超難読バンド・ผ้าอ้อม99999「未来から見たら教典になるかも」 結成、ルーツ、ミームへの偏愛が生む“Junk Pop”を語る
東京を拠点に活動する4人組バンド・ผ้าอ้อม99999(パーオームキュウキュウキュウキュウキュウ)。バンド名からも只者ではない雰囲気が漂っているが、真に驚愕するのはその音楽だ。ネットミーム、サブカルチャー由来の多彩な素材をサンプリングし、破壊的にコラージュ。まさに“カオス”と呼ぶしかないサウンドながら、頭にこびり付くポップさとダンスミュージックの快楽性を合わせ持つ、唯一無二の個性が輝いている。
リアルサウンドでは、その謎すぎる正体に迫るべくアプローチ。バンド結成の首謀者であるアブラ(Ba/machine)とCORE-TEX(Ba/machine)へのインタビューが実現した。インターネットカルチャーへの愛が起点となったバンドの結成秘話、『枕草子』にもつながる活動姿勢、違うようで共通するふたりの大きな夢まで幅広く聞くことができた。(編集部)
「アラビア語案もあった」――奇妙なバンド名の由来とは
――ネットでの反響もかなりすごいですが、リキッドルームで開催された『UNDERCITY』でもお客さんがぎゅうぎゅうで。ご自身では、現状をどう受け止めていますか。
アブラ:4カ月連続で出したシングルで多くの反応をいただけて。今までそういうことがほとんどなかったので、恥ずかしながら嬉しいです。メンバー全員で驚きながら喜んでいます。
CORE-TEX:「忙忙忙ー忙・忙ー忙忙」のシングルとMVを出して以降、海外からのコメントがわっと増えたりして。あと、あのちゃんの『オールナイトニッポン』(『あののオールナイトニッポン0』/ニッポン放送)で流れたのが、めちゃくちゃ嬉しかったです。
――なんでこのタイミングでこれだけの反響があったと思いますか?
アブラ:自分たちで探した方との出会いがあり、MVやアートワークをお願いして。いいMVを出てもらえたのが、いちばん大きいのかなと思います。自信を持って出した作品ではあるんですが、MVやアートワークの力が効いたんじゃないかなと。
――バンド名も目をひくミステリアスさがありますが、ผ้าอ้อม99999の由来を聞かせてもらえますか?
アブラ:最初はバンドコンテスト(『マイナビ 閃光ライオット2023 produced by SCHOOL OF LOCK!』)に出るために組んだバンドだったんですけど、一次審査が動画や音源で審査する形式だったので、普通のバンド名だと注目してもらえないだろうなと思って。だったらインパクト重視でタイ語にしよう、と。アラビア語案もあったんですけど、いずれにせよ特殊な文字列にすることで目を引こうという考えでした。だから、バンド名に特に意味はなくて、インパクト重視で決めました。
――目につくという意味では、かなり成功していますよね。
アブラ:ただ、デメリットの方が大きくて。
――デメリット?
アブラ:文字の打ち方がわからないから、コピペする以外、誰も発信できないんです。だから、口コミで広まりにくい。そもそも楽曲にも大きな意味やメッセージを持たせていないので、「バンド名も意味がなくていいか」という感覚で決めたのがいけないんですけど。
――ผ้าอ้อมは“おむつ”という単語なんですよね。ここにも意味はない?
アブラ:“ผ้าอ้อม”は、文字の見栄えがいいなと思ってピックアップしたんですけど、意味は本当に何もなくて。あまり真面目に見られたくないという気持ちがあるので、“真心”とか“夢”みたいな名前はちょっと恥ずかしくて。“おむつ”だったら、まあいいかと。
――99999の方は?
アブラ:数字が多ければ多いほど強そうだなって。ゲームでレベルアップしまくると、技のダメージがカンスト(カウンターストップ)するじゃないですか。ああいう描写がすごく好きで、“最強”みたいな意味合いで“99999”をくっつけた感じです。
――メンバーの関係性はどういうものだったんですか。
アブラ:もともと大学の同じ軽音楽サークルの仲間で。コピーしかしないサークルだったんですけど、そこの先輩や後輩を僕が誘いました。
――当時はみんなオリジナルはやっていなかった?
アブラ:誰もオリジナルを作ったことがなくて、僕も含めてコピーバンドだけでした。『閃光ライオット』は本来10代限定のオーディションなんですけど、僕らが出た2023年はコロナ禍後で22歳まで出られて。それで慌てて早生まれの人とかボーダーギリの人を探しました。
――アブラさんとCORE-TEXさんも同じサークルにいたけど、一緒にバンドは組んだことがなかった?
アブラ:そうです。ライブごとにコピーするバンドを変えるので、組んでは解散してを繰り返すんですけど、お互いベース担当だったので一緒のバンドになることはなくて。このバンドで初めて組みました。
――ちなみに、それぞれどんなバンドをコピーしていたんですか。
アブラ:電子音楽を交えたものはコピーが難しいのもあって、あまりやってなくて。僕はZAZEN BOYSとかオルタナっぽいものをやってましたね。あとMop of Headとか。
CORE-TEX:私はElephant Gymとか、ずっとインストをコピーしていて。あとハヌマーンもやっていました。
アブラ:今日いないドラムの石山(潤)さんは、スピッツをやってました。
――ルーツもバラバラですね。最初から今のような音楽性は確立していたんですか?
アブラ:今もあまり確立できていないかもですが、最初はもっとバンドバンドしていたかもしれないです。ちゃんとしたパソコンも持ってなかったので、サンプラーを中古で買って音を取り込んで、再生ボタンを押して無理やり合わせるみたいなことをしていましたね。
――現在のようなベースミュージック的音楽性に向かった理由は?
アブラ:『閃光ライオット』で頭ひとつ抜けるには、誰もやっていないジャンルじゃないとダメだと思って。もともと電子音楽は好きだったんですけど、『閃光ライオット』の場ではあまり見たことがなかったので。ちょっと邪な考えですけど、そういう戦略もありました。
――やるからには優勝を狙っていたんですね。
アブラ:本当にそう。賞金の100万円が欲しくて(笑)。決勝まで行けなかったんですけど、動画がネットに上がって、「頭悪すぎる」「やばすぎる」みたいなコメントをもらって。嬉しくてちょっと調子に乗ってしまい、それで続けようとなりました。
――おふたりともベースをやっていたとおっしゃっていましたが、バンド内でのそれぞれの担当はどういう経緯で決まっていったんですか。
アブラ:最初は僕がベースをやっていて、彼女がサンプラーやマシン系を触っていました。でも、途中から曲ごとに入れ替わったら面白いかもとなり、だんだん曖昧になっていって、今は完全に逆になりました。気づいたらそうなっていた感じで。
――この音楽性を生ベース/生ドラムでやるためには、かなりのチューンナップの時間が必要だったんじゃないですか。
アブラ:「ベースらしくないフレーズにしたい」という考えはあって、スタジオでアレンジを話し合いながら調整していきました。ルーツとして好きだったのが、DALLJUB STEP CLUBやgatoとかで。生ベース/生ドラムがいて、テクノっぽいことをやっているバンドがすでにいたので、「自分たちにもできるんじゃないか」と。