YUTORI-SEDAIから「YU'S」へ “あなた”のために歌を歌うための決断、覚悟を伝えた一夜を振り返る

「YUTORI-SEDAIは今日をもってYU'S(ユーズ)に改名します」

 『あなたへ』と冠したフリーワンマンライブで、YUTORI-SEDAIは「YU'S」へ名前を変えることを発表した。改名の理由については「今まで以上に、ありのままで、等身大で、だけどひとりよがりじゃなくて、ちゃんとあなたのために歌を歌っていくということに対して真剣に向き合っていきたい。そういう覚悟を持っての改名です」と言葉を重ねた。改名と改名理由は、この日のライブの終盤で発表されたのだが、3人はすでに覚悟を持ってステージに立っていた。その証拠に、この日の彼らはいつも以上に素直で、赤裸々で、まっすぐなライブを展開していた。

 2026年7月28日。平日にもかかわらず、会場には多くの観客が詰めかける。『あなたへ』とつけられたフリーライブの告知には手紙をデザインしたフライヤーが使われており、つまり、YUTORI-SEDAIからの手紙や気持ちを受け取りに、多くの人が集まったのだ。

 ステージに登場すると金原遼希(Vo/Gt)が「はっじめまーす!」とテンション高く声を弾ませ、〈鳴らせ 鳴らせ〉と歌う「ロックンロール」で挨拶がわり。金原が「今まででいちばん高いジャンプを見せてくれ! すべてを超えるジャンプを!」と煽ってから始まった「足りないくらいがちょうどいい」では、その言葉通りオーディエンスが地下のライブハウスをも揺らさんばかりにジャンプ。さらに間奏では金原と上原駿(Ba)も櫻井直道(Dr)のほうを向いてジャンプして勢いづける。上原と櫻井が繰り出す軽快なビートに乗るのは〈大体毎回会いたいなって/言うのは私〉〈愛情表現、内容表面/見せてよ行動、もうどうすれば、、〉と愛するがゆえに不安定な主人公の想い。そのアンバランスさがYUTORI-SEDAIの魅力だ。さらに〈私ばっかり、嫌になっちゃうよ〉と歌う新曲「嫌になっちゃうよ、」を続けて、増大する恋愛の不安を煽る世界観と反比例して、会場の熱量はぐんぐん上がる。

金原遼希(Vo/Gt)

 「今日はその名の通り、あなたに、あなただけに歌いにきました」というひとことを挟み、さらに「鏡よ鏡」「ベストシーン」で恋愛の楽しさを描き出す。と、ここで一度ステージが真っ暗になる。音も止まり、静寂が会場を包む。金原がギターをゆっくりと鳴らし「別れよう、君に言われた。理由も聞けずにいる。聞けば戻れる望みも、すべてなくなる気がした」とメロディに乗せて、話すように言葉を紡ぐ。そして〈やっと別の人を/好きになれたって思ったのに〉とファンにはお馴染みのフレーズへ。「もう一度好きになって」だ。先ほどまでの熱狂は身を潜め、ステージ後方から照明があたりシルエット姿になった3人は、切実な金原の歌声に寄り添うように声と音を重ねる。観客は彼らの紡ぐ物語に浸るように、もしくは自身の恋愛に重ねながら、じっと3人の音に耳を澄ましていた。

上原駿(Ba)
櫻井直道(Dr)

 「記念日」を温かく届けたあと、上原の提案で水分補給のためみんなで乾杯。一体感が増したところで、金原がふと切り出す。「今までこういう話をあまり自分からしてこなかったんだけど」。少し前までサラリーマンとして働きながらバンドを続けていたこと、コロナ禍で音楽業界全体が窮地に陥るなかで、自身は音楽に割く時間がなく出勤していたこと。「曲も作らずに、誰もいない新宿になんで出勤しているんだろうと葛藤していた時期がありました」。赤裸々な告白のあとに演奏されたのは、その時の思いを込めたという「境界線」。この日は平日。会場には仕事終わりで駆けつけた人も少なくないだろう。自身の実体験を歌詞に落とし込むことの多いYUTORI-SEDAIの楽曲は、恋愛だけでなく、サラリーマンの生活や思いにもリアルに優しく寄り添っていく。

