが、ほかならぬEBiDANという存在そのものである。超特急のエンターテインメント性、M!LKの親しみやすいポップネス、SUPER★DRAGONのミクスチャー感、Sakurashimejiの生楽器を軸とした音楽性、ONE N' ONLYのダンス&ボーカルを軸にしたパフォーマンスなど、“EBiDAN”という同じ看板を共有しながらも、各グループはそれぞれ異なる方法で自身のカラーを築き上げてきた。「Yes! 東京」は、そんな違いを均質化しようとはしない。ボーカルが切り替わるたびに声の質感やテンションが変わり、歌とラップ、ソロと集団の掛け合いが次々と交錯する。それでもサビに入れば、多数の声が一気にひとつの大きな熱量へと収束していく。個々のキャラクターを際立たせることと、大人数でひとつの景色を作ること。その両方を行き来する楽曲構造そのものが、現在のEBiDANの姿を映しているようでもある。バイラルヒットというと、SNS上のミームや一過性の話題から突発的に拡散する楽曲を想像しがちである。しかし「Yes! 東京」の場合、その勢いの土台にあるのは15年という時間をかけて築かれてきたEBiDANの層の厚さである。それぞれ異なる歴史を持つ9グループがひとつの楽曲に集まり、その先でまた個々のグループへ枝分かれしていく。集合と拡散を繰り返す仕組みそのものが、この曲を長く聴かせる力になっている。
一つの楽曲に9グループ、60名の個性と15年分の歩みを凝縮しながらも、聴後感は驚くほど軽やかな「Yes! 東京」。この楽曲が放つ屈託のない明るさは、EBiDANというコミュニティだけでなく、たまたま再生ボタンを押した初めてのリスナーまで気持ちよく巻き込んでいく懐の深さに支えられている。個性の違いを消してひとつになるのではなく、違ったまま同じ場所に集まること。それを60名の声と身体で鳴らしてみせたところに、この曲ならではの爽快さがある。15年という時間を経て生まれた新たな代表曲が、ファンのための記念碑に留まらず、外側へと大きく開かれたポップソングになっている。その事実こそが、現在のEBiDANの強さを物語っているのである。
※1:https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DWZZbpkxU5t9L