矢野顕子が『生きものたちへ』でたどり着いたポップスの真髄 ソロデビュー50年目の現在地、自然体の美学

細野晴臣とのデュエットに宿る“昭和ムード歌謡”のルーツ

──そしてもうひとり、「海男と瑠璃亜 feat. 細野晴臣」では細野晴臣さんがフィーチャーされています。細野さんは『さとがえるコンサート』への参加、YMOでの活動、そしてデビュー作『JAPANESE GIRL』へと遡る、まさに50周年を彩るにふさわしいゲストですね。

矢野:えっと、そうおっしゃっていただけるとは思いますが、細野さんの参加も実は50周年とは関係ないところから始まってまして。2018年に各曲ごとにいろいろな方と共演したアルバム『ふたりぼっちで行こう』を作ったんですが、その時に細野さんもご一緒していただければという話があったんですね。

──そうだったんですね。でも、その時は実現せず。

矢野:そうなんだけど、細野さんを想定した曲は作っていたんです。そういう経緯だったので、この曲は完全な“当て書き”。細野さんと一緒に歌うことが前提の曲。今度は実現いたしました(笑)。

矢野顕子、細野晴臣

──細野さんとデュエットする、それは矢野さん的にはどんなイメージだったんですか。

矢野:ヒントっていうか、アイデアの元は、フランク永井と松尾和子。

──「東京ナイト・クラブ」! そこですか(笑)。

矢野:あと、石原裕次郎と牧村旬子の「銀座の恋の物語」とか。いわゆる昭和ムード歌謡のデュエット曲。それがこうなりました。

──そもそも矢野さんとムード歌謡の接点がわかりにくいですが……。

矢野:大好きですよ、ムード歌謡。これは50年前どころかデビュー前の話ですが、赤坂とか、そういうところのクラブでピアノを弾く仕事をしていまして。そこでジャズとかスタンダードも弾くんだけど、時にはお客さんとホステスさんが歌うときの伴奏もするわけですね。「有楽町で逢いましょう」(フランク永井)とか、さんざん弾いてまいりましたが、それがね、なんていうか、いいんですよね。独特の文化っていうか。

──デビュー前から集ってきたメンバーだったり、宇宙だったり、ヒントはムード歌謡だったり、50周年プラスαの矢野顕子ストーリーに散りばめられたさまざまな因子が集まっていますね。

矢野:そこはやはりキャリアというものかとは思いますが、最初にも言った通り、できること、やりたいことを今の自然体でやったら、こうなった、ということかな。

──その自然体ということでいうと、詞の言葉、そしてサウンド的にも、全体にコンパクトなまとまりがあるのが印象的でした。

矢野:歌詞にしても音にしても、結局は“必要充分”っていうことですね。歌詞も短かったり、素晴らしいメンバーが集っていながら音数が少なかったり(笑)。今回、『みんなのうた』(NHK総合)でオンエアされた「THE RIVER」と「うちゅうから」の2曲のアレンジを北村蕗さんにお願いしていますが、音数のこととかの要望を伝えさせてもらいました。音数が多いものは、もともと苦手なんですよね。本当に必要なものが必要なところにあればいい。そうそう、昔に比べたら短い曲が書けるようになりました。これは奥田民生さんの曲から学んだことです。言いたいことをしっかり言い切るというか。

──音も歌詞も「足るを知る」ですね。

矢野:ちょうどいいよねっていう。全部がちょうどいい。サウンド的に言えば、基本的にこういう感じっていうのは、私が鼻歌、鼻ピアノで録ったデモをメンバーに渡すんですけれど、メンバー全員が同じ方向を向いているので「ここはこうしよう」「ここはちょっと引っ込もう」ということがすぐに決まってくる。しかも、さっきの「海男と瑠璃亜 feat. 細野晴臣」で言えば、林立夫のドラムに細野さんのベースが乗っかる瞬間とかね、世界でここにしかない、その2人にしか出せない音になるわけですから。

──「贅沢なちょうどよさ」ですね、それは。

矢野:ありがたいことです。そう考えると、サウンド作りの絶妙なパートナーがいるし、プレイヤー、ピアニストとしてのやりたいことはライブで実現できているからこそ、レコーディングするものに関しては「サウンドは大事だけど、やっぱり歌詞」って思えてきたところはあります。私がやりたいのは“歌”を作ることなんですね。“歌”でありたいし“ポップス”でありたい。だから歌詞は大切。そこが現在地ですね。

──そんな現在地に至った矢野さんですが、そこに到達するまでの思いがアルバムの最後の「LIFE TIME BASEBALL」に込められているように思います。過去にはデビュー直後の「行け柳田」、糸井重里さん作詞の「野球が好きだ」がありますが、“野球”でアルバムが締めくくられるのは、特に長年のファンには嬉しい限りだと思います。

