レトロリロン、ワンマンツアーで描き切った『コレクションアローン』の本当の願い 孤独と肯定へ向かう強靭な現在地

 レトロリロンの1stフルアルバム『コレクションアローン』を携えた『RETRORIRON 1st Full Album「コレクションアローン」RELEASE ONE-MAN TOUR 2026』は、作品そのものが抱えていた孤独や揺らぎを、ライブという場でたしかな熱へと変えていく時間だった。とりわけ4月18日の東京公演では、そのことが終始はっきりと伝わってきた。個人的な感情から生まれたはずの楽曲が、ステージの上で4人の演奏によって広がり、そこに集まった観客の声や手拍子、合唱と結びつくことで、ひとりのものではない景色へと変わっていく――。ツアーを通して積み重ねてきたバンドの現在地が、この日のライブにはくっきりと刻まれていた。

 開演後、最初に響いたのは涼音(Vo/Ag)の「レトロリロンです。どうぞよろしく」という簡潔な挨拶。そのまま雪崩れ込んだ「リコンティニュー」で、会場の温度は一気に引き上げられる。曲中には涼音の「声出せ、東京!」という煽りも飛び出し、フロアの熱気は早くも最高潮に近づいていった。続く「ワンタイムエピローグ」は、ドラムを起点に進んでいく構成が印象的で、涼音の自由自在な動きが楽曲の高揚感をさらに押し広げる。「ラストハンチ」では一転して、その歌の繊細な魅力が前に出る。熱量で押し切るだけではなく、微細な感情の揺れをきちんと聴かせることができる。冒頭の3曲だけで、レトロリロンというバンドの振れ幅が鮮やかに示されていた。

涼音(Vo/Ag)

 最初のMCでは、涼音がささやくように「こんばんは」と挨拶し、会場は一気に和やかな空気に包まれた。香川公演でステージから落ちたこと、福岡で大滑りしたこと、石川で兼六園を訪れたことなど、ツアー中のエピソードを軽やかに振り返る場面からは、各地をまわってきた時間そのものがこのツアーの大切な一部になっていることが伝わってきた。こうしたトークの自然体な雰囲気もまた、レトロリロンのライブの魅力だろう。

 「それでも生きていたい」ではムーディーな空気が広がり、ライブは中盤に向けて深みを増していく。「Document」では間奏で涼音の合図に合わせて観客がジャンプし、フロアの一体感がぐっと高まった。続く「FAQ」では、「Everybody clap your hands!」という掛け声とともに、会場全体でリズムを共有していく。「DND」のドラムソロの場面では、涼音が永山タイキ(Dr)の横まで寄って煽る一幕も。バンドのダイナミズムを視覚的にも伝えるシーンであり、4人の距離感や信頼関係がよく見えた場面でもあった。

miri(Key)

 この日のライブでひときわ印象深かったのは、演奏そのものの熱量と、そこに差し込まれる遊び心のバランスだ。昨年のツアーから恒例になっている“デンジャラスゾーン”も健在で、あいうえお作文のコーナーでは、ファンの声をもとに「すずめ」「レトロ」といったお題が飛び出す。シリアスな楽曲群のなかにこうしたコーナーが置かれることで、ライブ全体の呼吸が整えられていく。張り詰めた時間をただ続けるのではなく、観客を巻き込みながら起伏を作っていく構成力も、今のレトロリロンの強さなのだと思う。

飯沼一暁(Ba)

 後半に入ると、「カテゴライズ」「ふたり」と続き、「僕だけの矛盾」では椅子に腰掛けて歌う場面が用意された。派手な演出を削ぎ落とし、声そのものをじっくり聴かせるこの曲では、涼音の表現力がひときわ際立つ。息遣いや抑揚、言葉の置き方までを含めて、歌そのものを堪能できる時間だ。「アンバランスブレンド」では、冒頭の「Oh」を観客と合唱。ここまで積み重ねてきたライブの熱が、シンプルなシンガロングとして会場にきれいに立ち上がっていたのが印象的だった。

永山タイキ(Dr)

