吾妻光良 & The Swinging Boppers、45年間続くバンドの美学 馴染みの仲間が集結した『SPECIAL BANQUET』を振り返る
45周年への感慨ーー「他にはあまりない人間関係が築けて良かった」
ーー(笑)。ゲスト曲以外で特に印象に残ってる場面はありますか。
吾妻:「正月はワンダフル・タイム」が嬉しかったですね。皆さん柏手を打ってくれて。あれは楽しかったですね。
ーー2部は「やっぱり肉を喰おう」からのスタートでした。
吾妻:そんなものは食わないですけどね、もはや。
ーー(笑)。オリジナルの歌詞になってました。
吾妻:この頃ですよね、歌っちゃいけない歌詞ってこんなにあんの? っていう。「齢には勝てないぜ」の歌い出しが〈朝からバファリン7錠〉なんだけど、歌ったらダメって言われて。 なんでダメなの? って聞いたら、「バファリン7錠飲むと薬事法違反になる」って。だから、〈朝からバファリン/リポビタン〉にしたのかな。面白くないもんね。あれ実話ですからね。
ーー実話だったんですか?
吾妻:そうそう、うちのテナーの西川(文二)が健康診断に行ったら前の人が言ってたっていう。昔はコンプライアンスとかあんまないから、人間ドックとか健康診断で、他の人の言ってることが平気で聞こえるわけ。患者が「いやなんかね、疲れが取れないんですよ。朝からバファリン7錠飲んでるんですけど」って言って。先生が「あんた。そんなに飲んだらダメだよ」って返したっていう。
ーー(笑)。「150~300」もみんなで〈俺の血圧〉というコールが湧き上がりました。
吾妻:ありがとうございます。150から300。そんなに高いやつはいないだろうけど。だいぶ前の曲で、これは自分の実話ですね。まあね、誰かまで覚えてますけど。その人とは今、仲良くやってますけどね。一度、勤めてた会社で事業の切り離しみたいなのがあって、出向で行ったんだけど、本社との間でいろいろギスギスするわけですよ。先輩に「なんとかっていう資料出せよ」って言われて。「わかりましたよ」って出したら、「別にこういうことをやれって言ってない」って。ムカムカってきて、割とすぐ曲になりましたね。本当に頭来てたから。今は全然仲いいですけどね、その先輩と。
ーー〈急ぎの仕事たのまれて/ふた晩寝ずに働いて〉のは実話だったんですね。本編の最後は「誕生日には俺を呼べ」でした。
吾妻:45年の締めくくりっていうのと、クアトロさんには本当にお世話になってますけど、ここまで続けられたのは50年を迎えた高円寺JIROKICHIのおかげで。本当にいつでもやらせてくれたんですよ。あそこのマスターも亡くなって久しいですけど、それが大きいなと思って。この「誕生日には俺を呼べ」っていうのは、JIROKICHI何十周年かで書いたんですよ。
ーー開店35周年のお祝いで作った曲でした。2009年ですね。
吾妻:そういう意味では思い入れのある曲でもあるんで、ここでやったわけですけど。本番の一週間前のリハーサルで譜面が間違ってるってことがわかった。よくあるんですよ。レコーディングした後に、「あれ、これ間違ってるな」「なんでそれで吹き込んじゃうんだよ(笑)」って。
ーー(笑)。2009年から17年、そのままだった!?
吾妻:うん、まんま。間違えて書いてるから、なんかみんな自信がなくて。なんかここ、ぬるっと吹いてるね、っっていう話になったんだけど 、それが白日の下に晒された。あ、間違ってるんだ、これって(笑)。だって、バンドでの練習は、このためにやったのがもう10年ぶりぐらいだったからね。普段はバンドでは練習しないし、合わせない。ライブの当日のリハだけ。だから、新しい曲をやるときガタガタになるんです。なんだこの曲って、生煮えのままやって。でも、今回は通しリハをやったおかげで、八分休符だと思ってたのが四分休符だった。さっき言ったけど、間違ってた。これおかしいんじゃないかって。ひどいよね。
ーー(笑)。アンコールはブルースメドレーから、最後は「打ち上げで待ってるぜ」で締めました。
吾妻:打ち上げ“が”待ってるぜ、でしたけどね、本当に。
ーーこの日の打ち上げはどうでした?
