wapiti「老若男女に愛されるバンドになりたい」 自信みなぎる未来への希望、最新ツアーレポ

 4人組バンド・wapitiが開催したライブツアー『wapiti Live Tour 2026 〜シンリョク〜』の東京公演は、彼らの現在地と、その先に広がる可能性を感じ取れる、まさに沸騰寸前という言葉がしっくりくる一夜だった――。

 1曲目「空風」で幕を開けたステージは、ボーカルの織田龍紀(Vo)の伸びやかな歌声が会場にすっと広がり、観客の意識を一気に引き寄せる。その声には空気を解放する力がある。場の温度を静かに引き上げていくような感覚だ。続く「ambitious」へ移るタイミングで、織田が「渋谷、会いたかったぜ!」と叫べば、待ちわびていた歓声が爆発。ここで一気にライブのギアが上がった。

 次の「恋忘」では自然発生的に手拍子が起こり、フロアは一体感に包まれる。楽曲の持つ親しみやすさと、メンバーの演奏の確かさが観客を巻き込んでいく。演奏後、織田は「こんなに集まってくれて嬉しい。たくさん今日は顔が見えます」と語りかける。その言葉どおり、この日のフロアは満員御礼のソールドアウトだった。

 「守唄」は、「お守りになるような歌」と紹介され披露された。吉村瑠莉(Pf)の繊細なピアノが静謐な空間を描き、織田が抱えるアコースティックギターが温もりを添える。さらにハーマン・チャン(Vn)のヴァイオリンが柔らかく重なり、音像に奥行きを与える。クラシック、J-POP、C-POPといったそれぞれのルーツが自然に溶け合い、バンド独自の響きへと昇華されているのが印象的だ。

織田龍紀(Vo)

 そこから一転、「ノクターン」ではグルーヴィーなリズムが前面に出る。ポップロック的な顔が目立つバンドでありながら、こうしたシティポップ然とした洗練も難なく乗りこなすあたりに、彼らの懐の深さが見える。工藤健介(Dr)のドラミングは、正確無比でありながらエネルギッシュ。下支えに徹するだけでなく、楽曲を内側から突き上げる推進力を持っている。サポートのギターとベースも安定感とパワーを兼ね備え、サウンドに厚みを加えていく。続く「OREO」を経て、「鬼さんこちら」では、再び会場の熱が上昇。ヴァイオリンがメロディを牽引し、楽曲の躍動感を増幅。バンドとフロアの距離がぐっと縮まったのを感じた。

工藤健介(Dr)
吉村瑠莉(Pf)
ハーマン・チャン(Vn.)

 中盤、織田によるピアノ弾き語りで「夜に、」が披露される。美しいピアノの音色と、抜けのいいボーカルが不思議なほどにマッチし、エモーショナルな余韻を残す。彼の表現力の幅広さを証明する場面でもあった。

 メンバーがステージに戻り、工藤がカホンに腰をかけてアコースティック編成へ。ここではツアーの思い出を語るトークが挟まれ、名古屋で織田が差し入れの天むすを1日に20個食べたというエピソードが飛び出す。シリアスとユーモアの緩急が絶妙だ。

 その流れで披露された「僕は愛を知らない」に、思わず驚かされた。SNSで大ヒットを記録したため、この曲がきっかけでwapitiを知ったという観客も多いはず。しかしその曲を、あえてオリジナルとは異なる編成でパフォーマンス。その大胆な試みに、彼らの強い気概を感じる。そしてこの編成により、サウンド面に繊細さが際立ち、原曲の持つ壮大さはそのままに、より聴き手の心の奥底に寄り添うような風景が広がったように思う。

 アコースティックコーナーを経たことで、ライブは見事な抑揚を獲得している。ここからが圧巻だった。「凪」に入る前、吉村が流麗なピアノソロを披露。その音色が場の空気を引き締め、バンド編成に戻った瞬間、一気に視界が開けた。「ロックスター」「エンドレスゲーム」とアップテンポな楽曲を続けるにつれ、会場のボルテージは右肩上がりに上昇していく。

 「エンドレスゲーム」後、織田は「これから変化があると思う。一緒に乗り越えていきましょう」と語る。その言葉を受けて届けられた「春になれば」は、まさに未来へ向けた希望の歌であった。ピースフルな空気と幸福感がフロアを満たし、本編は温かな余韻のなかで幕を閉じた。

 アンコールはおどろおどろしい演出で始まった。「もののけ」によって空気は一変し、バンドの意外な側面が露わになる。そしてラストの「香雪蘭」へ。この振れ幅の大きさこそが、wapitiの強みであることを改めて印象づけた。

 終演に際し、織田は「きっとこれからもwapitiは大きくなっていくと思います」と語り、「老若男女に愛されるバンドになりたい」と続けた。その言葉どおり、この日の会場にはすでに幅広い層が集まっていた。理想は今、現実として形になりつつある。

 鳴り止まない拍手のなかで確信したのは、彼らがすでにたしかな実力を備えているということだ。そして、wapitiはまだそのポテンシャルのすべてを解き放ってはいないと思う。何かひとつのきっかけを掴むだけで、そこからとてつもない規模の支持を得る可能性を秘めている。この夜のwapitiは、まさにその寸前に立っていた。

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