華乃×東京真中 対談:「トキメキ詐欺」の軸となったギャルマインド、『Echoes Baa』を経たシンガーとしての学び
今年新たにソニー・ミュージックエンタテインメント内のレーベル・Echoes所属となったソロアーティスト 華乃の1st EP『トキメキ詐欺』が2026年4月15日にリリースされた。
今作はデビュー曲「お気の毒様ね。」ほか、Z世代ならではの恋愛観をさまざまな角度からパッケージングした5曲が収録された、“令和のラブソングシンガー・華乃”の名刺代わりとも呼べる1枚だ。収録曲はすべて別々のクリエイターからの提供作となり、その点でも華乃の多彩な引き出しを堪能できる作品ともなっている。
そんな楽曲のうち、表題曲「トキメキ詐欺」を手がけたのが、現在VOCALOIDシーンでも時代を彩るニューカマーとして熱い注目を集めるボカロP・東京真中である。『The VOCALOID Collection 2025夏』(以下、ボカコレ)にてルーキー部門3位を獲得した「ドゥーマー」、そして『ボカコレ2026冬』にてTOP100部門2位を獲得した「ブレインロット」は、現在どちらもYouTubeにて1,000万回再生を突破。その人気は各種SNSのみならず、海外まで届きつつあるスマッシュヒット作へと成長している。
今回EP発売に際し、この「トキメキ詐欺」を発端とした華乃×東京真中という新進気鋭のアーティスト両名による対談が実現。令和の今を生きるZ世代にアンテナを張り、敏感に世代特有のムードをキャッチアップする二人は、互いにどんな認識で今回の制作へと向き合ったのか。前半の対談パート、そして後半の華乃単独取材から今作の聴き所についても迫ってみたいと思う。(曽我美なつめ)
東京真中×華乃 対談:ギャルの強さと繊細さを両立した「トキメキ詐欺」制作秘話
ーー華乃さんは元々、東京真中さんのことを何がきっかけで知られたんでしょう。
華乃:確か、TikTokで流れてきた「ドゥーマー」だと思います。今は「ブレインロット」もめちゃくちゃ人気ですよね。
ーー「ブレインロット」もSNSで踊ってみた動画を投稿されてましたよね。
華乃:映像のダンスはもちろんですが、楽曲も超素敵だなって。お気に入りすぎて2回ぐらい投稿してます(笑)。私の投稿動画もありがたいことにかなり反応が良くて、「ブレインロット」人気が今キテるのをものすごく実感しますね。
@kanyoring 東京真中さんの新曲『ブレインロット』好きすぎて踊ってみた🧠🕺 #東京真中 #ブレインロット #踊ってみた #オススメ #重音テト @東京真中 ♬ オリジナル楽曲 - 東京真中
ーーそんな中で、今回東京真中さんにはどんな経緯で楽曲制作を依頼したんですか?
華乃:今回のEPを作るなかで、収録曲の制作をお願いする方の候補に東京真中さんのお名前があったんです。入口こそさっき挙げた2曲でしたが、それをきっかけにほかの曲もいろいろ聴かせていただいて。これまでの作品も素敵なものばかりだったので、「ぜひお願いしたい!」と今回依頼させていただきました。
ーー重ねて、東京真中さんが華乃さんを知られたきっかけは何でしたか?
東京真中:私はMAISONdesでしたね。プロジェクト自体も活動初期からずっと動向を追ってたんですけど、去年華乃さんが「ならない日々」って楽曲に参加されていて。確かそれが最初だったと思います。
ーーその時の第一印象から今回の楽曲提供にあたって、華乃さんへはどんなイメージを持たれていましたか?
東京真中:元々の宣材写真がイケイケ可愛いギャルな感じだったので(笑)、お会いする前もめちゃくちゃ可愛らしい方なんだろうな、と思ってたんです。ただ実際にお話ししてみたら、可愛さプラス不思議な雰囲気があるというか。いい意味で、第一印象とはちょっとイメージが変わりましたね。
ーーイケイケつよつよなギャルよりは、少しほんわかした印象を受けた感じでしょうか。
東京真中:でも、ギャルグループにこういう子一人いて欲しいなって感じもしますよね(笑)。リーダーシップを発揮するギャルや、喧嘩が強いギャルもいる中で、ちょっと不思議な雰囲気のギャルもいる、みたいな。
ーーなるほど。一口にギャルと言っても、いろんなギャルがいますからね(笑)。当初華乃さん側から提供のお話をいただいた際、率直にどう思われましたか?