 この日のハイライトのひとつとなったのが、涼音のMCだろう。6年前にはまだ遠い先に思えていた景色が、今こうして目の前にあること。ずっとひとりだと思って生きてきたこと。それでも4人で音を鳴らし、観客が足を運び、スタッフも含めてこの日を作っているなかで、自分の人生が自分だけのものではなくなっていく感覚を覚えたこと。そうした思いが、率直な言葉で語られていく。なかでも、「自分の人生が自分だけのものじゃなくなっていくような、そんな感じが最近はしてます」という言葉は、この日のライブそのものを言い表しているようだった。

 そのうえで、「ここで満足したくない」と続ける姿には、このバンドがまだまだ先へ進もうとしていることがはっきり表れていた。孤独を起点に書かれた音楽が、誰かの支えになり、さらにその先の欲望や野心を呼び起こしていく。その循環こそが、今のレトロリロンを前に進めている原動力なのだろう。

 終盤の「咒」では、最小限のライティングのなかで、後光のような光に照らされながら4人の姿が浮かび上がる。その研ぎ澄まされた演出が、楽曲の持つ緊張感をいっそう際立たせていた。そこからクライマックスへ向かう流れは実に鮮やかで、感情の温度を引き上げたまま本編を締めくくっていく。

 アンコールでは、4月8日に配信リリースされた最新曲「エゴ」が初披露された。すでにTVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。Season2』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマとしても強い支持を集めている新曲を、このタイミングで届けたことにも意味があったはず。ツアーの到達点であると同時に、その先のモードを示す一曲として、この日のライブに新しい風を吹き込んでいた。さらに「ヘッドライナー」「TOMODACHI」と続き、客席にはバルーンが投げ込まれる。祝祭感に満ちたラストだったが、ただ楽しいだけでは終わらない。この日を通して浮かび上がっていたのは、ひとりで抱えてきた感情を、音楽を通して誰かと分かち合おうとする意志そのものだった。

 涼音の「あなたにとって必要になった時に、また会いにきてください。僕はそれだけでずっと歌えるよ」という言葉は、この日のライブ全体を象徴していたように思う。レトロリロンの音楽は、孤独を消してしまうものではない。孤独があることを認めたうえで、それでも誰かと同じ時間を生きていけるのだと教えてくれる。『コレクションアローン』というアルバムがライブのなかで獲得したのは、まさにその感覚だった。東京で鳴ったこの日の音は、4人がこれから先、さらに大きな場所へ進んでいくためのたしかな起点になったはずだ。

■ツアー情報
『RETRORIRON Zepp Tour 2026』
10月15日(木)神奈川・KT Zepp Yokohama
OPEN 18:00/START 19:00

10月17日(土)名古屋・Zepp Nagoya
OPEN 16:30/START 17:30

10月23日(金)札幌・Zepp Sapporo
OPEN 18:00/START 19:00

10月31日(土)福岡・Zepp Fukuoka
OPEN 16:30/START 17:30

11月3日(火・祝)大阪・Zepp Namba
OPEN 16:30/START 17:30

11月7日(土)仙台・SENDAI GIGS
OPEN 16:30/START 17:30

12月12日(土)東京・Zepp Haneda(TOKYO)【SPECIAL EDITION】
OPEN 16:30/START 17:30

<FC最速先行抽選>
4月18日(土)20:00〜4月23日(木)23:59

▼e+1次先行抽選
4月26日(日)12:00〜5月25日(月)23:59

■リリース情報
1st Full Album『コレクションアローン』
発売中

配信URL:https://lnk.to/retroriron_collectionalone
購入URL:https://lnk.to/retroriron_cacd

・初回限定盤(CD+Blu-ray):5,000円(tax in)
・通常盤(CD):2,500円(tax in)

<CD Tracks>
01. リコンティニュー 
02. FAQ 
03. ふたり 
04. ラストハンチ 
05. UNITY 
06. 僕だけの矛盾 
07. 咒 
08. バースデイ

<Blu-ray>
「RETRORIRON 3rd EP『アナザーダイバーシティ』RELEASE ONEMAN TOUR 2025」2025年4月6日 EX THEATER ROPPONGI
※全16曲収録

レトロリロン オフィシャルサイト:https://retroriron.com/
X:https://x.com/retroriron
Instagram:https://www.instagram.com/retroriron/
TikTok:https://www.tiktok.com/@retroriron
YouTube:https://www.youtube.com/@retroriron

関連記事