歌声分析 Vol.17:アイナ・ジ・エンド “変幻の質感”を持つ表現者、聴き手の心を鷲掴む声色と剥き出しの個性

難曲で光るリズム感、感情そのものを歌声に変換する技術

 「革命道中 - On The Way」(2025年)は、アニメ『ダンダダン』第2期(MBS/TBS系)オープニングテーマとして制作された楽曲だ。本曲では、ハスキーボイスのバリエーションが光る。冒頭の〈唸るぜ〉の“うな”だけで、アイナだとわかる無二の個性。冒頭から〈君に夢中〉までの3行で、喉の奥から押し出すような発声、強めに発音する子音、しゃくりを使った節回しと、アイナの個性の連発である。しかし次の2行の最後〈センチメンタルな恋〉は、クリアに発音し、次のブロックへ繋げるフックを作り出している。続く〈甘くぬかるんだ眼差し〉以降は、アイナが得意であろう低音~中低音域が続くが、喉の開閉をコントロールした多彩な母音のアプローチ、さらにフレーズ入り口で素早く音程を下からすくい上げるように歌ったりと、同じ声区で声音を変化させていく。リズミカルに言葉を刻みながらも、声のコントロールで起伏の到達点を変え、繰り返される似たメロディに異なる表情を吹き込んでいる手腕は、見事としか言いようがない。

アイナ・ジ・エンド / 革命道中 - On The Way [Official Music Video](TVアニメ『ダンダダン』第2期オープニングテーマ)

 そして「No Epilogue」(2026年)。『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』主題歌としてアイナ自身が書き下ろした本曲は、斬新な構成が際立つ1曲だ。リズムや譜割り、メロディも複雑で、フレーズ途中での転調もあれば、曲の途中でリズムパターンも変わる。さらに、ラップ文脈のブロックもある。この難曲でわかるのは、アイナの歌の根底には、しっかりしたリズム感があるということだ。このリズム感があるゆえ、たとえば意図的にメロディの入りや語尾のニュアンスを崩したとしても 、歌そのもののリズムが崩れることがなく、聴き手に違和感を残さない。本曲で、アイナは綺麗なファルセットを聴かせているが、その直後のブロックで子音のアタックを強くし、言葉を少し濁すように発音している。これによって歌声で相反する感情のコントラストと、感情の変遷がよくわかるのだ。ブレス、しゃくり、ラップ、ラテンのリズムなど、多彩な要素を歌で繋ぎ、楽曲の物語を描く。多くの感情をひとつの楽曲の中で行き来しながら、アイナは自身の歌声で楽曲にさらなる奥行きを与えている。

アイナ・ジ・エンド - No Epilogue [Official Music Video](『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』主題歌)

 アイナ・ジ・エンドは今、感情に応じて声そのものを変化させることで、歌詞だけでは伝えきれない心情を描くボーカリストになりつつある。ハスキーボイスで切実さを、ブレスのニュアンスでやるせなさを、しゃくりで感情のフックを作り、時にシャウトで感情を噴出させる。そして、母音の処理で感情の余韻を生み出す。これらを自在に組み合わせながら、感情そのものを歌声へと変換していく。だから彼女の歌は、人の心を鷲掴みにして強く揺さぶる。アイナ・ジ・エンドは、“感情そのもの”を聴かせる歌い手なのだ。

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