東京真中:まず驚きましたね。MAISONdesもずっとチェックしてましたし、華乃さんもMAISONdesと同じEchoes所属になるというお話も聞きまして。自分が一方的に見ていた方と一緒にお仕事ができる日がくるなんて、と嬉しくなりました。それに、華乃さんはきっとこれからどんどん知名度も広がっていく方で。立ち上げというと少し変ですが、そんな方の活動初期の段階でこうしてお声がけいただけるのはめちゃくちゃ光栄だな、とも思いました。私自身もまだまだ駆け出しのクリエイターですが、全力を尽くしていいものを作らなきゃな、と。
ーーそんな東京真中さんに、華乃さんはどんな印象を抱かれましたか?
華乃:作られている楽曲からは、めっちゃイケてる雰囲気の中にも不穏さ、ミステリアスさ、みたいなものを感じてて。ものすごく天才肌な方というか、THE・アーティストな感じの方をイメージしてたんです。「……ウッス」みたいな(笑)。でもお会いしてみるとめちゃくちゃ好青年で、いい意味で「普通の人だ~!」って思いましたね。裏側で暗躍するフィクサー的な人を想像していたのでめっちゃ優しくて、楽しく一緒にお話ししてくれたのでとても嬉しかったです。勝手なイメージなんですけど、音楽を作られる方っていい意味でクセのある方が多いのかなって。
東京真中:ああ~、職人気質というか。でもちょっとわかりますね。確かにボカロPってある意味変な人も多いですし、「……ウッス」みたいなボカロPの友達も結構いますよ(笑)。
華乃:あと、お会いした時に被ってらっしゃった猫耳の帽子がすごく可愛くて。
東京真中:コレですね(持ってきた帽子を見せながら)。
華乃:そうですそうです(笑)! 私も衣装のコンセプトで毎回帽子を用意してもらうので、東京真中さんのキャラクター感ある帽子にちょっと親近感を抱いてました。
東京真中:この帽子を作ったのが神そんにゃちゃんっていうクリエイターで、最近だと宝鐘マリンさんのMV制作をお手伝いしてたり、『つみみじかん 狂オシイホド愛シテル』ってゲームの主題歌MVも担当してるんですけど。わりとご本人もギャルギャルしい感じなんですよ(笑)。個人的にもわりと好きなんですよね、ギャルというキャラクター像的なものは。
華乃:でも確かにギャルっぽいなって思いました、その帽子を見た時に。
東京真中:ギャルの“陽のパワー”をもらってますね(笑)。
ーーお互いの印象も更新しつつ、楽曲制作の際は華乃さん側から何かオーダーなどもあったんでしょうか。
東京真中:ギャルの明るさと恋する乙女の繊細さ、その二面性を見せたいという話をいただいた気がします。強気な部分と優しい部分、みたいな。それを表現するにはどうしたらいいか考えた結果、華乃さんご本人にちょっとお話を聞かせてください、とお願いしました。僕の制作手法的に、フィクションで物語を作ることも全然できたんですけど。でも、せっかくご一緒するなら華乃さんのキャラクターを知って、それを楽曲に反映したほうがライブなどでの演奏時も、華乃さんの言葉としてお客さんに届くんじゃないかと思ったので。いろいろインタビューさせていただきましたよね、1時間か1時間半ぐらいだったかな。
華乃:そうですね。かなり恋バナさせてもらいましたね。
ーーそこではどんなお話が挙がったんですか?
華乃:なんだろう、男の人に対して思うこととか……なんかもう、全部を話した気がします(笑)。
東京真中:うん、今までの恋とかね。あとは周りの子たちの恋愛事情とか。
華乃:同じ世代の子たちの恋愛の話とかもしましたね。
ーーその中から東京真中さんは、曲を作る際にどの部分をフックアップしようと思われたんですか?
東京真中:取り上げたい所はいっぱいありましたね(笑)。むしろたくさんありすぎるし、しかも全部が面白くて、どうしようかなと思ったんですよ。ただ結局、エピソードのどれか一つに的を絞るよりは、お話の全体像から見えた華乃さんのキャラクター像プラス、そこに自分が体験した恋や、昔付き合ってた人にこんなこと言われたな、みたいな要素を混ぜ合わせて制作を進めていきました。
ーー併せて制作の際、特にどんな部分に注力されたんでしょう。
東京真中:私の音楽性自体もそうですけど、サウンド面に関しては若干海外っぽさもありつつ、歌メロに関しては日本の音楽に沿うものにしようと思って作りました。というのも、これまでのJ-POPにもギャル的な恋って、ある種普遍的にずっとあったテーマだと思うんです。安室奈美恵さんや倖田來未さん、西野カナさんみたいな文脈というか。でも、ただそれを踏襲するのではなく、これからの令和ならではのギャル観、恋愛観を表現したかった。その点でサウンド面では今の海外っぽさを取り入れて、新しい令和の恋するギャルを作れたら、と考えたんです。
歌詞に関しては先ほども少し触れた通り、昔自分がお付き合いしていた人に言われたことなどを入れて、リアルさを出すことを目指しました。あとは元々オファーでももらっていた、ギャル感と繊細さ、強さと優しさのバランス感ですね。華乃さんの印象として“不思議な雰囲気のギャル”ではあるんですけど、お話しをしていく中ですごく自分の考えを言葉にできる芯のある人だな、とも思って。その辺りも取り入れつつ、恋する乙女ならではの繊細さも入れつつ、というバランス感はかなり意識しました。
ーー苦労された部分や大変だったことなどはありましたか?
