MOROHAにもヒグチアイにも“作れない”音楽集 天々高々だから歌える誰かの物語――初のアルバム『祝祭日』を聴いて

“本音”を歌う2人が天々高々をやる意味

 あふちゃんことMOROHAのアフロと、あいちゃんことヒグチアイが、曲の共作を始めて約5年後。MOROHAの活動休止を機に、2025年2月から表立って動き始めた天々高々は、言うまでもないかもしれないがアフロにとっても、ヒグチアイにとっても、普段の音楽活動ではできないことをやるためのユニットである。

天々高々 1stアルバム『祝祭日』全曲トレーラー

 ファンはご存知のように、MOROHAも、ヒグチアイも、己の暗部や弱点も含めた、というか主にそっち方向に寄った心の中の本音を――言い換えれば「俺」「私」を、言葉にして、音楽に乗せるタイプのクリエイターである。ヒグチは、タイアップなどのお題ありきの楽曲の場合、主人公やストーリーを設定して歌詞を書く時もあるが、軸は本音型だし、アフロはほとんどが本音型だと言っていい。

 自分の音楽はそういうものだと思っているし、それがやりたいことだという確信もある。でも、その「自分」とは別の場所で、そうではない歌も書きたい。主人公ありき、物語ありき、あるいは設定ありきで、「自分」ではない「あなた」や「誰か」を音楽にしたい。状況や環境や年齢などが自分とは違う、いろんな人のいろんな生活を、人生を、描いてみたい――というのが、天々高々で曲を書き始めた時の目的だったが、活動が本格化し、ライブ活動を行っていくうちに、もうひとつ、普段の自分たちにはできないが、天々高々ならできることがあったことに、ふたりは気づくようになったのではないだろうか。

 それは何か。“ライブが楽しい”ということだ。みんなでわいわい盛り上がれる、お祭りのようなステージをやれる、ということである。MOROHAもヒグチアイも、そういうことを求めて聴く音楽ではない。一対一でその音楽と対峙して、作り手の核心と向き合って、「で、おまえはどうなんだ」ということを突きつけられるために聴く音楽だし、行くライブである。よって、アフロも、ヒグチも、いわゆる音楽フェスとは別の場所で勝ち上がって来ざるを得なかったわけだが、ここに来て本格始動した天々高々は、とにかくフェスに合うし、出ると喜ばれるのである。つまり、そのフィールドで勝ち上がっていく可能性が見えるのだ。

天々高々「5959」Official Live Video (Live at Spotify O-EAST 2025.12.27)

 例えば昨年11月8日、立川ステージガーデンで開催された『Brewin’ Groove Festival』に出演した時。このフェスの趣旨(クラフトビールを片手に音楽を楽しめるフェスだった)と3rdシングル「5959」の親和性が極めて高い、ということもあって、同曲で会場は大盛り上がりに。この曲のことも、このふたりのことも知らないであろう初見の参加者も多数巻き込み、サビの〈5959〉で大コールが響いた。

 さらに今年5月5日、大阪・泉大津フェニックスの野外フェス『OTODAMA’26』に出演した時。サウンドチェック時、すでに前方に集まっていた観客に、念入りに「5959」コールを教えた上でライブをスタート。セットリスト中盤のこの曲のサビで大コールが起きる中、電飾で光る竜が現れてフロアを練り歩くという演出も加わり、場の空気をさらにハイにした。が、曲が終わると「なんか物足りない感じ? ここで振る舞い酒がございます!」(あふちゃん)と、スタッフがビールを配り、それを求める多数の観客がテントにやって来る中で、もう1回頭から「5959」を始め、ステージ袖で観ていたキュウソネコカミのヨコタシンノスケを無理矢理ステージにひっぱり出し、オーディエンスは1回目以上に狂喜。終わってから、持ち時間がまだ5分あることを知らされると、3回目に突入し、今度はキュウソネコカミのヨコタとヤマサキセイヤのふたりをステージに呼び込み、1回目よりも2回目よりもフロアを沸騰させた。

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