歌声分析 Vol.20:BE:FIRST 全員がメインボーカルーーパフォーマンスを支える歌の進化、感情を繋ぐ表現の成熟

繊細なニュアンスとハイトーン、楽曲の景色を広げるアプローチ

 次にピックアップするのは「Smile Again」(2023年)。この曲でJUNONの高音域の真価に気がついた人も多いだろう。JUNONは〈僕が見てたそれは夢だったんだ〉から始まる歌い出しのブロックと、1番の〈Smile Again〉というサビを担当している。歌い出しではブレスを多く含ませ、繊細なニュアンスをまとわせる。サビでは息の成分を減らし、芯のあるハイトーンを響かせる。その声色の変化で、主人公に宿る希望や前向きな意志を歌声に託し、楽曲全体の景色を大きく広げてみせた。2番のサビで〈Smile Again〉を歌唱しているSHUNTOは、ブレスを一音一音コントロールしながら、クリアな高音域でロングトーンを放つ。このクリアでまっすぐなハイトーンこそ、この楽曲の肝であることを、サビを担う2人のボーカリストのアプローチが物語っている。

 次は、バラード「誰よりも」(2025年)。まずはSOTAにフォーカスしたい。SOTAは〈遠のいてくその距離に〉の〈遠のいてく〉の“く”、〈その距離に〉の“り”という異なる母音の言葉を、それぞれ母音である“U”と“I”の中間に寄せている。母音の響きを近づけることで、メロディを歌いながらも、どこかヒップホップを思わせる空気感を漂わせているのだ。その次の〈間に合うかは〉以降では、スイッチを切り替えたように芯のある歌声を聴かせている。また、〈さざ波や 海の景色さえも〉からのブロックを担当するRYUHEIは、ブレスを多く含んだエアリーな歌声で情景を描き出していく。息をたっぷりと含ませた響きは、さざ波が静かに寄せては返すような揺らぎを生み、曲の主人公の記憶や感情を穏やかに浮かび上がらせている。

 デビュー当時は、それぞれの個性が前へ出ることで楽曲に彩りを与えていた。歌い手が替わるたびに曲の表情も変わり、その変化そのものがBE:FIRSTらしさだった。しかし現在は、そのフェーズからさらに先へと進んでいるだろう。歌い手は替わっても、楽曲の中にいる“主人公”の輪郭はブレないのだ。6人のセンターボーカルが、ひとりの人間の感情をリレーするように歌い継いでいく。声のバトンを繋ぐことで感情が増幅し、聴き手の中に物語が鮮やかに立ち上がっていくのだ。

 彼らが今、歌で描こうとしているのは、主人公が生きる時間であり、その心の動きだ。2024年以降、クワイアを取り入れたり、バラードやメロディをより前面に押し出した楽曲が増えているのも、その表現をさらに深めるための必然だったのかもしれない。

 6つの異なる声で、ひとりの主人公の人生を歌い継ぐ――。それが、5年間の活動を通してBE:FIRSTがたどり着いたボーカル表現であり、彼らが“ボーカルグループ”として切り拓こうとしている、新しい物語なのではないだろうか。

BE:FIRST / 夢中 -Live Mix-

歌声分析 Vol.18:UNISON SQUARE GARDEN 斎藤宏介 軽やかなグルーヴ、完璧なピッチとリズム感 卓越した技術を紐解く

アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”と…

歌声分析 Vol.10:ゴスペラーズ 5人のメインボーカルが織りなす共鳴の極致 進化し続ける“声”を徹底解剖

アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。連載第10回目となる今…

関連記事