東京真中:いや、あまりなかったですね。私もいわゆるギャルマインドには共感できる部分も多いですし、自分の中にも近い価値観があるというか。逆に華乃さんはどうでしたか?
華乃:私も歌詞がすごくわかりやすかったですし、自分でも表現しやすいな、と思ったりして。音域もすごく歌いやすかったです。
東京真中:ああ、よかった! ありがとうございます。
華乃:今回、実はレコーディングの際にアーティストのはしメロさんがボーカルディレクションをしてくださったんですよ。同じ曲でも自分の歌い方や雰囲気と比べて、はしメロさんが歌うともう全然違う曲に聴こえるんです。「やばい! 素敵すぎる!」って思っちゃって。なのでレコーディングまでに、はしメロさんの歌い方や癖をめっちゃ研究して。完全に習得できてはないですけど、真似することでちょっとは近づけたかな、と。自分的にも新しい挑戦というか、今までなかった歌の引き出しを開くことができたんじゃないかと思います。
ーーレコーディングの際ははしメロさんと、東京真中さんも立ち会われていた形ですか?
華乃:そうですね。3人で作っていった感じでした。
東京真中:華乃さんに聞こえてたかはわからないですけど、「ここお願いします」ってテイクを何回か録る中で、はしメロさんも「めっちゃ可愛い!」「ココ最高!」みたいな感じで言ってましたよ(笑)。すごく反応がよくて。
華乃:えっ、ホントですか……! 嬉しい~!
ーーはしメロさんも大絶賛だったんですね。すでにEPの発売に先行して楽曲はリリースされていますが、感想などもすでにお二人には届いていますでしょうか。
華乃:「サビがすごく耳に残る」ってお声をよくもらいますね。SNSの感想だけじゃなく身近な友達もみんな聴いてくれてて、「めっちゃいいね!」って言ってもらえるのですごい嬉しくて。
東京真中:あ~よかった、すごく嬉しい。僕も直近出した「ブレインロット」とも、まただいぶ違った色の曲になったと言いますか。根底は近しい部分もあるんですけどね、音使いとか。でも「ブレインロット」が“闇”だとすると、「トキメキ詐欺」は“闇”もありつつ、かわいさやキュートさ、ポップなテイストが強めなので、その幅広さに驚いてくださるリスナーさんも結構いる印象です。こんなのもできるの? みたいな。
華乃:先日の『Echoes Baa 2026』でもこの曲を披露したんですが、会場の雰囲気もめっちゃ温かくって。私のステージ初見でも手を挙げてノってくださる人も多かったので、「トキメキ詐欺」で「跳べますかー!?」って客席煽ったら皆さんめっちゃ跳んでくれたんですよ。その光景を見て、ちょっとクラブの雰囲気を感じたんですよね。ライブでもこういう風に、みんなで跳んだりノれたりする曲が増えてすごい嬉しくて。今後もめちゃくちゃライブ映えする曲になるだろうな、って思ったんです。
東京真中:よかったです。実は自分もそういう部分、結構気にしてたんですよね。初めて曲を聴いた時に一発でノれるか、すぐに歌詞を理解できるかって、今の音楽では特に大事だと考えてるので。今のお話を聞いて、それが今回上手くできたんだなって改めて思いました。嬉しいなあ。
ーーリアルの現場でも、今後まだまだ愛される曲になりそうですね。
東京真中:そうですね。嬉しい時やムカつくことがあった時も、心にギャルがいれば人生楽しくなるので(笑)。私の心にも小さいギャルがいますし、華乃さんの音楽を通じて、皆さんの心のギャルも目覚めてくれると嬉しいですね。
華乃:「トキメキ詐欺」は、同世代の女子にも通ずるリアルさがあるというか。恋愛でモヤモヤしたことがある人には特に刺さる歌詞だと思うので、ぜひ曲を聴いてそのモヤモヤを吹き飛ばしてほしいです。あとは曲自体も可愛いですし、実はダンスの振り付けも作ったりしてるので。一緒に踊ってくれると嬉しいです!