吾妻:うーん、やっぱあんま覚えてないですね。クアトロさんのご好意で、パルコの地下にあるクアトロラボを貸し切りにしてもらって。立ち話ばっかりしてたのは覚えてるけど、何を喋ってたんだろうな。ゲストといっぱい喋ったかな。ゲストも失礼な話で一人一曲だからね。待ち時間が長くてほんと悪いんだけど、二曲ずつやったら自分たちの曲がほぼ入らなくなっちゃうから。五人も呼ばないもんね、普通は。
ーーでも、所縁の深いゲストが次々と登場することで、より特別な宴=SPECIAL BANQUET感がありました。
吾妻:そうですね。ゲストが登場したり、出ていったりするところは珍しいから見てほしいですね。珍しい動物を見るわけじゃないけど(笑)。なかなかこういう、昔気質の、それこそアポロ・シアター的な演出はそうはないですからね。次から次へゲストが変わっていくっていう。土曜の夜の黒人文化みたいな感じがして。そこはうまく伝わるといいなと思いますね。
ーーMC でも「アポロ・シアターもクリビツテンギョー」って仰ってました。
吾妻:そうそう。チトリンサーキットっていうね。アポロ・シアターだけじゃないけど、40年代から50年代最初ぐらいまでの黒人のR&Bバンドって、バンドで巡業してて、そこにゲストが途中で入ってきて、また出てく。それを見に人々がわーって押し寄せて来てるっていう。そういうことの真似ができてよかったなって。真似かっていう(笑)。
ーーあはははは。
吾妻:でも、憧れる感じを真似したいっていうのは、若い時から変わらないですね。今も楽器屋で中学生が好きなギタリストのコピーをしたりしてるでしょ。それは古希になってもあんまり変わらないね。向こうの昔の偉大なR&B楽団の真似ができてるんだなと思うだけで嬉しいですね。それを皆さんにわかっていただければ一番いいかな。
ーーライブの楽しさは若い時から変わらない?
吾妻:学生の頃はブルースギターをうまくなりたいっていうのがもっと強かったかな。だんだんジャンプブルースに惹かれてって、歌の内容が面白いんだなと思い始めたのが、バンドを始めて5、6年した頃。で、日本語をやり始めて、その辺からちょっと変わっていきましたね。歌の内容を聞いてもらいたいっていうのが出てきたかな。音楽としても、別に俺のギターっていうよりも、みんなの演奏が噛み合った時に嬉しいっていうのは感じるようになりましたね。
ーーしかも、その“みんな”が学生時代からの友人ですからね。
吾妻:メンバーの誰かが「こんなに長くやってるとは思わなかった」って言ってたけど、俺もこんなに長いことやることになるとは本当に思わなかったからね。まぁ、たまさかですけど、他にはあまりない人間関係が築けて良かったです。とは言いつつ、みんな歳を取ってきますからね。古希がもう4人いて。ほぼずっと同じメンバーでやってきてる。どんどん人を変えて続けていくもんでもないような気もするし。難しいとこだね、それは。パッと見るとずっと昔から同じ顔が見えてるから。それはある意味、すごいことでもあるなと思います。
ーー結成45周年記念ライブを大成功に収めて、今後というのは何か見えましたか。
吾妻:うーん。見えないね。五里霧中ですね。まあ、健康第一かねぇ。それは思います、心底。あとは皆さん、本当にありがとうございますっていう感謝の心は持ちますよ、やっぱり。こんな大きな公演がガラガラじゃなくてよかったですよ。
ーーソールドアウト公演でしたよ。
吾妻:同級生にも売りましたから、山ほど(笑)。まぁ、健康なうちは、呼んでいただけるうちが華ですからね。今、他にこれといってしてないですから。週に何回勤めに行かなきゃいけないとかもうない。ライブとちょっとした原稿書きと他人様の録音ぐらいしかやってないから、動けて、声がかかるうちは行こうと思うところでございます。
ーー最後に改めて、映像作品になった本公演の見どころを教えてください。
吾妻:言っちゃあなんですけど、地上波(日本テレビ)の歌番組を撮ってるチームですから。それは安心して見ていただきたい。ほとんど知り合いですから。テレビ時代の後輩たち。映像もミックスもマスタリングも全部、彼らがやってるから。それはちょっと感慨深かったですね。
ーーやっと本当の感慨深いが出た!
吾妻:そうですね。そういう意味では、確かにちょっと感慨深いっちゃ、感慨深いです。あそこにいるカメラのやつは俺の後輩だ、とか。こんなことがあろうとはね。まあ、ありがたい話ですけど。出身者としては、他のアーティストの皆さんもぜひ使ってあげてくださいねって言いたくなりますね。
■リリース情報
『SPECIAL BANQUET』
発売中
SPECIAL BANQUET【初回生産限定盤】
¥13,200(税込)
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/mitsuyoshiazuma_theswingingboppers/discography/MHXL-185
SPECIAL BANQUET
¥7,700(税込)
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/mitsuyoshiazuma_theswingingboppers/discography/MHXL-188