矢野:それはこちらも嬉しい限りです(笑)。描きたかったのは、野球そのものというより“今の世界”、ですね。世界情勢、インターネット社会の恐ろしさも含めて。歌詞では「2点リードで逃げ切れると思ったら8回裏に2アウト満塁が訪れる」という部分がありますけど、上手くやっている、逃げ切れると思っても、何が起こるかわからない。だからこそ〈Stay cool in the whirlpool〉。それが自分にとっての“ちょうどいい”を保つことかもしれないですね。

■リリース情報
『生きものたちへ』
7月22日(水)リリース

・完全限定生産盤(CD+Blu-ray) VIZL-2521/9,000円(税込)
・通常盤(CD) VICL-66142/3,500円(税込)
・アナログ盤(LP) VIJL-60419/6,600円(税込)
・VICTOR ONLINE STORE限定セット(完全限定生産盤+シャンパングラス)/12,000円(税込)

『生きものたちへ』
『生きものたちへ』アナログ盤(LP)

<収録曲>
「生きものたちへ」「LIFETIME BASEBALL」「海男と瑠璃亜 feat. 細野晴臣」ほか全8曲

<Blu-ray収録内容>※完全限定生産盤のみ
『矢野顕子 さとがえるコンサート2025 feat. 小原礼・佐橋佳幸・林立夫〜30th Anniversary〜』
1. 春咲小紅
2. 夢のヒヨコ
3. てはつたえる→てつだえる
4. ニットキャップマン
5. YUMEDONO
6. 音楽はおくりもの
7. DO YOU LOVE ME?(愛されたいおれら)
8. PAPER DOLL
9. クリームシチュー
10. ひとつだけ
11. GREENFIELDS
12. 生きものたちへ
13. ラーメンたべたい

・AKIKO YANO THE RECORDING DOCUMENT 2025
※制作上の都合により一部内容変更の場合あり。

「海男と瑠璃亜 feat. 細野晴臣」
5月6日(水)先行配信
配信リンク:https://jvcmusic.lnk.to/UmioAndRuria

<特典情報>
VICTOR ONLINE STORE:https://victor-store.jp/artist/6866
・VICTOR ONLINE STORE限定セット(完全限定生産盤+シャンパングラス)
1. オリジナルポスター(A2サイズ)
2. 抽選で50名に直筆サイン&宛名を入れたアートカードをプレゼント

・完全限定生産盤(CD+ Blu-ray):オリジナルポスター(A2サイズ)
・アナログ盤(LP):オリジナルポスター(A2サイズ)
・通常盤(CD):オリジナルステッカー(各チェーン共通特典)

Amazon.co.jp:メガジャケ
上記以外のCDショップ:オリジナルステッカー(各チェーン共通特典)

■公演情報
『AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER』
出演:矢野顕子(Vo/p)、ウィル・リー(Ba)、クリス・パーカー(Dr)

<大阪公演>
会場:Billboard Live OSAKA
日時:
8月18日(火)<1st>16:30開場/17:30開演 <2nd>19:30開場/20:30開演
8月19日(水)<1st>16:30開場/17:30開演 <2nd>19:30開場/20:30開演

料金:
BOXシート 26,900円(税込・ペア販売)
S指定席 12,900円(税込)
R指定席 11,800円(税込)
カジュアルシート 11,300円(税込・1ドリンク付)

<東京公演>
会場:ブルーノート東京
日時:
8月21日(金)<1st>17:00開場/18:00開演 <2nd>19:45開場/20:30開演
8月23日(日)<1st>15:30開場/16:30開演 <2nd>18:30開場/19:30開演
8月24日(月)<1st>17:00開場/18:00開演 <2nd>19:45開場/20:30開演
8月26日(水)<1st>17:00開場/18:00開演 <2nd>19:45開場/20:30開演
8月27日(木)<1st>17:00開場/18:00開演 <2nd>19:45開場/20:30開演
料金:ミュージック・チャージ 12,000円(税込)

<North JAM Session meets BLUE NOTE TOKYO>
会場:札幌芸術の森 野外ステージ(北海道)
日時:8月30日(日)11:30開場/12:30開演(終演18:10予定)
料金:
SS席(椅子指定)12,000円(税込)※膝上に限り未就学児無料
S席(芝生自由)9,900円(税込)※保護者同伴に限り中学生以下無料(保護者1名につき3名まで)
S席(芝生自由)2日間共通券 14,400円(税込)※数量限定前売のみ
車椅子席
介助者なし 1,000円(税込)※車椅子1名のみ
介助者あり 13,000円(税込)※車椅子1名+介助者1名、数量限定
※AKIKO YANO TRIOでのイベント出演

■関連リンク
矢野顕子
ソロデビュー50周年スペシャルサイト:https://www.jvcmusic.co.jp/akikoyano50th/
オフィシャルサイト:https://www.akikoyano.com/
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