 その後、歌謡曲のような艶やかさを持つ「新宿ロマンス」、3人のソロでロックバンドとしての矜持を見せてから始まった「恋しちゃったんだ」、金原の「かわいい曲やります」との言葉から続けられた、その言葉通りキュートな「YURU FUWA」、会場いっぱいに大合唱が広がった「すき。」と、YUTORI-SEDAIの多彩さを一気に見せていった。

 歌い終えると金原が静かに息を吸う。「今日は、あなたにいちばんに伝えるべきことがあって、伝えたいことがあって、今日のこのフリーワンマンを開催することにしました。YUTORI-SEDAIは今日をもって改名します」。新たなバンド名は「YU'S」。「対みんなじゃなくて、あなた一人ひとりに歌を届けたい」という思いと「YUTORI-SEDAIとしてやってきたことをこれからも大事にしていきたい」という思い。その両方を、YUTORI-SEDAIの頭文字をとった「YU'S」に込めたのだという。

 さらに改名の理由を一つひとつ、自分たちの言葉で語っていく。「全然あなたに寄り添えるバンドになれていない」と気づいてしまったこと。ライブで完璧なパフォーマンスができず楽屋で何度も落ち込んできたこと。「『向き合えてないじゃん、俺』って、心底情けなくなりました」。それでもこうして会いにきてくれる“あなた”がいる。だったら、もっとありのままで、等身大でいるしかない。そう思ったのだという。そして、冒頭に記した言葉。「今まで以上にありのままで、等身大で、それでもひとりよがりにはならず、ちゃんと“あなた”のために歌っていくこと。そういう覚悟を持っての改名なのだ」と――。思いは止まらず溢れ出していった。

 3人は、そんな思いを込めたという新曲「あなたへ」を初披露。曲に込めた思いをすべて伝えるように、優しい演奏に乗せ、一言一言丁寧に紡いでいく。ファンも同じように、彼らの思いをひとつも聞き逃すまいと、手紙のような新曲にじっと耳を澄ませた。さらに、数年前に櫻井から「バンドを辞めたい」と切り出されたときのことも語る。「駿くんとサクちゃん(櫻井)とこれからもずっとバンドやりたいし、そこにあなたがいてほしい」。当時のその気持ちを込めた「yume」を、3人は噛み締めるように演奏した。

 しんみりしたムードを一蹴するように、金原が声を張り上げる。「ここ下北沢MOSAiCという場所でYUTORI-SEDAIは始まりました。同じ下北沢MOSAiCで幕を閉じるけど、新たにYU'Sとして、また同じく下北沢MOSAiCから物語を作っていきますので、これからもよろしくお願いします。YUTORI-SEDAI改めYU'Sでした!」。その言葉のあとに選曲されたのは、彼らの始まりの歌「23×3」。〈何年経っても/終わらないよ青春は〉と歌う「23×3」は、〈幸せになるために〉と結ばれた。

 彼らの演奏がすべて終わると、フロアの横に設置されたスクリーンに、3人からの手紙が映し出される。そして8月19日にデジタルEP『YU'S』のリリースと、11月から12月にかけて開催する対バンツアー『YU'S TOUR 2026 "Just for you"』の開催が発表され、あたたかな拍手が会場に広がった。終演後、3人が向き合ったのは拍手を送る“みんな”ではなく、“あなた”一人ひとり。メンバーが直接会場出口で会場を出る観客を見送った。改名の夜、彼らは「YU’S」というバンド名に込めた思いを体現してみせた。そして、ここからYU’Sの物語が始まる。

■リリース情報
New Digital EP『YU’S』
8月19日 (水)リリース

配信URL:https://YUS.lnk.to/YUS

■ツアー情報
東名阪 対バンツアー『YU'S TOUR 2026 "Just for you"』

11月20日(金)大阪・梅田Zeela
OPEN 18:30/START 19:00

11月25日(水)愛知・ell.SIZE
OPEN 18:30/START 19:00

12月16日(水)東京・新代田FEVER
OPEN 18:30/START 19:00

※全箇所ゲストあり(後日発表)

YU'S オフィシャルサイト:https://yus.main.jp/
X:https://x.com/yutorisedai3man
Instagram:https://www.instagram.com/yutori_sedai_band/
YouTube:https://www.youtube.com/@YUTORISEDAI

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